ダリル・モーリーがロケッツのGMを退任
現地10月15日、ヒューストン・ロケッツはGMのダリル・モーリーが退任することを発表した。
モーリーは2019年3月にロケッツと5年の延長契約を結んだばかり。ESPNによると、今回の退任決定はチームの意思というよりも、モーリー自身が強く望んだものだったという。
モーリーはESPNのインタビューで、次のようにコメントしている:
「私にとって都合の良いタイミングだった。私の末男が高校を卒業したばかり。今後の家族との過ごし方などを考える上で、ちょうどいいタイミングだと思った」
球団オーナーのティルマン・ファティータによれば、モーリーは以前から「ずっとここにいるつもりはない。いつか東海岸に戻るつもりだ」と話していたそうだ。
モーリーが正式に退任するのは、2週間後の11月1日。それまでは、継続してFAやチームの次期HC探しでフロントオフィスの指揮を執る。
また報道によれば、現ロケッツ球団副社長のラファエル・ストーンがモーリーの後任を務めることになるそうだ。
モーリー・ボール
モーリーは2007年にロケッツのGMに就任。そこからロケッツは13シーズン連続で勝率5割以上を記録する成功を収め、リーグ制覇こそ成らなかったものの、2015年と2018年にはウェスタンカンファレンス進出を果たしている。
モーリーの最大の功績と言えば、後のMVPであるジェイムス・ハーデンをチームに加えた2012年のトレード。
その後もクリス・ポールやラッセル・ウェストブルックのトレードなど、将来のアセットを次々と手放す見返りにハーデンの相棒になれそうなスター選手を獲得する大胆な人事を決行して、優勝を狙えるチーム作りに励んだ(クリス・ポールのトレード放出に関しては最後まで反対していたらしいが)。
さらにチームのプレイスタイルにおいても、モーリーの影響力は大きい。
近年のロケッツは、ミドルレンジからのショットを可能な限り排除して、 “スリーorリム” を徹底するかなり極端なオフェンスを展開。データ分析から得点効率を追求するこのスタイルは、「モーリー・ボール」と呼ばれている。
▼2019-20ロケッツのショットチャート
2018年
モーリーGM下におけるロケッツのピークは、クリス・ポール加入1年目の2017-18シーズンだ。
この年のロケッツは、レギュラーシーズンで球団史上最高の65勝17敗を記録。プレイオフでも順当に勝ち進み、2018ウェスト決勝ではゴールデンステイト・ウォリアーズ相手に第5戦終了時で3勝2敗のリードと、ファイナル進出に王手をかける。
NBA史上最強チームの一つに数えられる2018ウォリアーズをロープ際まで追い詰めた当時のロケッツだったが、第5戦終盤にクリス・ポールがハムストリング負傷で戦線離脱。
さらに第7戦では前半に二桁リードを奪取しながらも、第2Q中盤から27本の3ポイントショットに失敗と、スリーを打ちまくる“モーリー・ボール”が完全にバックファイアーしてしまい、優勝のチャンスを逃すこととなった。
今後のロケッツは?
今季のロケッツは大きな賭けに出た。
まずオフシーズンに、クリスポールとドラフト1巡目指名権2つ、ドラフト指名権スワップ2つをトレード放出し、オクラホマシティ・サンダーからラッセル・ウェストブルックを獲得。
さらに2月のトレードデッドライン直前には、ロバート・コビントン獲得のために先発センターのクリント・カペラと2020ドラフト1巡目指名権を放出。短所を補強するのではなく長所をさらに伸ばす形で、究極の“スモールラインアップ”に全振りした。
PJ・タッカーをメインのセンターに起用する“マイクロ・ボール”に移行してからのロケッツは、かなり好調だった。特にラッセル・ウェストブルックが、常に5アウトの布陣で伸び伸びとプレイできていた印象だ。
だがバブルでのプレイオフでは、持ち前の得点力が大きく低下。サンダーとの第1ラウンドでは第7戦に及ぶ接戦の末に、ギリギリでシリーズを突破するも、ウェスト準決勝ではアンソニー・デイビスをフロントコートに有するロサンゼルス・レイカーズに圧倒され、シリーズ1勝4敗で惨敗した(リバウンドトータルでは227-163でレイカーズ圧勝)。
ロケッツは来季以降もマイクロ・ボールのスタイルを維持していくのか?今オフFAでの動向に注目したい。
参考記事:「NBA」