ESPNの2018-19NBAプレイヤーランキング: Top10
ESPNが毎年恒例の「NBAプレイヤーランキング100」の2018-19シーズン版を発表した。
今年で8回目となる同ランキングは、NBAのリポーターやアナリストたちが各選手の来季パフォーマンスを予想し、「レブロンvsカリー」「アービングvsバトラー」といった具合に1対1形式の投票を繰り返してランク付けしたもの。質(アドバンスドスタッツなど)と量(出場時間など)の両方でどれだけチームの勝利に貢献できるかが、ランキングの判断基準となっている。
2018-19シーズンのTop10は以下の通り:
10位:デイミアン・リラード
- ブレイザーズ:PG
- 昨季の順位:18位
昨季がプロ6年目だったリラードは、73試合の出場でリーグ4位の26.9得点、6.6アシストを平均して、ブレイザーズをウェスト3位シードに牽引。MVP投票で4位の票数を獲得し、ガードポジションの黄金時代とも言える現リーグでキャリア初のオールNBAファースト・チーム選出を果たした。C.J.マッカラムとのバックコートコンビは攻撃力抜群で、昨季は平均得点で王者ウォリアーズのスプラッシュブラザーズを上回っている。
ただ昨季プレイオフでは、第1ラウンドでペリカンズのトラップ・ディフェンスに大苦戦し、本領を発揮できないままスウィープで敗退。名誉挽回に燃える来季リラードに期待したい。
9位:ジョエル・エンビード
- 76ers:C
- 昨季の順位:32位
2013年ドラフトから5年目にして、ようやくシーズンの半分以上をプレイできた昨季のエンビード。66試合の出場で平均22.9得点、11.0リバウンド、1.8ブロックと圧巻の数字を記録し、オールNBAセカンド・チームとオール・ディフェンシブ・セカンド・チームに選出された。
エンビードはまだ24歳と若く、今後も健康状態さえ維持できれば、近いうちにMVPを獲得してもおかしくない選手。センターポジションからのMVP選出は、2000年のシャキール・オニールが最後となっている。
8位:カワイ・レナード
- ラプターズ:SF
- 昨季の順位:3位
昨季のレナードは、大腿四頭筋腱の怪我によりシーズンの大部分を欠場し、9試合の出場で16.2得点を平均。1シーズンをほぼ全休した選手が8位なのは少し高すぎる気もするが、レナードは25得点を平均しながら、敵チームのエースを抑え込める稀有な選手だ。もし2016-17シーズンのパフォーマンスを取り戻せるなら、レブロン離脱後のイーストを席巻するプレイヤーになるだろう。
7位:ラッセル・ウェストブルック
- サンダー:PG
- 昨季の順位:5位
昨季のラッセル・ウェストブルックは、80試合の出場で25.4得点、10.3アシスト(リーグ1位)、10.1リバウンドを平均し、NBA史上初となる2年連続のシーズントリプルダブルを達成。しかもシーズンTDを確定させたのがレギュラーシーズン最終日の試合で、平均二桁リバウンド到達にあと16リバウンド必要だったところ、それを大きく上回る自己キャリア最多の20リバウンドを記録した。何ともウェストブルックらしい。
ウェストブルックは人によって大きく評価が割れるプレイヤーだ。絶好調の時は完全にアンストッパブルだが、反対にまったくリズムを掴めない試合でも躊躇なくジャンプショットを連発するなど、暴走してしまうことも度々ある。
どんな場面でも絶対に臆さない、アグレッシブさを失わないというのは、ウェストブルックの良いところであり、魅力的な部分とも言える。ただ、ショットクロック序盤でのバランスの悪いプルアップスリーやロングツー(自分でピック&ロールをコールしたくせにスクリーンを使わず突然タフショットを放ったり…)など、ヘッドコーチの血圧を急上昇させるバッドショットが、他のスター選手に比べて圧倒的に多い。
昨季はビッグスリーを結成するも、プレイオフ第1ラウンド敗退という残念な結果に終わったサンダーだが、今オフではポール・ジョージの引き留めに成功。もしウェストブルックが1試合につきバッドショットを3~4本(特にロングツー)を減らすことができれば、サンダーはさらに上を目指せるチームになるはず。
6位:アンソニー・デイビス
- ペリカンズ:PF/C
- 昨季の順位:6位
昨季のアンソニー・デイビスは、キャリア最多となるシーズン75試合の出場で、28.1得点、11.1リバウンド、2.6ブロック(リーグ1位)を平均し、オールNBAファースト・チームとオール・ディフェンシブ・ファースト・チームに選出。オールスターのデマーカス・カズンズがシーズン中盤で負傷離脱する中、ペリカンズをウェスト6位シードへと導き、MVPレースではジェイムス・ハーデンとレブロン・ジェイムスに次ぐ3位の票数を獲得した。
