デマー・デローザン 「俺はいけにえの子羊になった」
2018年のオフシーズン、トロント・ラプターズはデマー・デローザンをトレード放出し、残り契約が実質1年だったカワイ・レナードをチームに迎えるという大胆な賭けに出た。
長年チームに尽くしてきたフランチャイズエースに突然見切りをつけたことと、レナードがLAへの移籍を望んでいるという報道も出ていたため、トレード成立当初はマサイ・ウジリGMの決断に対して「残酷で無謀すぎる」といった批判的な意見も多くみられた。だが蓋を開けてみれば、ラプターズは強豪揃いの今季イーストプレイオフを勝ち抜き、球団史上初となる念願のカンファレンス制覇を達成。もし今夏FAでレナードが再契約しなかったとしても、頭打ち状態だったラプターズにとってトレードは大正解だったと言えるかもしれない。
そんなラプターズの成功を、元チームエースのデローザンはどんな気持ちで見ていたのだろう?
デローザンは『Bleacher Report』のインタビュー企画で現在の心境を告白した。
Q:デマーは今どんな気持ち?
「カイル(ラウリー)は僕の大親友だ。だから親友を応援しているよ。僕たちがずっと目標にしてきたことを達成してほしいと思っている。彼は今それを実現するチャンスを手にした。ラプターズの他の選手たちも、僕が応援していることを知っているはずだ」
Q:「デマーでは不可能だった。カワイだからこそ実現できた」などと言われているけど、そういった意見にどう反論する?
「正直なところ、この件について語るのは初めてかもしれない。内輪の人達には言っているけどね。僕が長年をかけて基礎を築いてきたからこそ、今のラプターズがある。その時期がなければ何も実現できなかっただろう。僕は戦った。自分を犠牲にした。限界に挑戦し続けた。僕は“贖罪の羊”になったんだ。『(ラプターズが)多くを達成できたのは自分のおかげ』、そう思うようにしているよ。ラプターズとしては『次のステージに進むためには何ができるだろうか?』と考えた末の決断だったのだろう」
Q:ラプターズからトレードされることを知った時、怒りの気持ちと悲しみの気持ちのどちらが大きかった?
「傷心の気持ちが大きかった。だって19歳から28歳までを捧げた場所だからね。僕はトロントで多くを学び、成長した。それが僕の知らないところで一瞬にして終わってしまった。もちろんショックだよ。結局のところ僕らも人間なんだ。辛かった」
本当にデローザンの言う通りだと思う。「長所はダンクのみ」などと評価されていた新人時代から地道な努力で成長を続けてオールスターへと躍進し、ドアマットチームだったラプターズをイースト強豪へと牽引したデローザンの存在があったからこそ、今のラプターズの成功がある。
ラプターズがファイナル進出を決めた数日後、デローザンはインスタグラムに悲壮感漂うポエムを投稿していた。メンタルがかなり弱っているのかなと少し気になっていたが、インタビュアーのかなり突っ込んだ質問にも笑顔で回答する姿を見て安心した。
▼5月末のインスタ投稿
https://www.instagram.com/p/ByAtgpyAnfG
「孤独は人を強くする。友人など必要ない…」
– デマー・デローザン
また同インタビューでデローザンは、スパーズでのシーズンについても言及。
Q:グレッグ・ポポビッチHCの指揮下でプレイした感想は?
「ポップ(ポポビッチHC)はすごくクール。まるで(映画『ゴッドファーザー』の)ヴィトー・コルレオーネのような存在だ。バスケットボールのコーチとしてだけでなく、人間としても素晴らしい。つい先日も、ポップに電話して冗談を言い合った。彼はスマホが使えないんだ。どうも最新のテクノロジーが大嫌いらしい。そのくせ彼はいつも『これはTwitterに載せよう』とか言っている。アカウントすら持っていないのにね。そもそもポップはTwitterのことを『ツイッターグラム』と間違えて呼んでいるんだ」
Q:ポポビッチHCとのミーティングから学んだことを教えて?
「あるミーティングで、ポップは『皇帝ペンギン』というドキュメンタリー映画をチームに見せた。その映画の内容はペンギンの出産と育児。オスペンギンが卵を温め、メスペンギンが餌を取りに行く。それから2カ月後にペンギンは卵を持って90マイルを旅する。この映画から学んだのは、『人生は持ちつ持たれつ』ということ。チームが一丸となって努力すれば、不可能を可能にできる」
Q:ポポビッチHCはシーズンを通して“チーム・ディナー”にたくさんお金を使うと聞いたことがあるけど?
「参加必須のイベントだね。ポップはそれを『break bread』と呼んでいる。試合に勝とうが負けようが、遠征先では食事を共にする。それぞれの家族も一緒になって楽しい時間を過ごすんだ」
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2018-19シーズンのデローザンは、新天地サンアントニオでエースの一人としてチームを引っ張り、21.2得点、6.2アシスト、6.0リバウンドを平均。ラプターズ時代よりもプレイメイキングにさらに磨きがかかり、平均アシストでキャリアハイを記録したが、その一方でロングレンジショットをまったく打たなく(打てなく?)なってしまい、シーズン77試合の合計スリー試投数が45本、さらに成功数がわずか7本に終わった。
グレッグ・ポポビッチHCはシーズン最後の記者会見で、デローザンとラマーカス・オルドリッジにもっとスリーを打たせることが来季スパーズの課題の一つだと語っている。
▼2018-19シーズンDDハイライト
Video:「YouTube」