ウェストブルックのロケッツ移籍とこれからのサンダーについて
過去10年に渡ってウェストの強豪チームであり続けたオクラホマシティ・サンダーが、ついにフランチャイズの顔と決別。再建期に突入だ。
ESPNによると現地11日、サンダーとヒューストン・ロケッツが大型トレードで合意。ロケッツはクリスポールとドラフト1巡目指名権2つ、ドラフト指名権スワップ2つを放出し、オクラホマシティからラッセル・ウェストブルックを獲得する。
報道によれば、今回のトレードでサンダーが獲得した2つのドラフト指名権は2024年と2026年の1巡目で、どちらも1~4位の保護条件付き。スワップ権利は2021年と2025年だという。
指名権を掻き集めたサンダー
数日前のポール・ジョージとジェレミー・グラントのトレードを含め、今夏サンダーはチームコアを放出することで、8つのドラフト1巡目指名権をゲットした。
OKCが今オフに獲得した指名権:
- 2020年:ナゲッツの1巡目(トップ10保護付き)
- 2021年:ヒートの1巡目
- 2022年:クリッパーズの1巡目
- 2023年:ヒートの1巡目(トップ14位保護付き)
- 2024年:クリッパーズの1巡目、ロケッツの1巡目(トップ4保護付き)
- 2026年:クリッパーズの1巡目、ロケッツの1巡目(トップ4保護付き)
自身の指名権も合わせれば、今後7年間(2020~2026)のドラフトで合計15個の1巡目指名権を保有することとなる(+4つのスワップ権)。
さらにサンダーはジョージ放出の見返りとして、ルーキーシーズンから頭角を現しクリッパーズのプレイオフ進出に大貢献したシェイ・ギルジアス・アレクサンダーも獲得。新たなスタートを切るための蓄えは十分だ。
ここからサンダーはどんな舵取りをするだろう。来季も全力で勝ちに行くのか、それとも一からの再建に向かうのか。
掻き集めたドラフト指名権をいくつか使って、オフ中もしくはシーズン中に有力選手をトレードで獲得し、タンキングすることなく即席チームで勝負に出るのも選択肢の一つ。
現時点でのサンダーはクリス・ポール、スティーブン・アダムス、ダニーロ・ガリナリ、シェイ・ギルジアス・アレクサンダー、アンドレ・ロバーソン、デニス・シュルーダーがコアで、そこにオールスタークラスの選手(ブラッドリー・ビールあたり?)を1人加えることができれば、十分にプレイオフを狙えるだろう。
ただESPNによると、サンダーのサム・プレスティGMはクリス・ポールを来季ロスターに残すつもりはなく、すでにトレード相手を探している模様。マイアミ・ヒートがトレード先の有力候補に挙がっている。ヒートが契約残り3年/1億2400万ドルの元オールスターPG(34歳)を欲しがる理由がさっぱり分からないが、もしサンダーがアセットを失うことなくポールの巨額契約を動かせたならば、それだけで大勝利だ。
サンダーとしては、しばらくタンキングしてドラフトから次のフランチャイズスター獲得もしくは若手コアの構築を狙うのがベストかもしれない。サンダーのドラフトスカウティングには、00年代終盤にロッタリー指名でケビン・デュラント、ラッセル・ウェストブルック、ジェイムス・ハーデンを続けて獲得した実績がある。
今のサンダーは史上類を見ないほど豊富なアセットを保有しているので、完全な再建モードに入ったとしても、ウルブスやキングスのように10年ドアマットチームといった泥沼に嵌ることはないだろう。
▼ウェストブルックのOKCハイライト
MVPデュオ
一方でロケッツは元MVPのバックコートコンビを結成。34歳のクリス・ポールと30歳のウェストブルックを入れ替えることで、ジェイムス・ハーデンが全盛期の内に優勝を狙うためのタイムテーブルを引き延ばした。やはり気になるのは、ハーデンとウェストブルックが上手くフィットできるかどうか。
2人はサンダーで3年間一緒にプレイした経験がある。当時のOKCは、デュラントとウェストブルック、ハーデンを軸にして、2012年にファイナル進出を達成。KDとウェストブルックが23歳、ハーデンが22歳の頃だった。
当時は問題なくフィットできていたハーデンとウェストブルックだが、そこから7年の月日を経て、2人とも別人のような選手へと生まれ変わった。
ロケッツに移籍してからのハーデンは球団を背負うエースの役割を担い、近年では歴代屈指のアイソレーションスコアラーへと進化。一方のウェストブルックも、特にデュラント退団後はチームの絶対的なエースとなり、トリプルダブルで前代未聞の大記録を打ち立てる。2人ともオンボールでこそ実力を最大限に発揮できるプレイヤーだ。
今回のトレードで、ロケッツが昨季よりも強くなったかどうかは微妙なところ。実際のプレイを見てみないと何とも言えない。
マイク・ダントーニHC指揮下のロケッツは、シューター3人でフロアスペースを広げつつ、センター(クリント・カペラ)をダンカースポットに待機させ、ハーデンが1on1を展開するというのが必勝パターン。ハーデンとCP3のコンビが問題なく機能できたのは、ポールのシュート力の高さが大きい。
NBA.comのデータによると、昨季のポールはキャッチ&シュートのスリー成功率で43.1%を記録。一方でウェストブルックは31.9%だった。今のロケッツのオフェンスシステム的には、アウトサイドショットが苦手なウェストブルックよりも、ポールの方が相性が良い気がする。
ただウェストブルックの加入により、ロケッツのトランジション得点力やディフェンスリバウンド力は向上するはず。またウェストブルックがピック&ロールやクローズアウトからのドライブでインサイドを攻め、ハーデンがスポットアップスリーを放つといったパターンも凄く面白い。ボール保持時間の長いスーパースターコンビが噛み合うかどうかは、それぞれがカットやスクリーンなどオフボールでどれだけ貢献できるかにかかっている。
なお今回の大型トレードは、ハーデンとウェストブルックの双方が実現を強く望んでいたとのこと。ESPNのZach Lowe記者によれば、トレードの話が持ち上がった際、ロケッツのダリル・モーリーGMがウェストブルックとのフィットについてハーデンに電話で相談したところ、ハーデンから「俺はラスと一緒にプレイする方法を心得ている。ラスも同じだ」という答えが返ってきたらしい。
個人的に、ウェストブルックには生涯サンダーを貫いてほしかったが、本人が移籍を望んだのならばしょうがない。ウェストブルックの移籍により、現役選手で1チームでの在籍期間が最も長い選手はゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーとなった。
来季からのNBAは、レブロンとデイビス、カワイ・レナードとポール・ジョージ、デュラントとカイリー・アービング、ハーデンとウェストブルックなどスーパーデュオの時代に突入する。
参考記事:「ESPN」