今オフはカズンズがウォリアーズに移籍してしまい、“ツインタワー”時代がわずか1年半で終了することとなったペリカンズ。有望な若手(バディ・ヒールド)やドラフト1巡目指名権を手放して獲得したスター選手を、何の見返りもなしに失ったのは痛手だろう。
ただ昨季終盤からのペリカンズは、カズンズ離脱の影響を少しも感じさせないどころか、むしろチームとしての完成度が上がったかのような快進撃をみせた。ペリカンズがカズンズ抜きでも大成功を収められた主な要因は、ツービッグのフロントコート体制から、デイビスをセンターに置くモダンバスケへとスタイルをアジャストしたことだ。
▼デイビスがセンターのペリカンズオフェンス
カズンズがポイント・センターとして攻撃の起点となるツインタワー体制も確かに強かった。NBA.comのデータによると、昨季ペリカンズはデイビスとカズンズがフロアをシェアした時間帯(約1100分)に、100ポゼッションあたりの得失点差で+4.5点を記録。これは昨季リーグ5位だったユタ・ジャズに並ぶ数字だ。
その一方で、デイビスとニコラ・ミロティッチがフロントコートに入った時間帯(約600分)では、100ポゼッションあたりの得失点差で+10.7点。リーグトップのロケッツ(+8.5)やウォリアーズ(+8.1)を大きく上回っている。
ストレッチフォーでフロアスペースを広げつつ、とにかく走るハイペースなバスケこそが、デイビスの能力を最大限に引き出せる布陣なのだろう。オフェンスだけでなく、ディフェンスでの機動力も遥かに増す。ブレイザーズとのプレイオフ第1ラウンドで、デイミアン・リラードのピック&ロールを上手く潰せたのも、デイビスとミロティッチがペリメーターで機敏に動けたからこそだ。カズンズがセンターに入ると、そこまでアップテンポなプレイはできない。
デイビスの契約は、今季を含め実質残り2年(2020-21はオプション)なので、ペリカンズにとって今季は正念場となる。昨季以上の成功を収め、さらに来夏でもう1人のスターを獲得するなど、フランチャイズエース引き留めのための地盤を固めておきたいところだ。
4位タイ:ヤニス・アデトクンボ
- バックス:F
- 昨季の順位:9位
昨季がデビュー5年目だったヤニス・アデトクンボは、75試合で26.9得点、10.0リバウンド、4.8アシストを平均し、オールNBAセカンド・チームに選出。特にシーズン序盤は、MVPレースの先頭を走るような圧巻のパフォーマンスだった。
今やリーグを代表するスター選手の一人となったアデトクンボだが、少しもハングリー精神を失っておらず、今オフにはコービー・ブライアントに稽古をつけてもらい、バスケットボールに対する理解をさらに深めたとのこと。コービーとのワークアウト当日は、予定よりも3時間早くジムに入って準備をするほどのやる気を見せていたという。
今季のバックスは、オフェンス戦略に長けたマイク・ブーデンホルザー新HCの指揮下で、アデトクンボがどんな躍進を遂げられるのかに注目したい。
4位タイ:ケビン・デュラント
- ウォリアーズ:F
- 昨季の順位:2位
昨季のケビン・デュラントは、65試合で26.4得点、6.8リバウンド、5.4アシスト、1.8ブロックを平均するオールラウンドな大活躍を見せ、キャリア6回目のオールNBAファースト・チームに選出。プレイオフでは平均29.0得点とさらにステップアップし、NBA史上6人目となる2年連続でのファイナルMVP受賞を達成した。
ウォリアーズ移籍後は、歴代屈指のスコアラーとしてだけでなく、ディフェンダー(リム・プロテクター)やクラッチシューターとしての評価も大きく上がったデュラントだが、メディアやファンからの風当たりは相変わらず厳しい。NBA2連覇という大成功を収めた今でも、宿敵だった73勝チームに加入したことについて「イージーな道を選んだ」などといった批判の声が、一部のファンや元選手たちから聞こえてくる。
今オフに再びマックスサラリー以下の金額でウォリアーズと1+1の短期契約(2年目がオプション)を結び、来夏にオプション破棄でFAになると予想されているデュラント。そこでどんな決断をするのか非常に楽しみだ。ウォリアーズに残りダイナスティ維持を目指すのか、もしくは他のチームで新たな挑戦に乗り出すのか?
