ベスト・オブ・NBA: ウォリアーズの「サイクロン」
ゴールデンステイト・ウォリアーズは、恐らくNBA史上で最もボール/プレイヤー・ムーブメントが盛んなチームだ。
強力なロングレンジシュートでフロアスペースを広げながら、オフボールスクリーンとカットを中心にオフェンスを組み立て、ノーマークのイージーな得点を効率良く稼ぎ出す。ケビン・デュラントが加入して得点源がさらに分散された2016-17シーズンは、これまで以上にポストアップやアイソレーションの割合が減り、オフボールでのエクスキューションが増えた。
▼GSWのオフェンスパターン
FREQ | 2015-16(PPP) | 2016-17(PPP) |
カット↑ | 10.7%(1.25) | 12.3%(1.33) |
オフスクリーン↑ | 11.8%(1.06) | 13.0%(1.04) |
アイソレーション↓ | 6.3%(0.93) | 5.7%(0.94) |
ポストアップ↓ | 6.1%(0.80) | 5.1%(0.78) |
※PPP=ポゼッションあたりの得点、%はそのプレイで終えたポゼッションの割合
以下は、スティーブ・カーHC指揮下のウォリアーズで代表的な「サイクロン」と呼ばれるセットプレー。タイムアウト明けなど、点が確実に必要な場面で使っている。ステフィン・カリーの動きに注目してほしい。
▼2016年12月23日ピストンズ戦クラッチタイム
まずクレイ・トンプソン(パサー)が左サイドにカットし、サイドラインでボールをキャッチ。この際に、カリーがトンプソンのマークマンに軽くスクリーンをセットして(しない場合も多い)、パスがディナイされるのを阻止する。
続いてカリーが3pラインまで走ると見せかけて、エルボー付近でバックスクリーンをセット。同時にゴール下へとカットしたドレイモンド・グリーンがトンプソンからのパスを受け、ノーマークのレイアップを決める。
▼2日後のクリスマスゲームでもまったく同じセット
「サイクロン」が面白いように決まるのは、やはりカリーの存在が大きい。このセットでは、カリーが完全におとりとなっているが、通常はその逆で、カリーがスクリーンを使ってオープンになり、キャッチ&シュートのスリーを沈めるパターンが多いからだ。カリーにわずかでもスペースを与えてしまうと命取りになるので、ディフェンスはどうしてもそちらに気を取られてしまい、突然スクリーンをセットされると一瞬混乱して、グリーンのカットへの対応が遅れる。
史上初の満票MVPに輝いた2015-16シーズンと比べて平均得点が5点ほど落ちた昨季のカリーだが、スタッツに表れないところでのインパクトは相変わらず絶大だ。
このセットは、カーがHCに就任した3年前から使われているもので、一時期はほぼ毎試合で見られた。その後、対戦相手が十分に警戒するようになったので頻度が減っていたが、昨季序盤~中盤では再び頻繁に使われていた印象だ。なおクレイ・トンプソンとカリーの役割が入れ替わるパターンもある。
ウォリアーズのオフボールオフェンスは、NBAの中でも群を抜いてレベルが高い。以下は、2016-17レギュラーシーズンの試合で、カットもしくはスクリーンからのプレイで終えたポゼッション(FGA、ターンオーバー、ドローファウル)の合計数をチーム別に比較したグラフ。
リーグ2位のウィザーズよりも7割近く多く、ウォリアーズのオフェンスシステムが他の29チームとは全くの別物だということがよく分かる。
Image by Keith Allison
参考:「The Explain One Play」