グレッグ・ポポビッチHC、NBAやダンカンを語る
サンアントニオ・スパーズのグレッグ・ポポビッチHCが現地24日、元NBA選手のトム・トルバートがホストを務めるベイエリアのラジオ番組に出演し、珍しくロングインタビューに応じた。
試合などではリポーターを煙に巻くような簡素な取材対応をみせるリーグ屈指の名将だが、この日は25分以上にわたり、リーグのトレンドやティム・ダンカン、アシスタントコーチのベッキー・ハモンなど、いろいろなトピックについてじっくりと考えを語った。
スリーポイントについて
「スリーポイントラインがすべてを変えた。(今のリーグでは)スリーを決められなければ、その代償を払うことになる。スリーを打つ手段を見つけ出さなければ、その代償を払うことになる。ビッグマンたちがこれからも重宝されるための方法の一つは、ダブルチームを引きつけられることだろう。もしチームにダブルチームの必要がないビッグがいるなら、それは問題だ。ダブルを引きつけられるビッグがいてこそ、ボールが動くようになり、そこからペネトレーションやスリーを狙うことが可能になる」
「以前とは違い、スリーポイントシュートはツーポイントよりも遥かに価値が増した。もはやそれを無視することはできない。よって、ペネトレーションとジャンプショットのバランスを保つように心がける必要がある。だがペネトレートするときは、常にノーマークのスリーポイントシューターへのキックアウトを頭に置かなければならない」
ベッキー・ハモンについて
「スパーズが彼女を採用した時は、大きな話題になった。そしてサマーリーグでの成功を経て、さらに大きく注目されることとなった。だが我々は、少しもそんな風に考えていなかった。私がベッキーを採用したのは、彼女が怪我をしていた1年間、ずっと私のコーチミーティングに参加していたからだ。彼女はバスケットボールに対して確固たる考え方や意見を持っている」
「言うまでもなく、現役時代のベッキーは素晴らしい選手だった。ポイントガードとしてリーダーを務め、情熱的で非常に知的。スパーズの選手たちは彼女のことを心からリスペクトしている。だから彼女はコーチ陣の一員として試合に参加し、練習ではドリルを指揮した。だから我々は、彼女をフルタイムのコーチングスタッフとして迎え、サマーリーグでHCを務めるチャンスを与えた」
「私はベッキーのことを『女性初の~』などという目で見ていない。彼女は実力のあるコーチだ。我々が彼女を採用したことについて、目立つため、あるいはいい格好をするため、などと考えた人間もいたらしい。だが私は、彼女がチームの一員であることを嬉しく思う。私は彼女の意見をリスペクトしている。彼女との持ちつ持たれつの関係を楽しんでいるよ」
スパーズの成功とティム・ダンカンについて
「幸運のおかげという部分が大きいのは明らかな事実だ。(ドラフト1位指名権を使って)ティム・ダンカンを指名するのは、ちっとも難しい決断ではない。我々に手柄があるとすれば、そのチャンスを『台無しにしなかった』というところだろう。そこから先は、彼の周りにプレーヤーを集め、我々の仕事をこなすだけだった。ティムが静かなリーダーとして、そして競争者としてどれほど素晴らしい人間なのか、それを言葉で説明するのは不可能だ。彼はチームの全員に対して責任を感じている。一定レベルのパフォーマンスを維持しなければ、みんなをがっかりさせてしまうと考えている。これほどの責任感を個人的に背負い、それを行動に移せる能力は、いかなる組織においても極めて稀な存在だ。だがティムはそれをこなしている。上手くいかなかったときは誰かに責任を押し付けたりせず、そして上手くいったときも自分の手柄にしたりしない。ティムはまさにチームのリンチピン(かなめ)だ」
「NBAには、私が到底コーチできないような選手やチームがたくさんいる。私は一切遠慮しない性格だからね。だが我々はそのやり方を信じている。あいまいな言い方などしない。悪い結果を出せば指摘する。反対に良い結果を出せば、そのことをちゃんと伝える。もしティムがリバウンドをおろそかにしていれば、ロスター11~12番目の選手と同じように厳しく注意する。だが、こういったことに耐えられないスターがたくさんいるんだ。批判されることをとにかく嫌う。その点でティムは、私がいつでも言いたいことを言う人間だということを理解しており、その状況に満足を感じている。だがそれと同時に、勝ち負けに関係なく、バスケットボールを離れれば、私はティムを大切にするし、彼もそのことをわかっている。一緒に食事に出かけ、家族や世の中の話をする。そういった部分も必要なんだ。ガミガミと叱りつけるだけでは上手くいかない」
Image by jmtimages/Flickr
参考記事:「Dime」