3位:ジェイムス・ハーデン
- ロケッツ:SG
- 昨季の順位:8位
2017-18シーズンののハーデンは、72試合の出場でキャリアベストの30.4得点、8.8アシスト、5.4リバウンド、1.8スティールを平均し、ロケッツをウェスト首位で球団新記録の65勝17敗に牽引。2年連続での満票オールNBAファースト・チームに選出され、念願のMVP受賞を果たした。
これでオクラホマシティ・サンダーが2007年~2009年にかけてドラフト1巡目指名した3選手全員がMVPを獲得。また、MVPとシックスマン賞を受賞した選手は、ビル・ウォルトンに次いで、ハーデンが史上2人目となる。
昨季ハーデンは、さらに磨きのかかったステップバック・スリーやファウルドローのテクニックを武器に、平均得点とフリースロー成功数でリーグ最多を記録。特にピック&ロールで相手の弱点を引きずり出してからの1on1は破壊力抜群で、アイソレーションの得点効率(ポゼッション当たりの得点)では、リーグダントツ首位の1.22点を記録した。
通常、アイソレーションの得点効率は、0.90点を超えればエリートと呼べるレベル。ハーデンが昨季に叩き出した1.22点は、満票MVPを獲得した2015-16のステフィン・カリー(1.07点)や、2016-17のアイザイア・トーマス(1.12点)をはるかに上回る数字だ。2014-15シーズン以前のデータがないので正確なことは言えないが、歴代ガード選手の中でも右に並ぶ者はいないと思う。
2位:ステフィン・カリー
- ウォリアーズ:PG
- 昨季の順位:4位
昨季のカリーは26.4得点、6.1アシスト、5.1リバウンドを平均。怪我に悩まされながらも、デビューから9年連続となるスリー成功率40%超えを達成し、51試合という比較的少ない出場試合数でオールNBAサード・チームに選出された。
デュラントがチームに加入して以降は、満票MVPシーズンと比べてボックススコアのスタッツが落ちているが、オンコートでの影響力は変わらず絶大だ。昨季ウォリアーズは、カリー出場時に平均+9.5点で対戦相手をアウトスコアしている(カリーがオフの時は±0)。
また昨季のカリーは、TS%(2P、3P、フリースローを総合してシューティング効率を評価するアドバンスドスタッツ。※計算式)でキャリアベストの67.5%を記録。ハイボリュームスコアラーのガード選手としては前代未聞レベルの数字で、歴代NO1シューターの座をさらに堅固なものとした。
1位:レブロン・ジェイムス
- レイカーズ:F
- 昨季の順位:1位
昨季のレブロン・ジェイムスは、キャリア15年で初めて82試合のシーズンフル出場を果たして、27.5得点、9.1アシスト、8.5リバウンドを平均。シーズン中盤にNBA史上7人目となる通算3万得点突破を達成し、14年連続のオールスター出場、11年連続のオールNBAファースト・チーム選出を決めた。
ESPNのランキングでレブロンが1位に選ばれるのは、これで8年連続。MVPは2013年が最後だが、それ以降も誰もが認めるNBAのベストプレイヤーであり続け、プロ15年目の33歳になっても衰えを一切感じさせない。それどころか、むしろ選手としてさらに完成した印象さえ受ける。
昨季のプレイオフでは、勝負所でクラッチショットを何本も決めながら、22試合で34.0得点、9.1アシスト、9.0リバウンドを平均と、例年以上に支配的なパフォーマンスを披露し、8年連続でのファイナル進出を達成。ファイナルでは宿敵ウォリアーズにスウィープされる残念な結果に終わったが、第1戦はレブロンの輝かしいキャリアの中でも一二を争う素晴らしい試合内容で、PO自己ベストの51得点をマークした。
※ ※ ※
11位から20位は以下の通り:
- クリス・ポール(ロケッツ)
- ニコラ・ヨキッチ(ナゲッツ)
- ポール・ジョージ(サンダー)
- ジミー・バトラー(ウルブズ)
- ビクター・オラディポ(ペイサーズ)
- ドレイモンド・グリーン(ウォリアーズ)
- カール・アンソニー・タウンズ(ウルブズ)
- ベン・シモンズ(76ers)
- クレイ・トンプソン(ウォリアーズ)
- カイリー・アービング(セルティックス)
今年のTop20は、20選手中14選手がウェスト所属。ウォリアーズから4選手、ロケッツ、サンダー、76ers、ウルブズの4チームからそれぞれ2選手がランクインしている。
印象的なのは、ニコラ・ヨキッチ(12)とベン・シモンズ(18)の順位。ヨキッチはディフェンス、シモンズはシューティングと、それぞれ大きな弱点を抱えており、人によっては順位が高すぎると感じるかもしれないが、2人とも20代前半の若手ながらリーグを代表するパサーであり、そのあたりが大きく評価されたのだろう。
21位以下では、ジャズのドノバン・ミッチェルが22位、セルティックスのジェイソン・テイタムが24位と、ルーキーシーズンからプレイオフで存在感を示した2人が上位にランクイン。個人的に、この2人がジョン・ウォール(32位)よりも上なのは謎だ。
他には、マブスのルカ・ドンチッチ(63位)が新人選手として唯一Top100に選出。ウォリアーズに加入してアキレス腱断裂からの復帰を目指すデマーカス・カズンズは69位で、カーメロ・アンソニーは100位以内に入っていない。
Image by Erik Drost
参考記事:「ESPN」