ブログ NBA ホームコートアドバンテージ 消滅

Published on 2月 18th, 2015 | by Tunaパスタ

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NBAからホームコートアドバンテージが消滅しつつある?

どんなスポーツでも本拠地や地元での試合は有利だとされている。遠征での移動疲れもなければ、試合前日の夜を慣れないホテルの部屋で過ごすストレスもない。審判の判定がややホームチーム有利に傾くこともたまにはあるだろう。

何よりも、地元ファンたちからの熱い声援を浴びれば、選手たちの士気が格段に上がる。NBAで長いレギュラーシーズンを必死に戦う最大の理由の一つは、プレイオフのシード順位を上げて、ホームでの試合数を多くするためだ。

ホームコートアドバンテージは確実に存在する。だが近年のNBAでは、昔に比べてホームゲームの有利性が徐々に無くなりつつあるという。

1月終了時の順位表を確認すると、ヒートやブルズ、マブスなどのチームは、ホームよりもアウェイでの勝利数が多い。実際に今シーズンは、ホームチームの平均勝率が53.7%となっている(1月末時点)。これは過去40年間のリーグで最も低い数字だ。

▼1974年~2015年のホームチーム勝率推移

nba ホームコートアドバンテージ

via ESPN

メモ:
  • 1976-77シーズンのホームチーム勝率は68.5%。2002-03シーズンは62.8%だった。 それがここ4シーズンでは、61.2%から過去最低の53.7%に急落している。
  • 特にここ2年で、ホームコートアドバンテージの価値は大きく減少した。ポイントに置き換えると、今季のホームチームの得失点マージンは「+2.2」。昨季は「+2.6」、2012-13シーズンは「+3.2」だった。
  • この傾向はポストシーズンにも表れている。昨季プレイオフにおけるホームチームの勝率は56.2%(50勝39敗)。過去のプレイオフ平均水準である65%と比べて著しく低い。また昨季プレイオフのホームチーム得失点マージンは「+2.8」だった。2013年の「+4.0」、2012年の「+4.7」から順調に落ちている。2008年のマージン「+8.1」、勝率74.4%に比べると大下落だ。ペースをアジャストして換算すると、昨季プレイオフのホームコートアドバンテージは、セルティックスが優勝した2008年と比較して3分の1しかない(+9.0 vs. +3.0)。
  • 最も驚きなのが、今季は接戦になるとホームチームの勝率が5割を下回るというデータだ。「残り時間5分、5点差以内」という僅差の状況からホームチームが勝利を収めたのはわずか47.7%(354試合中169試合)となっている。1997年~2014年のホームチーム接戦平均勝率は54.7%。これまでに51.6%を下回ったことは1度もなかった。今季はNBA史上初めてホームチームが接戦で負け越しているシーズンなのだ。
  • 今季は10チームがホームよりもアウェイで好成績を収めている(1月末時点)。1997-98から2000-01の4シーズンでは、そんなチームは1つも存在しなかった。さらに過去8シーズンをみても、アウェイの方が好成績というチームは合計で10チームしかない。

ホームコートアドバンテージの下降トレンドは確実に数字になって表れている。しかし一体何が原因なのか?

今のところその明確な答えは誰にもわかっていないが、リーグ関係者たちの間ではいくつかの仮説が立てられている。

※   ※   ※

仮説1: スリーポイント数の増加と審判の影響力低下

NBAのプレースタイルは一昔前と比べて著しく変化した。スリーポイントシュートの重要性が飛躍的に増し、オフェンスは年々アウトサイドへと広がる一方だ。

事実、1980-81シーズンには1試合平均2.7本だった3Pアテンプト数が、2013-14シーズンには約8倍の21.5本にまで増加。今季はフィールドゴール試投数の4分の1以上(26.7%)を3ポイントが占めている。

▼スリーポイントアテンプト数のリーグ平均(1980~2014)

このトレンドと反比例するように、フリースローの本数は徐々に減少している。

▼フリースローアテンプト数のリーグ平均(1980~2014)

