NBA史上最大の番狂わせ:「We Believe」ウォリアーズが1位シードのマブスを撃破
今から13年前の2007年5月3日、ウェスト8位シードのゴールデンステイト・ウォリアーズが、プレイオフ第1ラウンドで1位シードのダラス・マーベリックスに勝利。「NBA史上最大の番狂わせ」とされるシリーズだ。
マブスは2006年のNBAファイナルでマイアミ・ヒート相手に2勝0敗のリードから惜敗。続く2006-07シーズンでは、前年の悔しさをバネに球団史上最高成績となる67勝15敗を記録する快進撃を見せ、トップシードでプレイオフ進出を決める。エースのダーク・ノビツキーはマブス初のMVPに輝いた。
優勝大本命として2007ポストシーズンに臨んだマブス。初優勝へのシナリオは完璧に見えたが、その前に立ちはだかったのが「We Believe」のウォリアーズだった。
▼シリーズ第1戦のバロン・デイビス
当時のウォリアーズは、決して強豪チームではなく、むしろ10年以上にわたる低迷に苦しむ絶望的な弱小球団だった。
1994年から2006年までの12シーズン連続でレギュラーシーズン敗退。2006-07シーズンも大部分で借金状態が続き、今年もまた駄目かと思われていた。だがシーズン最後の21試合を16勝5敗で勝ち越し、レギュラーシーズン最終日に42勝40敗で8位シードでのプレイオフ進出を決める。
ウォリアーズにとって、ポストシーズンは13年ぶりの快挙。そういった背景もあって、当時のウォリアーズファンは「We Believe」というスローガンを掲げて熱狂した。
そうして迎えた2007年ウェスタンカンファレンス第1ラウンド。1999-00レイカーズ以来初、史上9チーム目となる67勝を達成したマブスに、ギリギリでプレイオフに滑り込んだ万年弱小チームのウォリアーズが挑む。マブスが完全有利と思われていたシリーズだったが、ウォリアーズが奇跡を起こす。
当時のNBAは、今ほど3ポイントショットに重点を置いておらず、「3&D」や「ストレッチビッグ」といったワードもなかった時代だ。そんな中でウォリアーズは、機動力とフロアスペース重視のスモールラインアップを軸としたラン&ガンを展開し、1位シードのマブスを圧倒。時代を先取りしたかのようなオフェンススタイルだった。
▼シリーズ第3戦
ウォリアーズは敵地での第1戦で二桁点差の快勝をあげて大波乱を巻き起こすと、続く3試合中2試合に勝利してシリーズに王手。
第5戦では残り時間2分30秒の6点リードから逆転負けを喫するも、オラクルアリーナでの第6戦に111-86で圧勝し、1991年以来となるウェスト準決勝進出を決めた。
「We Believe」ウォリアーズのベストプレイヤーは間違いなくバロン・デイビスだが、マブスとのシリーズでのMVPは、2007年1月にトレードでチームに加入したスティーブン・ジャクソンだったと言えるかもしれない。
同シリーズでのジャクソンは22.8得点、4.5リバウンド、3.7アシストを平均しつつ、守備でもオールラウンドに大活躍。要所要所でダーク・ノビツキーのガードも担当した。ノビツキーは6試合で平均19.7得点、FG成功率38.3%と、MVPとしてはかなり物足りない結果に終わっている。
▼第6戦でのジャクソンはスリー7本に成功
マブスにとって、 「We Believe」 ウォリアーズは最高に相性の悪い相手だった。また、前年までマブスのHCを務め、チームの弱点を知り尽くしていたドン・ネルソンがウォリアーズの指揮を執っていたというのも、番狂わせの大きな要因になったはずだ。
優勝候補のマブスを破った2007年のウォリアーズは、続くウェストセミファイナルで1勝4敗でユタ・ジャズに敗退。その後は再び低迷期に入り、ステフィン・カリーがスタープレイヤーとして台頭する2012-13シーズンまでプレイオフから遠ざかっていた。
大記録は残せなかったものの、多くのファンの記憶に残ることとなったチーム。「We Believe」はまさに奇跡の1年だったと言える。
ノビツキー祭壇誕生へ
1位シードのチームが8位シードに敗北したのは、この時がNBA史上3回目だった(その後、2011年のスパーズと2012年のブルズが1位シードで1回戦敗退したので計5回)。
まさかの結末に、当時28歳だったダーク・ノビツキーはフラストレーションを爆発。オラクルアリーナでのシリーズ第6戦の試合後、ロッカールームに戻ったノビツキーは全力でゴミ箱に八つ当たりをし、部屋の壁に大きな穴をあけてしまう。
器物破損の被害者となったウォリアーズだが、ノビツキーにその責任を問うようなことはしなかった。壁の穴は修復せずにそのまま保存。そこにWe BelieveのTシャツを祭り、さらに数年後にはノビツキーが直筆サインを穴の下に付与する。「ダーク祭壇」(The Dirk Shrine)として、オラクルアリーナのレガシーの一部となった。
ウォリアーズは2019-20シーズンから長年のホームだったオークランドのオラクルアリーナを離れ、サンフランシスコ市内のチェイスセンターに本拠地を移転。「ダーク祭壇」は壁をそそのまま切り抜く形で、新アリーナへと継承されたようだ。
シリーズスタッツ:「Basketball Reference」