2014-15シーズンのNBAで起こるかもしれない15のシナリオ
2014-15シーズン開幕までいよいよ2週間を切った。オフシーズンのFAやトレード、スター選手の怪我や復帰により、リーグのパワーバランスは大きく変化することになるが、今季は一体どんなシーズンになるだろう?
この先10ヵ月で起こることを的確に占うなんて神様でもない限り不可能だが、米スポーツ情報サイト「Grantland」のライター、Zack Lowe氏がとてもユニークで興味深いシーズン予想をしているので、いくつか簡単にかいつまんで紹介したい。
<以下、Grantlandの記事『33 Crazy Predictions for the NBA Season』から一部抄訳>
1.キャブスが得点力/PPPでリーグトップになる
(※PPP=1ポゼッションあたりの得点数)
キャブスは、デイビッド・ブラットHCのシステム(トリッキーなスクリーンやポストアップが特徴のプリンストン・スタイルなオフェンス)を学ぶのに時間が必要だ。ディフェンス面も考慮すると、チャンピョンシップレベルのシーリングに到達するためには、おそらくビッグマンがもう1人、そしてシュートレンジの広いウィングプレーヤーが必要になる。
だがこのチームは、すぐにでも絶対的な得点力を発揮するだろう。
キャブスの主力ラインアップにはスリーポイントシューターが4人もいる。そのうちの一人は、リーグで最もロングレンジが得意なビッグマン、ケビン・ラブだ。しかも4人ともパスを受けてからのドライブ&キックがこなせるプレーヤーで、キャブスはオープンショットを見つけるまでこれを繰り返すことができる。
ラブはブラッドHCにとって理想のビッグマン。レブロンはチームを統率できる高いバスケットボールIQを持った完璧なフロア指揮官だ。
ラブとカイリー・アービングはある程度自分のプレーを犠牲にする必要がある。そしてディオン・ウェイターズは恐らく「俺に1試合20本のシュートを打たせるべきだ」といまだに考えているだろう。だが、あるべき形でボールを回すことができれば、全員に十分なチャンスが与えられるはずだ。
トリスタン・トンプソンとアンダーソン・バレジャオが同時に出場する場合、ややスペーシングに問題が生じるが、キャブスは解決策を見つけるだろう。ロールプレーヤーをもう1人加えて、チームに成熟する期間を1年与えれば、このキャブスはナッシュ時代のフェニックス・サンズを超越して、リーグ史上最高のオフェンスシーズンを記録する可能性もある。
対抗馬となるチームはたくさん潜んでいる。ケビン・デュラントの怪我でサンダーは候補から外れるが、スパーズのオフェンスは常にリーグのトップ5クラス。ロケッツも有力だ。ウォリアーズもプレシーズンでは素晴らしいパフォーマンスをしている(うち2試合は対レイカーズだけど)。
昨季前半でリーグのベストオフェンスを誇っていたブレイザーズは、その時のピースを取り戻しつつある。オールスターゲーム以降でベストオフェンスだったマブスもさらに良くなった印象だ。
だが本命はキャブスだ。
2.リーグはスリーポイントのアテンプト数で再び記録更新する
歴史は行進を続けていく。
3.ペイサーズはロスターをキープしてもプレーオフに届かない
昨季の2月1日以降、ペイサーズのPPPはリーグ29位を記録した。その上、オフシーズンにチームのナンバーワンとナンバーツーのペリメーター選手を失っている。
ペイサーズのプランは聞こえがいい: タンク(わざと負ける)はしない、デビッド・ウェストとロイ・ヒバートをキープする、死ぬ気でディフェンスに取り組む…。
だが、どうしても得点源が不足している。ペイサーズが一体どのようにしてペイントエリアにボールを運ぶつもりなのか不明だし、ヒバートとウェストのポストアップを恐れるチームもいないだろう。
イーストの中堅層はもっとマシなはずだ。プレイオフレースから取り残されるチームはペイサーズになりそうである。
ペイサーズに関するボーナス予想としてもう一つ。来季はロドニー・スタッキーがチームのリードスコアラーになる。
4.ピストンズがプレイオフに進出する
これはむしろヒート、ネッツ、ニックス、ペイサーズが頼りないというのが理由だ。ホーネッツが期待値を下回る可能性もあるし、ホークスに関しては新オーナーを巡る問題がどう進展するのか誰にもわからない。
