NBAエリートガード入門 by C.J.マッカラム
足の怪我により、ルーキーシーズンの大部分を欠場したポートランド・トレイルブレイザーズのC.J.マッカラム。実戦経験はあまり積めなかったものの、サイドラインの特等席から毎日のようにプレイヤーたちを観察し、多くのことを学んだそうだ。
「フロアに立つとアドレナリンが体を駆け巡り、プレーに夢中になってしまう。だけどベンチから試合を観察すれば、あらゆることを学習できる」
マッカラムはそう語る。どの選手がどの位置からのシュートを好むのか、各チームのピック&ロールの守り方はどうか、どのビッグマンがスクリーンをかわすのが上手いのか…。
今回取り上げるのは、マッカラムがゲーム観察から得た知識をまとめあげ、米スポーツコラム「The Players Tribune」に寄稿したNBAエリートガード4選手のスカウティング・レポート。テレビのスクリーンを通してだとなかなか見えてこない、現役選手ならではの視点からスタープレーヤーたちの分析がなされていて非常に面白い。
<以下、The Players Tribuneの記事「Elite Guards 101」を抄訳>
1.クリス・ポール
クリスのクセについては前からいくつか知っていた。大学時代に彼のポイントガードキャンプに参加したことがあるからね。クリスはボールスクリーンを抜けてから、右手に切り返すのが好きなんだ。
それからCP3はサイドドリブル・ヘジテーションからのシュートもよくやる。彼ならではのスキルだ。シュートを打つためのスペースをさりげなく作り出しているだろ?
続いてディフェンス。トランジションやピック&ロールの守りで相手を後ろから追いかける際、ポールはリーチしない側の体をポンポンとタップしてくるんだ。
そうだな、例えば君が右手でドリブルしている時に、ポールが後ろから追いかけてきたとしよう。そうすると彼は君の左腰、もしくは左足を軽く2回叩いてくる。すると君はポールが左側にいると思わされてしまう。そこで右手にリーチしてくるんだ。
とにかく彼は巧みなトリックをいくつも持っているよ。
2.ステファン・カリー
カリーはタフな選手だ。アンダーハンドのスクープショットからフローター、そして得意のトランジション・スリーポイントまで、あらゆる武器を持ち合わせている。
FIBAトーナメントの試合で思ったんだけど、カリーのショットフェイク→サイドドリブルからのシュートは、俺がこれまでに目撃したなかで最高レベルだよ。当然ながらシューターとしての実績があってこそだ。
カリーは左にドライブする際、前置きとして右から左へのクロスオーバーを入れる傾向がある。そこからアンダーハンドのスクープショットやフローターなど、いろいろなタイプのフィニッシュに繋げる。セルジ・イバカに対して使ったこのフローターのクレイジーな放物線を見てほしい。
他にもカリーは数々のドリブルムーブを持っている。プルアップ・ジャンパーに必要なスペースを作り出すための技だ。カリーのゲームはすごく多彩なので、そのすべてを取り上げるのはとても難しい。彼のシュート成功/失敗例を分析し始めると、頭がおかしくなるよ。
カリーは最高に難易度の高いショットを何本も沈めてきた。このレフトハンドのスクープショットが良い例だ。
3.トニー・パーカー
ミドルレンジのマスター。去年は彼を見る機会がたくさんあった。パーカーは必ず右手でレイアップをフィニッシュするんだ。ゴール下で左手は一切使わない。
トニーは、リストリクティッド・エリア周辺でフローターを効果的に使える選手の一人だ。スパーズは「コンティニュイティオフェンス」をたくさん使用する。そのスタイルでは、ボールハンドラーはパス or シュートの決断をほんの一瞬で下さなければならない。でもパーカーにはもう少しゆとりがあるかな。彼はボールスクリーンを拒否して、ワンドリブルからプルアップに持っていくのが好きなんだ。左に攻めるときは特にね。
パーカーはNBAで最もクイックな選手の一人でもある。若手のプレーヤーとしては、彼にタッチすることはできない。触れればファウルを取られてしまうからだよ。判定の難しいプレーの場合は、十中八九でオールスターが有利なコールを得るからね。
またパーカーは、1度ボールを手放してから、ベースラインのトリプルスクリーンを利用してフリーになるオフ・ザ・ボールでの動きが最高に上手いガードだ。それでディフェンスをかき乱して、いいポジションでボールを受け取っている。
それからパーカーはスピンムーブが大好きだね。特にトランジションでよくやっている。
4.ジェイムス・ハーデン
ハーデンは必ず左から攻める。彼が右手でレイアップをやったのは、この3年間で1度しか見ていない気がするよ。たとえ右に攻めても、左手に戻している。
ハーデンは体を使うのが極めて巧みな選手だ。驚異的なアイソレーション・プレーヤー、ピック&ロールのシチュエーションでリーグのベスト・ツーガードといっても間違いない。ハーデンはレッグスルーのステップバックを完全にマスターしているよ。ハイライト映像を見れば、彼がその技を使って何人かの選手をつぶしているのがわかる。
それからハーデンは、体をぶつけてファウルをもらうことに関しても達人級。フロッピングすれすれだと考えられる場合もあるけど、とにかく彼はフリースローラインに立つ手段を熟知したベテランなんだ。
ズームインしてみよう!このスムーズなレッグスルーを見てほしい。
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パート2に続く(またいずれ…)
ソース:「The Players Tribune」