“ミドルレンジ・マスター”のショーン・リビングストンがNBA引退
ゴールデンステイト・ウォリアーズの一員として3度の優勝に貢献したショーン・リビングストンが、NBAからの引退を宣言した。
今夏にウォリアーズからウェイブされてFAとなっていたリビングストンは、現地9月13日に自身のインスタグラムから引退を発表。
https://www.instagram.com/p/B2W0HYllm6O
「NBAでの15年を終えた今、僕は興奮や悲しみ、幸せ、そして感謝の気持ちを一度に噛みしめている。夢を達成するために捧げてきた様々な感情を言葉にするのは難しい。僕は今の場所にいるべき人間ではなかった。逆境に打ち勝ったことのある人ならば理解できると思う。困難な戦いの中で自分自身をインスパイアするのは精神的・感情的な負担がとても大きい。ましてや他人をインスパイアするなんてさらに困難だ」
「“あの怪我”のおかげで、僕は自分を見つめるチャンスを手にし、『僕という人間は置かれた境遇によって決まるわけではない』ということを自分自身と世界に向けて証明することができた。リーグで過ごした時間の中で最も誇りに思うことは、自分の人間性や価値観、信念が試された時に、それに耐え忍んだことだ」
「『大きな夢を追いかけろ』と言ってくれた父へ、ありがとう。人生にはバスケットボールよりも大切なものがあると教えてくれた祖父へ、ありがとう。まるで僕を自分の息子のように育ててくれた叔父たちへ、ありがとう。妻と子供たちへ…、未来は過去よりも明るい。君たちがいたからこそ、僕はこのチャプターを乗り越えられた」
「時間を共にしたすべてのチームメイトやコーチ、トレーナー、スタッフたちへ。僕が歩んできた旅路は、皆との経験の積み重ねで出来ている。その道中で手を差し伸べてくれたみんなに感謝を伝えたい。それから僕を支え、励まし、応援してくれたファンたちへ、ありがとう。『我々が与えられる最高のギフトは、他の人のために尽くすこと』」
– ショーン・リビングストン
絶望的な状況を乗り越えて栄光を掴んだリビングストンの言葉は、やはり重みがある。
スポーツ史に残る復活劇
プロ3年目の2006-07シーズン、リビングストンは試合中に足がストローのように折れ曲がる大怪我を負い、左膝の前十字靭帯や後十字靭帯、内側側副靱帯を断裂するなど膝のパーツの大部分を損傷。選手生命どころか、左脚の切断も危惧されるほどの重傷で、リビングストンのキャリアは絶望的だと誰もが思った。
見ているこっちがトラウマになるレベルの悲惨なアクシデントだ。実際にそんな大怪我を負えば、恐怖心から2度とジャンプできなくなってもおかしくない。
だがリビングストンは諦めなかった。1年以上に及ぶ辛いリハビリを耐え抜き、2008-09シーズンにNBAに復帰。しばらくは毎年のようにトレードや解雇でたらい回しにされるが、チームを転々としながらも我慢強くスキルを磨き続け、ついに2014年のオフにウォリアーズから3年の長期契約を獲得して居場所を見つける。
ウォリアーズ加入後のリビングストンは、ベンチのコンボガードとして5シーズンにわたり大活躍。その間にウォリアーズは、5年連続のファイナル進出や3度の優勝、NBA新記録の73勝シーズンなど数々の伝説を作り上げた。
怪我当初は、普通に歩けるようになるかどうかさえ危ぶまれていたリビングストン。そんな境遇にいた選手が、再びプロとしてフロアに立っただけでなく、世界トップクラスのアスリートがしのぎを削るNBAで息の長いキャリアを送り、さらにコアメンバーとして3回のリーグ制覇を経験できたというのは、もはや奇跡だ。NBAを代表する復活劇であり、怪我で苦しむ多くの選手たちに勇気を与えたことであろう。
リビングストンはキャリア15シーズンで6.3得点、3.0アシストを平均。最大の武器はターンアラウンド・ジャンプショットで、特にウォリアーズ加入後はミドルレンジショットの成功率で常にリーグ上位の数字を記録していた。
▼リビングストンのターンアラウンド・ジャンパーを11分間堪能
NBA選手たちの反応
リビングストンが引退を発表した同日、チームメイトやライバルたちがSNSからリビングストンに祝福のメッセージを送った。
・スティーブ・カー
「この5年間で彼をコーチできたこと。その有難さを言葉で表すのは難しい。素晴らしい才能と品格、個性を持ち合わせた選手だった。彼の落ち着いたリーダーシップ、存在感、パスセンス、そしてポストでのターンアラウンド・ジャンパー。それらとお別れしなければならないのは寂しいよ。君の将来が良いことで満ち溢れていますように!」
・ステフィン・カリー
「彼に対する感謝の気持ちは言葉では言い表せないよ。僕自身、そしてウォリアーズの成功にとって重要な存在だった。彼こそが究極のウォリアーだ!君の人生の次章が上手くいくことを祈っている。どうか楽しんでくれ」
・ルー・ウィリアムズ
「俺が初めて自分の金で買ったユニフォームは君のやつだった。お疲れ様!」
・エリック・ゴードン
「素晴らしいキャリアだったな。もっと評価されるべきだろう。チャンピオンシップを勝ち取り、怪我を乗り越えた。真のプロフェッショナルだ」