ピストンズは十分なウィングシューターを手に入れた。スタン・ヴァン・ガンディ新HCは、チームの基礎的なディフェンスやローテーションを安定させ、アンドレ・ドラモンドを攻守両面で育成させるだろう。そしてブランドン・ジェニングスが酷いショットを連発するようなら、コーチにはD.J.オーガスティンという適任な代役ポイントガードがいる。
ニックスは複雑な新システムを学習中な上、ディフェンスがリーグ下位10チームに入ると予想される。ネッツは面白いピースが揃っているが、ブルック・ロペスとデロン・ウィリアムスの健康状態を長期維持できるということを証明しなくてはならない。
ヒートはとにかく層が薄い。ダニー・グレンジャーやユドニス・ハスレムといった選手に大きく頼らなければならないような状況だ。ポイントガードのローテーションは恐らくリーグ最悪で、もしドウェイン・ウェイドがピック&ロールの第1オプションとして仕事できないようなら、ヒートはオフェンスを作り出すのに相当苦労するだろう。
エリック・スポールストラHCは優秀なコーチだ。レブロンがいた頃のようにボールを動かし、スペースを最大限に広げようとするだろう。新たに加入したジョシュ・マクロバーツはスポールストラのシステムにぴったりとはまる。
だがレブロンはもういない。もしウェイドにガタが来たり、長期離脱するようなことになれば、ヒートはプレーオフの椅子から転げ落ちる危険がある。
5.レイカーズのディフェンス/「1ポゼッションあたりの失点」はリーグ28位もしくはそれ以下になる
スタッツをベースにした予想を使えば、すべてがシクサーズを「1ポゼッションあたりの失点」で最下位に位置づけるはずだ。今季のシクサーズにはナーレンズ・ノエルがいるが、それでもチームは最悪。1ポゼッションあたりの得点/失点の両方でリーグ最下位になるという歴史的にまれな記録を打ち立てるリスクさえある。
レイカーズがディフェンス面でリーグ最下位にならない理由はシクサーズがいるから、ただそれだけだ。スクリーンをすり抜けられるポイントガードやウィングのストッパーはおらず、チームスピードやリムプロテクションもミニマム仕様。今季のレイカーズには、ごく平均的なディフェンスをするだけの原料すら一つもない。
6.シクサーズの勝率が昨季の19勝を下回る
7.ジョエル・エンビードは今季プレーする
シーズン終了の数週間前にはエンビードの出陣準備が整うだろう。シクサーズは意気消沈したファンたちに先の希望を見せつけておいた方が良い。
8.サージ・イバカがディフェンシブ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーを受賞する
ドワイト・ハワードの独壇場だった数年前とは違い、今のリーグで最優秀守備選手賞を確実視されるプレイヤーはいない。デュラントの負傷により、サンダーではロールプレイヤーたちにスポットライトが当たるようになる。もしイバカがシーズンを通してディフェンスを安定させれば、最有力候補に名前が挙がるはずだ。
9.アンドリス・ビードリンシュが少なくとも1本のフリースローを決める
ビードリンシュはもうNBAにいない。だがこの件は毎年恒例なので、必ず付言せねばならないのだ。この世界のどこかのバスケットボールコートで、彼は少なくとも1本のフリースローを沈めることだろう。
10.ジェイソン・スミスがニックスのベスト・マルチタスク・ビッグマンとして活躍する
オフシーズンにニックスへと移籍したジェイソン・スミスは、決して素晴らしいディフェンダーというわけではない。しかしアマーレ・スタウダマイアーとアンドレア・バルニャーニのコメディーコンビよりは遥かにマシだ。スミスはピック&ロールに対応できるだけの機動性を持っているし、ヘルパーとしてゴール下を守るためのジャンプ力も十分にある。
スリーを打ったり、ベースラインで華麗なスピンムーブを披露することはないが、自分の限界をよく理解し、仕事をちゃんとこなす選手。スミスは成功率45%+のミドルレンジシューターで(主にピック&ポップから)、サミュエル・ダレンベアよりも上手くトライアングルにフィットするだろう。
11.カイル・ローリーがオールスターに出場する
その時は来た。オールスター選考はどこか『オスカー賞』みたいなところがある。前の年に本来受賞すべきだった人に対して、罪悪感に動かされた投票が集まる。デリック・ローズやレイジョン・ロンドの復帰で競争は一層と激しさを増すが、今季のラプターズは上々な成績を記録するはずだ。コーチたちは、ラプターズに最低でも1つのオールスタースポットを用意するだろう。
12.カイリー・アービングが再びオールスター先発出場する
