ラプターズのドウェイン・ケイシーHC解雇について
トロント・ラプターズが現地11日、7年間チームのヘッドコーチを務めたドウェイン・ケイシーを解任したことを発表。プレイオフ敗退が決まってからわずか5日後のことだ。
ラプターズのマサイ・ウジリGMは「人生で最も難しい決断だった」とケイシー元HCとの決別についてコメント。ケイシーは解任発表の翌日、現地紙の『Toronto Star』を通して球団やトロントのファンに向けてお別れと感謝のメッセージを送った。
「ラプターズを支え続けてくれたトロント、そしてカナダのバスケットボールファンの皆さん。ここで過ごした7年間にわたり家族ともども厚遇してくれたあなたたちに感謝している。球団をプレイオフ・コンテンダーへと再建する道のりで、本拠地エア・カナダ・センターで応援してくれたファンたち、雨の日も雪の日も『ジュラシックパーク』(野外のパブリック・ビューイング会場)を満員にしてくれたファンたち、そしてテレビの向こうから絶えることのないサポートを与えてくれたすべてのファンたちに感謝したい」
– ドウェイン・ケイシー
3年前にラプターズがウィザーズにスウィープされた時や、昨季のプレイオフ敗退時など、ケイシーHCとチームの決別についてはこれまでにも何度かささやかれていたが、それでも球団新記録を達成した直後に解雇というのはサプライズだ。ケイシーHCは2日前にNBAコーチ協会の年間最優秀ヘッドコーチに選出されたばかりだった(シーズンアワードの『コーチ・オブ・ザ・イヤー』とは別物)。
1位シードのチームからシーズン終了と同時に解雇されたヘッドコーチは、2010年キャブスのマイク・ブラウンに次いでケイシーが2人目となる。
ドウェイン・ケイシーは選手たちからの信頼も厚く、チームをまとめ上げる力に長けたコーチだ。クリス・ボッシュの移籍でドアマットチームに転落していたラプターズを2011年に引き継ぐと、その2年後の2013-14シーズンには当時の球団記録となる48勝をあげて6年ぶりのプレイオフ進出を達成。その後もポストシーズンでは振るわなかったものの、今季は若手選手らをうまく活用しながら、スリーやボールムーブメントを増やしてチームのオフェンスシステムを一変させ、球団史上初の1位シード獲得と大成功を収めた(ラプターズのモダン・オフェンス導入については、ケイシーの判断というよりも、フロントオフィスが先導したという報道もあるが…)。
ただその一方で、ラインアップ・ローテーションやアジャストメント、タイムアウト明けのプレイコールなど、インゲームの戦略面では決して評価が高くない。特に批判されたのはキャブスとの今季カンファレンス準決勝第2戦後半での采配で、C.J.マイルズがローポストで繰り返しケビン・ラブに蹂躙される様子を何のアジャストも加えることなく見守り、そこでキャブスに完全に主導権を握られてしまった。
また同点で迎えた第3戦残り8秒のラストポゼッションでは、アイムアウト明けにベースラインからインバウンドしたキャブスに対して、ラプターズはレブロンにプレスやトラップを仕掛けず、マン・ツー・マンというノープランで対応し、その結果レブロンはシリーズの決め手となる決勝ブザービーターに成功。現地メディアの報道によると、ウジリGMは第3戦の試合後すぐにラプターズのロッカールームに顔を出し、レブロンにダブルチームを仕掛けなかったことについてケイシーHCを強く非難したという。
▼レブロンのブザービーター
プレイオフの試合では、レギュラーシーズン以上に、相手の弱点をいかに攻められるか、同時に相手のゲームプランに対してどのようにアジャストできるかが重要になる。今のラプターズはすでに成熟した状態にあり、ウジリGMを含むチームのフロントオフィスは、チームを次のレベルへと押し上げるには、ケイシーのようなコーチではなく、試合で手腕を振るえるタイプのコーチが適任だと判断したのかもしれない。
ここからラプターズがどの方向に向かうのは現時点では予想が難しい。主力のトレード放出など大幅なチーム改革に踏み出すのか(デローザンもしくはラウリーのトレード)、それとも新ヘッドコーチ指揮下でもう一度同じメンツでチャレンジするのか。
なお『New York Times』のMarc Stein記者によると、ラプターズは次期HC候補として、マイク・ブーデンホルザーに強い関心を示しているという。
参考記事:「NBA」