スパーズがウェンビー争奪戦に大勝利、2023NBAドラフト1位指名権獲得!!
一からの再建に突入したばかりのサンアントニオ・スパーズに、さっそくバスケの女神がほほ笑んだ。
NBAでは現地5月16日、2023ドラフトの指名順位を決めるドラフトロッタリーがシカゴで開催。2022-23レギュラーシーズンをウェスト最下位で終えたスパーズが1位指名権を引き当てた。
▼1位指名当選発表の瞬間
2位指名はシャーロット・ホーネッツ、3位指名はポートランド・トレイルブレイザーズが獲得。スパーズと同じ成績(22勝60敗)でシーズンを終えたヒューストン・ロケッツは4位指名で、リーグ最下位だったデトロイト・ピストンズが運に見放されて5位指名に落ちるという形となった。
再建プロセス加速
1990年代後半から22年連続でプレイオフ進出を成し遂げ、その間に5度の優勝などリーグを席巻し続けていたサンアントニオ・スパーズ。
だが2020年にポストシーズンを逃すと、それから間もなくチームの主軸だったラマーカス・オルドリッジとデマー・デローザンを放出。さらに昨季2月にデリック・ホワイト、オフシーズンにデジャンテ・マレーの先発バックコートと決別し、今季から本格的な再建に突入したばかりだった。
しばらくは低迷期が続くかに思われたが、今回のロッタリーで幸運に恵まれたことで、強豪チームに返り咲くまでの道のりが大幅に短縮されるかもしれない。
スパーズファンたちにとって、2017年5月17日のカンファレンス・セミファイナル第5戦(マヌの決勝ブロックショット)以降で最も喜ばしい日となったと言える2023年のドラフトロッタリー。スパーズがドラフト1位指名権を引き当てるのは、今回で球団史上3度目となる。
1度目は1987年のデイビッド・ロビンソンで、2度目は1997年のティム・ダンカン。2人ともMVP級のスーパースターとして名門チームの繁栄に大貢献し、NBA史に名を残すレジェンド・ビッグマンとしてキャリアを終えた。
そして3度目となる今年のドラフトも、1位指名が確実視されているのはビッグマン。221cmの長身にガードスキルを持ち合わせたフランス出身のビクター・ウェンバンヤマだ。
ウェンビー
ビクター・ウェンバンヤマは現在19歳。ディフェンスの要としてリムを守れる圧倒的なブロックショット力を持ちながら、オフェンス面ではガード/ウィングのようにオンボールでピック&ロールを指揮したりプルアップ・スリーを打ちまくるなど、サイズ&スキル&アジリティを持ち合わせた究極のオールラウンダーだ。
現地メディアは、「レブロン以来の超大型プロスペクト」とウェンバンヤマを大絶賛。比較されたレブロン・ジェームズ自身もウェンバンヤマのポテンシャルを高く評価している様子で、昨年10月のインタビューでは「近年は“ユニコーン”と呼ばれる選手がたくさん出ているが、それなら彼(ウェンバンヤマ)は“エイリアン”だ」とコメントしていた。
マヌ・ジノビリやトニー・パーカー、ボリス・ディアウらをはじめ、これまで幾度となくインターナショナル勢に恵まれてきたスパーズ。1年のタンキングの後にウェンバンヤマを獲得できたというのは、なにか運命的なものを感じる。
ウェンバンヤマ自身もスパーズ入団を希望していた様子で、ドラフト1位指名権当選確率でタイだったロケッツの4位指名転落が確定した際にはガッツポーズ。
またロッタリー抽選後には、「フランスとスパーズの間には特別な関係性がある。トニー(パーカー)とボリス(ディアウ)のおかげだね。だからフランスにいるファンたちの多くが、スパーズが1位指名権に当選することを願っていたと思う」とコメントした。
ウェンバンヤマは、過去に前例ないレベルのポテンシャルの塊。
ボールハンドリングやロングレンジショット、プレイメイク力といったオフェンススキルがビッグマンとしては極めて高く、その上リム守備のセンスも抜群。それだけのスキルを持ち合わせながら、隣に並ぶルディ・ゴベアを小さく見せてしまうサイズはまさに驚異的だ。
▼ウェンバンヤマとゴベア