ガードポジションのスターター争いは昨季よりも激しい。ロンドとローズが戻ってくる上、ジョン・ウォールも勢いがあり、昨年先発のウェイドはヒートでエースとしての役割を取り戻す。特にローズの人気は高く、ファン投票でアービングの最大のライバルとなるだろう。
だが今季のメインストーリーは何といってもキャブスだ。それにアービングは去年のオールスター投票でもウェイドと7万票差にまで迫っている。
13.デマーカス・カズンズがオールスター初出場する
ラブはイーストに渡った。だが、コービー・ブライアントとラッセル・ウェストブルックは再び健康で、デュラントもオールスターまでに完全回復してスポットを確保するだろう。昨年のウェストロスターから確実に脱落しそうなビッグマンは今のところ見当たらないし、すでにテクニカルファウルを2つ与えられたカズンズのプレシーズンもプラス材料にはならない。
それでもだ。カズンズはチームUSAでの経験で成熟し、光沢を放っている。来季は怪物的な成績を残すだろう。ディフェンス面でも大きく進歩した(少なくともベストを尽くした時は)。
14.ウェストは昨季と同じチームがプレイオフに残る
ウェスタンカンファレンスで、どのチームがプレイオフから脱落するか、もしくはどのチームが椅子を奪いにくるのか?これを決めるのは難しい。
リーグ関係者の予想では、メンフィス・グリズリーズが犠牲者になる可能性が高いとみられている。だが昨季のグリズリーズは、マーク・ガソルとトニー・アレンを長期間欠いたにもかかわらず、50勝を挙げた。書類の上では、ガソルやザック・ランドルフ、ビンス・カーターの年齢が不利に映るかもしれない。しかしグリズリーズは、毎試合で猛烈なディフェンスを披露する非常にディープなチームだ。
昨季を快進撃でスタートしたブレイザーズは、“わずか”23勝19敗の勝率でシーズン後半を終えた。どこか頼りなかったローリスク・スタイルのディフェンスもそれほど改善されていない。
ロケッツはチャンドラー・パーソンズを失った。ウォリアーズは傷を負ったボディーに頼らなければならない部分があり、マブスは昨季のプレーオフにかろうじて滑り込めたチームだ。
スパーズ、サンダー、クリッパーズ以外の上位チームは、たった1つの大きな怪我ですべてが台無しになる。だがそれは、サンズやナゲッツ、ペリカンズにも同じことがいえる。
ペリカンズは、もしタイリーク・エバンスが先発出場するなら、ライアン・アンダーソンを除いて、ベンチ層の厚さがゼロに等しくなる。それにエバンスとアンソニー・デイビス、オマー・アシックが同時に出場すれば、スペーシングの面で問題が出てくるだろう。
総合的に見て、マーキーフ・モリスはチャニング・フライ よりも優れた選手だが、ロングレンジシューターとしては遠く及ばない。よってサンズのガード陣は狭くなるドライブレーンに苦戦するだろう。サンズが昨季のようにリーグの不意を突くことはできない。多くの選手たち、特にゴラン・ドラギッチは、キャリアハイとなった昨シーズン同等のパフォーマンスを披露する必要がある。ただ昨季はエリック・ブレッソーが半分近く欠場したが、今季は違う。まったくウェストはアンフェアだ。
ナゲッツは14選手のローテーションが可能になるかもしれない。万全な体制ならホームで30勝を挙げられるチームだ。そこから単純に計算すればプレイオフが見えてくる。
だが水面下に潜む問題もある。タイ・ローソンは足首に不安を抱えている。センターポジションには実績がない。恐らくブライアン・ショーHCはトライアングル・オフェンスへの意欲をまだ失っていないだろう。そしてこのロスターからは、シェイクアップすべき時期だという雰囲気が感じられる。
デンバーには年棒が450万ドルから1150万ドルの選手が7人いて、そのほとんどが短期契約だ。この先数ヵ月間にかけて、彼らは数々のトレードトークの対象になるだろう。ただし、これらトレード可能な選手たちは、怪我や期待外れのシーズンで失ったトレード価値を再構築しなければならない。
ナゲッツは自身をプレイオフチームだと考えている。だが序盤から出遅れるようなことになればどんなリアクションをみせるだろう?
これら3チームのいずれかがリーグをサプライズさせるかもしれない。しかし、屈強な上位8位に割り込めるだけの堅固さが、どのチームからも今のところ感じられない。
15.予想外のクレイジーな出来事がたくさん起こり、そのいくつかはチャンピョンシップレースに大きく影響する
Images via YouTube/NBA
参考記事:「Grantland」