NBAプレーオフ2015: カンファレンスファイナルのスケジュールと注目ポイント
各シリーズとも下位シードが2勝1敗でリードし、番狂わせを匂わせまくっていた今季のプレーオフ第2ラウンドだが、終わってみれば昨年と同じく、イースト/ウェストのそれぞれ上位2チームがカンファレンスファイナルへと駒を進めることとなった。東西ともに1,2位シードがカンファレンス決勝に残った例は意外と少なく、過去30年では今回を含めて5回しかない(1986、2001、2005、2014、2015)。
以下はカンファレンスファイナルのスケジュール。
※メモ: 以下の日程はすべて現地時間
イースト決勝
ホークス(1)-キャブス(2) | ||
日程 | ホームコート | |
第1戦 | 5/20 | アトランタ |
第2戦 | 5/22 | アトランタ |
第3戦 | 5/24 | クリーブランド |
第4戦 | 5/26 | クリーブランド |
第5戦※ | 5/28 | アトランタ |
第6戦※ | 5/30 | クリーブランド |
第7戦※ | 6/1 | アトランタ |
ホークス
- シーズン成績: 60勝22敗
- 第1~2ラウンド: 8勝4敗(vs.ネッツ、ウィザーズ)
- PO得点リーダー: デマーレ・キャロル(17.1得点)
キャブス
- シーズン成績: 53勝29敗
- 第1ラウンド: 8勝2敗(vs.セルティックス、ブルズ)
- PO得点リーダー: レブロン・ジェイムス(26.5得点)
レギュラーシーズン直接対決
- ホークス3勝 – キャブス1勝
- 合計得点(4試合):ホークス(436点) – キャブス(423点)
レギュラーシーズン直接対戦成績はホークスが3勝1敗。ただこの内の3試合は、キャブスがJ.R.スミス、イマン・シャンパート、ティモフェイ・モズゴフの3選手を獲得する前なので、あまり参考にならない。トレード後に行われた試合では、106対97でホークスが勝利している。
スターパワーvs.チームパワー
キャブスとホークスは、プレースタイルがほぼ真逆なチームと言える。
今季レギュラーシーズンのキャブスは、アイソレーションプレーの回数でリーグダントツ1位を記録(合計993回、全ポゼッションの11.4%)。プレーオフでは、さらにアイソの頻度が15.8%に増えている。
▼アイソレーションプレーのデータ比較(レギュラーシーズン)
キャブス | ホークス | |
アイソの割合 | 11.4% | 6.9% |
1試合平均 | 12.1回 | 7.2回 |
FG% | 40.6% | 39.2% |
ターンオーバー | 8.6% | 11.1% |
シューティングファウル | 11.7% | 11.6% |
(※FG%、ターンオーバー、シューティングファウルはいずれもアイソレーション時の数字)
一方のホークスはアイソレーションの頻度が低く、レギュラーシーズンとプレーオフの両方で6~7%程度。反対に、アシストによるフィールドゴールの割合は、リーグ首位の67.6%を記録している(キャブスはアシストからのFGが58.7%でリーグ13位)。
またホークスはレギュラーシーズン82試合で、プレーヤーが30得点以上を記録したのがたったの1度きり(ポール・ミルサップの30得点)。対するキャブスは36回あった。
ボール回しからイージーな得点を挙げるのがバスケの理想的だが、キャブスがアイソレーションを多用してしまうのは仕方がない。何しろリーグトップ5の1 on 1プレーヤーが2人もいるのだから。
アービングの怪我
ここがキャブスにとって最大の懸念材料。現在カイリー・アービングは両足を痛めている。それでもブルズとのシリーズでは1試合も休まずにチームに貢献していたが(特に第5戦)、明らかに怪我の影響がプレーに出ており、立ち上がるのが遅かったり、足を引きずったりする場面などもたびたび見られた。
アービングの爆発的なオフェンス力は絶対に欠かせない。だがそれ以上に不安なのは、ディフェンス面だ。ただでさえディフェンスが得意ではない上に、足を怪我した状態で、オフボールの動きやスクリーンが激しいホークスのオフェンスにどこまでついていくことができるか。