2015年1月には、ついにNBA史上初めて1試合平均のスリーポイントアテンプト数(45本)がフリースローアテンプト数(44.7本)を上回った。

ノーマークのアウトサイトショットが増えれば増えるほど接触プレーは少なくなり、ファウルコールの回数は減る。そうなれば、審判の判定が勝敗に及ぼす影響も自然と減少するのかもしれない。やはり審判も人間だ。公平にジャッジしているつもりでも無意識に観客の声援やヤジに乗せられて、地元びいきの笛を鳴らしてしまうこともあるだろう。

仮説2: テクノロジーの進歩と遠征環境の向上

ダラス・マーベリックスのオーナー、マーク・キューバンはESPNの取材で次のように語った:

「チームは遠征時の習慣について利口になり、ちゃんと休息をとるようになっている。プレーヤーたちも昔のように夜遊びをしない。だからアウェイ戦は以前ほど厳しいものではなくなった」

テクノロジーの進歩により遠征時の負担が減ったとする意見がある。近年のチームは、最新のスポーツサイエンスを活用して選手たちの消耗を最小限に減らし、同時に休息の大切さを促すようになった。バイオメトリクス。効果的なエクササイズや理想の食事習慣に関する知識などは、昔と比べてはるかに豊富だ。現在では、まるで高性能機械を扱うかのごとく徹底して自らの体調管理に努める選手が増えてきたという。

ビデオスカウティング技術の進歩こそが最も大きな違いだとする声もある。例えば、ロサンゼルス・クリッパーズのクリス・ポールなどは、暇さえあればSynergy Sports(シナジー・スポーツ)にログインしているらしい。(※Synergy Sportsとは、プロ・アマバスケットボールの映像やスタッツをオンラインで提供するサービス)

選手やコーチングスタッフは、クリック1つで何百パターンにも及ぶピック&ロール映像にアクセスし、遠征時の飛行機からでも敵チームの分析が十分にできるようになった。10年前には存在しなかったツールだ。ましてや一昔前のVCR時代は、ホームチームだけが対戦相手のスカウティングをフルに行える環境だった。

また、ホームコートアドバンテージの長期的な減少傾向は、移動手段の改善と大きく関連しているという見方も少なくない。以前はどの球団も一般の民間機を利用していたが、NBAの人気が爆発的に高まり始めた1980年代後半から90年代前半にかけて、チーム専用機やチャーター機が主流となった。選手たちにとっては、心身ともに大きな負担軽減となったことだろう。

そのおかげもあってか、ホームチームの勝率は1987-88シーズンの67.9%から少しずつ傾き、1994-95シーズンには57.5%まで落ちた。これではここ数年の下降トレンドの説明がつかないが、90年代に大きく減少した原因の一つだと言えるかもしれない。

仮説3: 観客が「シックスマン」じゃなくなった

ファンのあり方が変わったとするアナリストもいる。観客が昔ほど試合に夢中じゃない…。その原因の一つとして、米スポーツメディア「Grantland」のビル・シモンズ氏は、インターネット普及によりチケットの売買が簡単になった点を指摘している。

シーズンチケット購入者たちにとって、昔はレギュラーシーズン試合のチケットを処理するのが一苦労だった。買い手を探すための手段がほとんどなかったため、チケットを無駄にしないように自らが可能な限り試合に足を運ぼうとする。それが現在では、さまざまなオンラインサービスを利用して、個人的にチケットを売却するのが比較的容易だ。

それによって、シーズンチケット所有者のような熱狂的なファンがレギュラーシーズンゲームに顔を出す頻度が昔よりも少なくなり、反対にカジュアルなファンや敵チームのサポーターがチケットを手に入れやすい環境となった。シモンズ氏いわく、昨年11月にブルズがクリッパーズの本拠地を訪れた際は、ブルズファンの声援の方が大きいような状態だったらしく、そのことでクリス・ポールが気分を害していたという。

他にも、観客席でスマートフォンを片手にうつむくファンの姿が目立つようになったとする意見もある。悲しいことだがそれも一理あるかもしれない。

※   ※   ※

ホームコートアドバンテージ衰退の原因が何なのか正確にはわからない。だがデータには確実に表れている。これをフェアになったと考えるべきか、あるいはNBAの醍醐味の一つが消滅しつつあると捉えるべきか…。

