ヤニス・アデトクンボ 「カワイ・レナードとの対決からたくさん学んだ」
2018-19シーズンのMVP最有力候補で、ミルウォーキー・バックスを約20年ぶりとなるカンファレンスファイナル進出に導いたヤニス・アデトクンボ。24歳の若さでスーパースターの仲間入りを果たしたNBAの宝だが、決して現状に満足することなく、長いシーズンを終えたばかりだがすでに来季を見据えている。
そんなアデトクンボが『The Athletic』の取材で2019-20シーズンに向けた意気込みを語った。カンファレンスファイナルでの敗戦から自分の弱点や他のスター選手たちに比べて足りない部分を冷静に自己分析し、ミドルレンジショットの大切さを身をもって学んだという。
「試合中にカワイを観察してたくさん学んだ。彼の冷静さ、そして彼の試合運びから学んだ。彼のテリトリーはミドルレンジ・エリアだ。3Pラインから一歩前に出たところでフェイスアップ。するとフロアにいる全員が彼に注目し、ディフェンダーが総出で潰しにかかる。どうしてそんな攻め方をすると思う?それは彼がミドルレンジゲームに絶対的な自信を持っているからだ」
「カワイはブルック(ロペス)がフロアにいる時にピック&ロールから多くのプルアップ・スリーを打った。それからキャッチ&シュートやトランジションからもスリーを放った。でも基本的にはハーフコートオフェンスからスリーを打とうとしない。最も難しいショットだからね。だからカワイはバスケットボールで最もイージーなショットを武器に攻めてきた。15フィートからのミドルレンジ。これを“タフショット”だと考える人が多いみたいだけど、偉大な選手たちは誰もがミドルレンジを打てた。カワイにコービー、ジョーダン、デュラント、レブロン…。レブロン・ジェイムスが昨季プレイオフのセミファイナルでラプターズにとどめを刺したのはミドルレンジショットだったね」
「去年(2017-18)の僕はもっと自信を持ってミドルレンジショットを打っていたと思う。例えば右ポストからのフェイダウェイ。片足でも両足でも。ペイントエリアに入り込んで、ディフェンダーの上からショットを放つ。決勝弾を決めたこともあったよ。勝負所で得点できるクローザーになるためには、ミドルレンジショットを武器に加え、イージーショットをたくさん打つ必要がある」
▼ミドルレンジからのゲームウイナー
2017-18シーズンのアデトクンボはFGアテンプトの約37%がミドルレンジショットだったが、2018-19シーズンは21%に大きく減少。マイク・ビューデンホルツァーHC指揮下で「リムorスリー」のモダン・オフェンススタイルが徹底されたためだ。
▼アデトクンボのショットチャート
ビューデンホルツァーHCの戦略は決して間違っておらず、その証拠に今季バックスはアデトクンボをシューターで囲むオフェンスでリーグを席巻し、シーズン60勝に到達。ただ、相手の弱点をどれだけ突けるかが勝敗を握るプレイオフはやはり別物。特にイースト決勝でのアデトクンボは、絶対にミドルレンジはないと確信してゴール下に壁を作るラプターズディフェンスに大苦戦し、オフェンス面でレギュラーシーズンのようなインパクトを残せなかった。
またシーズンを通してフィジカルに攻め続けたことで、身体への負担も大きかったという。
「今年の僕は、とにかくパワーだけで押し切ろうとしていたと思う。それで少し腰を痛めてしまった。今プレイしろと言われればできるよ。もし今日試合があったならもちろんプレイするさ。シーズンがもっと長くても平気だ。ただ本音を言うと、もっとスキルを伸ばして、負担を減らしながらプレイしたい」
「プロ6年目だった今季の僕はこんな風に思っていた、『筋肉を3キロ以上増強した。俺はこのリーグで最も支配的なプレイヤー。ボールを持つ度にダンクしてやる』とね。 ある程度まではそのやり方で通用した。それだけで乗り切れるなら、それに越したことはないよ。だけど僕はもっとスキルを伸ばす必要がある。以前の考え方を取り戻さなくてはならない。ビッグマンではなく、ガードの思考を持たなければ」
「最近では、僕の頭に浮かぶのは(マルク)ガソルにダブルチームされるシーンばかり。冗談に聞こえるかもしれないが至って真剣だ。他の誰でもない。誰にガードされようともそれは変わらない。例えばサディウス・ヤングにガードされたとしても、僕にはカワイとガソルしか見えなていないだろう」
「でもすごく感謝している。ガソルとカワイのおかげで僕は選手として成長できたのだから。皮肉を言っているつもりはないよ。それが正直な気持ちだ。彼らがいるから僕はより優れた選手になる。今年の敗北をモチベーションにするつもりだ。ずっと落ち込んでいるわけにはいかないからね」
来季のアデトクンボがどんな躍進を見せてくれるのか本当に楽しみだ。
▼2018-19ハイライト
参考記事:「The Athletic」