ただ、セミファイナル第6戦の半分をベンチで過ごせたのと、カンファレンス決勝までに5日間の休息が得られたのは非常に大きい。アービング本人も「ホークスとの第1戦では絶対にプレーする」と明言しており、すでにフルメニューの練習をこなしているという。
コーバーのスリー
カイル・コーバーの調子がなかなか上がらない。レギュラーシーズンには49.2%を記録していた3P成功率が、プレーオフに入ってからは35%まで下落してしまった。この数字は、何とロケッツのジョシュ・スミスよりも下だ。
特にウィザーズとの第2ラウンドでは、1試合平均で7得点、スリー成功率28.6%(7.0本中2.0本)と低迷。ブラッドリー・ビールを振り切るのに苦戦したのも確かだが、オープンショットを外す場面も度々あり、レギュラーシーズンのパフォーマンスには追いつけていない。
だが、たとえシュートが入らなくても、コーバーの影響力はやはり大きかった。コートを動き回るだけでディフェンスの注意を存分に引きつけ、追いかけてくるマークマンの体力を消耗させられる。ディフェンスでも、1.6スティール、1.3ブックを平均するなど、素晴らしい仕事をこなした。
▼このコーバーが見たい
カンファレンスファイナルでは、コーバーがスランプを脱出できることに期待したい。キャブスは誰をぶつけてくるつもりだろう…。
ウェスト決勝
ウォリアーズ(1)-ロケッツ(2) | ||
日程 | ホームコート | |
第1戦 | 5/19 | ゴールデンステイト |
第2戦 | 5/21 | ゴールデンステイト |
第3戦 | 5/23 | ヒューストン |
第4戦 | 5/25 | ヒューストン |
第5戦※ | 5/27 | ゴールデンステイト |
第6戦※ | 5/29 | ヒューストン |
第7戦※ | 5/31 | ゴールデンステイト |
ウォリアーズ
- シーズン成績: 67勝15敗
- 第1ラウンド: 8勝2敗(vs.ペリカンズ、グリズリーズ)
- PO得点リーダー: ステファン・カリー(28.2得点)
ロケッツ
- シーズン成績: 56勝26敗
- 第1ラウンド: 8勝4敗(vs.マブス、クリッパーズ)
- PO得点リーダー: ジェイムス・ハーデン(26.7得点)
シーズン直接対決
- ウォリアーズ4勝 – ロケッツ0勝
- 合計得点(4試合):ウォリアーズ(460点) – ロケッツ(399点)
レギュラーシーズンの直接対決は、平均15.25点の大差でウォリアーズが全勝。カンファレンスファイナルもウォリアーズ優勢との見方が圧倒的に強いが、ロケッツはどうもよくわからない。
クリッパーズとのセミファイナルでも、第4戦終了の時点で危篤状態かと思えば、ラスト3試合はまるで別チームのようなパフォーマンスで、シリーズ1勝3敗からまさかの逆転勝利。突然ジェイソン・テリーがクリス・ポールを効果的にガードし始めたり、ジョシュ・スミスが優秀なストレッチ4×プレーメーカーに変身したりと、ランダムなイベントが発生する。特に第6戦終盤のカムバックは、攻守ともにパーフェクトだった。
ディフェンシブ・アサインメント
ロケッツにとって最大の課題の一つは、誰が誰をマークするか。特に誰がステファン・カリーをガードするかだ。CP3相手に予想以上の好ディフェンスをみせたジェイソン・テリーだが、半歩の遅れが命取りになるカリーとマッチアップするのはスピード的にもスタミナ的にもかなり厳しい。
リーチの長いトレバー・アリーザをカリーにぶつける手もあるが、そうするとテリーは誰につくのか。ハリソン・バーンズ?その場合、完全なミスマッチが生まれるだけでなく、ジェイムス・ハーデンがフルタイムでクレイ・トンプソンを追い掛け回さなければならなくなる。ロケッツとしては、ハーデンをディフェンスで消耗させるのは避けたいところだ。かといって、テリーにトンプソンを守らせるのも難しい。
ならば結局、テリーがカリーをガードするのがベストなのか?ロケッツはパトリック・ビバリーの不在が惜しまれる。
▼カリー vs. ハーデン、1月21日
歴史は繰り返すかも?