あまりに特異なプロスペクトなため、米大手スポーツサイトの『The Ringer』は、2023NBAモックドラフトでウェンバンヤマを「Z世代のカリーム・アブドゥル・ジャバー」と大絶賛している。
ウェンバンヤマを指名する上での不安要素は、“体の線の細さ”、そして7フッターの選手に常に付きまとう膝などの怪我の心配。この2点さえクリアできれば、世代を代表するスーパースターになること間違いなしだろう。
スパーズの明るい未来
デジャンテ・マレーをオフシーズンにトレード放出したことで、ロスターにオールスター選手が1人もいなくなっていた2022-23シーズンのスパーズ。1967年の球団創立以来ワースト3番目となる22勝60敗(ポポビッチ指揮下の28年間ではワースト)と散々な内容だったが、それがウェンバンヤマ獲得につながったのと同時に、チームの若手コアたちが大きく成長する実りある1年となった。
まずプロ4年目でチームのエースを任されるようになったケルドン・ジョンソン(23歳フォワード)が、1試合平均22.0得点を記録して躍動。さらに3年目のデビン・バッセル(22歳ガード)が怪我に悩ませられながらも自己キャリア最多の18.5得点を平均した他、2022年ドラフト9位指名のジェレミー・ソーハン(20歳フォワード)も1年目から頭角を現し、今季オール・ルーキーの2ndチームに選出された。
▼ソーハン
この若手コアに、一世一代のスーパープロスペクトとされるウェンバンヤマが加わる。すぐに覇権を取り戻すのはさすがに難しいが、数年後には「優勝候補まであとワンピース」といった強豪チームへと躍進を遂げている可能性は十分にあるだろう。
なお今オフのスパーズは、有望なFA獲得のための十分なキャップスペースを保持。もし今夏のキャップホールドとザック・コリンズのサラリーをウェイブすれば、最大で約4300万ドルというマックス級スターと契約可能なスペースを確保できる。
今夏FAは、ジェームズ・ハーデンやカイリー・アービング、フレッド・バンブリートら有力なガード選手が豊富。さすがにハーデン(34歳)とアービング(31歳)は再建真っ只中のチームに関心を持つと思えないが、バンブリート(29歳)ならスキル的にも年齢的にもスパーズの再建ビジョンに合致する選手だと思う。もしスパーズがさっそく来季から本気で勝ちを狙いに行くなら、PGポジションの補強とベテランリーダーシップの獲得は必要不可欠だ。
またトレードも再建プロセスを加速させる手段の一つ。デジャンテ・マレーやヤコブ・ポートルをはじめとしたここ最近の主力総放出ムーブにより、今のスパーズは豊富なドラフトアセットを保有している。
▼スパーズが保有する2023~2025年のドラフト指名権
2023年
- 自軍1巡目指名権(1位)
- 自軍2巡目指名権(33位)
- ラプターズ2巡目指名権(44位)
2024年
- 自軍1巡目指名権
- ラプターズ1巡目指名権(トップ6位保護付き)
- ホーネッツ1巡目指名権(トップ14位保護付き)
- レイカーズ2巡目指名権
- ペリカンズ2巡目指名権
2025年
- 自軍1巡目指名権
- ホークス1巡目指名権(保護なし)
- ブルズ1巡目指名権(トップ10位保護付き)
- 自軍2巡目指名権
- ブルズ2巡目指名権
- ラプターズ2巡目指名権
2024年と25年は、自軍のも含めるとそれぞれ1巡目指名権が3つ!さらに来季から施行されるケルドン・ジョンソンの超割安の延長契約(4年/7400万ドル)も、多くの球団にとってとても魅力的なはずだ。今オフのスパーズは、これら豊富なアセットを使ってオールスター級選手を獲得し、大幅な戦力アップを図るという選択肢もある。
ただ個人的には、トレードなどで強引に再建を推し進めるのではなく、ウェンバンヤマと今の若手コアをじっくりと育てつつ、FAでチーム力を補強していくような形がベストだと思う。ルカ・ドンチッチを獲得できたことで再建を焦りすぎたため、現状やや泥沼にはまりかけているダラス・マーベリックスと同じ失敗を犯すわけにはいかない。
参考記事:「NBA」