Thumbnail by Adam Pieniazek/Flickr

参考記事:「ESPN

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About the Author

いつもたくさんのコメントをありがとうございます。最近、返信が遅くなっており、申し訳ありません…



  • まきやん

    いつも拝見させてもらってます、非常に興味深い内容ですね。
    HCAが有利で無くなるということは、PO圏内における順位の意味も薄くなり、この傾向が今後も続くようであれば、RSのあり方まで問われかねないのでは?
    とやや誇大誇張かもしれませんが、そんな可能性まで感じてしまいました。
    その一方で去年のPO1回戦では最高に楽しい接戦が繰り広げられたわけで、これもHCAの影響が絡んでると思ってます。
    この傾向がいいことか悪いことかと言われると、うーん・・・答えが出ません。
    駄文失礼しました。

    • ありがとうございます。
      ホームコートのアドバンテージ低下は何が原因なんでしょうね?仮に審判の公平さが増したのであれば良いことだと思いますが、ファンのコミットメントが薄れてきたのであれば少し寂しいですね。
      そもそもNBAはレギュラーシーズンが長すぎる気がします。1試合の重要性が少ないというか。ファンとしては出来るだけ多くの試合を見たいですが、その一方でプレイオフシードを決めるのに各チームと2試合ずつ対戦で合計58試合あれば十分だろうと思います。事実、スター選手を定期的に休ませるみたいなチームも増えてきていますし…。

      昨年プレーオフのウェスタンカンファレンス第1ラウンドは最高でしたね。上位チームの競争が激しすぎです。今季もサンダーが8位、スパーズが7位なんてことになれば大荒れしそうですね。

  • 上田

    初めまして。いつも面白い記事をありがとうございます。毎日来てます。TunaパスタさんのおかげでNBAを様々な視点から見ることができるようになった思います。個人的に好きな記事はジョンウォールやマーカススマートなどの記事です。涙が溢れました。試合結果やハイライトだけに特化せず、あのような選手たちの裏側の話を教えてくださるのでこのブログが大好きです。
    これからも頑張ってください!いつも見てますから。

    • はじめまして!ありがとうございます。

      ウォールやスマートの記事などは普段よりも時間をかけて書いたので、そんな風に言っていただけるとすごく嬉しいです!

  • 最近、試合中にやたらスマホを見てうつむく観客が目立つと思っていたところでした。
    その度、何故かイラっとしてしまう自分。
    まあ、会場でどういう風に過ごそうが、金を出した本人の自由だとは思うんですが、「お前、何しに来てるわけ?」と腹立たしくなるんですよね・・・どうしても。

    僻みとは違うんですが、一度も生でNBAを観た事がない自分からすると、恵まれている事を理解できておらず、謙虚さが足りないだけにしか映りません。

    あれは選手達に対するリスペクトに欠ける行為だと感じてしまうので、どうしても不愉快になってしまいますね。

  • Accel

    今年だけホームチームの勝率がガクンと下がっているだけに、来季以降も同じ状況が続くかは疑問です。
    しかし、POのホームコートアドバンテージによってレギュラーシーズンの順位に価値を示しているNBAとしては決して無視できない傾向でしょうね。

    とは言ってもPOともなると1ホームゲームだけの収益でも莫大なものになりますから、少なくとも経営陣にとっては1試合のアドバンテージは血眼になって追い求める価値はあるでしょう。
    ただ、プレーしている選手やファンからすると「勝率一位を獲ることに何の意義があるのか」と感じざるをえないかもしれません。

    • 確かに来季にはまた上がるかもしれません。ただこのトレンドが続けば、レギュラーシーズンの意味がどんどん薄れてきますね。

      そもそもバスケほど消耗が激しいスポーツでシーズン82試合は多すぎる気がします。各チームと2試合ずつの60試合前後にして、プレイオフもカンファレンス関係なく成績ベスト16が出られるようにすればフェアになりますし、1試合の価値が増して応援する方もNFLやNCAAのようにもっと盛り上がるかもしれません。そうすれば選手への負担や怪我も軽減できる上に、スターを温存したりする理由が減って競争のレベルも高くなりそうですし。

      ただオーナーたちは絶対に認めないでしょうけどね…。個人的にはとにかくプレイオフでベストな状態の戦いが見たいです。

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