ちょうど20年前、ロケッツは1995年のプレーオフを最後まで勝ち抜き、2連覇を達成した。
その年のロケッツは、サンズとのWCセミファイナルで、1勝3敗のビハインドから3連勝を果たし逆転勝利。第5戦からロバート・オーリーの出場時間を大幅に増やしたことが、シリーズ好転の一因となった(第1~4戦は平均31分、第5~7戦は平均41分)。
続くカンファレンスファイナルでは、62勝20敗で成績リーグ首位、その年のMVPに選出されたデビッド・ロビンソン率いるスパーズと対戦。このシリーズでは、当時32歳だったアキーム・オラジュワンが、「俺こそがMVPだ」と言わんばかりの大奮闘でゲームを支配し、6試合で35.3得点、12.5リバウンド、5.0アシスト、4.2ブロック、FG成功率56%を平均する。ロケッツは4勝2敗でスパーズを下すと、そのままファイナルをスイープしてチャンピョンに輝いた。
▼オラジュワン、1995WCF第5戦
今季ロケッツのここまでのプレーオフランは、1995年と似ている点が多いのだ。
まず1995年と同じく、セミファイナルで1勝3敗の崖っぷちからカムバック。今季の場合は、第5戦からジョシュ・スミスをスタメン起用したことが好転の一因となった。さらに1995年と同じく、カンファレンスファイナルでは、成績リーグ首位、今季MVPのステファン・カリー率いるウォリアーズと対戦する。
ただし1995年との大きな違いは、今季のウォリアーズが当時のスパーズよりも優秀なチームだということ。そして、ハーデンがオラジュワンじゃないところだ。もちろんハーデンがオラジュワン2.0的な覚醒を遂げることもあり得るかもしれないが、その可能性は極めて低い。
カンファレンスファイナルでは、ディフェンス力の高いクレイ・トンプソンが大部分でハーデンをマークすることになるはず。仮にトンプソンがファウルトラブルに陥っても、ハリソン・バーンズやアンドレ・イグダーラ、ドレイモンド・グリーン、ショーン・リビングストンなど、ハーデンを守れる選手がたくさんいる。
ウォリアーズはリーグ1,2を争う守備チームだ。実際に今季レギュラーシーズンのハーデンは、ウォリアーズ戦になると得点やフィールドゴール成功率がやや落ちている。
▼ハーデンのレギュラーシーズンスタッツ
レギュラーシーズン | 対GSW | |
得点 | 27.4 | 25.3 |
アシスト | 7.0 | 5.3 |
リバウンド | 5.7 | 5.5 |
FG% | 44.0% | 40.5% |
3P% | 37.5% | 24.1% |
レギュラーシーズンでのマッチアップを見る限り、ロケッツがウォリアーズの本拠地で勝利を挙げられそうな気配はない。とはいえ、レギュラーシーズンの対戦成績はあまりあてにならない上、4試合のうち2試合でドワイト・ハワードが不在だった。ハワードはディフェンス面で全盛期に近いパフォーマンスを取り戻しつつある。
カンファレンスファイナルは、ウォリアーズの4勝1敗と予想。ただロケッツがセミファイナル後半での集中力を持続できるなら、第7戦までもつれこんだとしても驚きじゃない。
ソース:「ESPN」