マヌ・ジノビリ 「僕はオールスターに相応しくない」
2018年のオールスターファン投票では、ウェスタンカンファレンスのガード部門で2位に選ばれたサンアントニオ・スパーズのマヌ・ジノビリ。今季がキャリア最後の年になる可能性が高いこともあり、多くのスパーズファンや母国アルゼンチンのファンが票を投じ、さらに同郷でサッカーレジェンドのリオネル・メッシがSNSでジノビリへの投票を促すなど、各地から大きなサポートを受けた結果、昨季MVPのラッセル・ウェストブルックや今季得点リーダーのジェイムス・ハーデンなどリーグを代表するスーパースターを上回る票数を獲得した。
もしこれがプレイヤー/メディア投票のなかった2年前なら、40歳でキャリア初のオールスター先発出場という伝説が生まれていたわけだが、ジノビリ本人はむしろ選ばれなくて正解だったと考えている様子。ジノビリは、アルゼンチン日刊紙の『La Nacion』にコラムを寄稿し、ファンたちに感謝を述べつつ、今年のオールスター投票に関する本音を語った。
「僕をオールスターにするために時間と労力を注いでくれてありがとう。心から感謝している。みんなからの愛は伝わったし、その優しさに勇気づけられた。だが僕はオールスターには程遠い。オールスターゲームは、今を輝く選手たちのためのショーだ。カリーやハーデン、ウェストブルック、クレイ・トンプソン、ジミー・バトラー、リラード、マッカラム、ルー・ウィリアムズ、クリス・ポール…。僕よりも彼らこそがオールスターに相応しい。僕にはすでにオールスターゲームに出場する機会があったし、とても楽しんだ。今は他の選手たちの時代だ。オールスターゲームは、キャリアを讃えるアワードじゃない。オスカー賞やマルティン・フィエロ賞とは違う。シーズンのベストプレイヤーたちを讃えるアワードだ」
「正直に言わせてもらえば、今年のオールスターキャンペーンが始まった頃は、僕がオールスターに相応しいと考えている人がいるなんて、笑い話のように思っていた。スタッツや選手がチームに与える影響など、それらを公平な目で見れば、僕がオールスターに選ばれるチャンスがゼロだとわかるだろう。だが投票キャンペーンがどんどん膨らみ、サッカーのアルゼンチン代表選手や大統領、さらにアルゼンチンのテレビスターまで参加するようになると、僕は不安を感じ始めた。その絶大なサポートをどう受け止めるべきかわからなかったからね」
「幸いだったのは、NBAが数年前にオールスター投票のシステムを変更していたことだ。以前はファン投票で決まっていたが、今はプレイヤーとジャーナリストの投票が追加された。リーグは正しい決断をしたと思う。そうすることで参加者がより適切に選ばれているという印象を与える。メインキャストであるプレイヤーたち、そしてバスケットボールを分析する専門家たちからの票を得られないのであれば、その選手は出るべきじゃない。僕はみんなからの愛情、とくにアルゼンチンの人たちが注いでくれた愛情をありがたく思っている。でもNBAにこのルールが存在するのは良いことだ。それにより、最も人気のある選手だけでなく、素晴らしいシーズンを送っている選手がスターティング・ファイブに選ばれやすくなる。つまり僕が言いたいのは、みんなからの応援には感謝している。だがオールスターに選ばれなくて正解だ」
今季のジノビリは、シーズン48試合中37試合に出場し、9.1得点、2.4アシストを平均。スリー成功率でキャリアワーストの32.5%を記録しており、スタッツではオールスターの基準から程遠いが、正念場でチームを勝利に導くクラッチプレイを何度も見せている。
スパーズについて
コラムの中でジノビリは、40歳になった自身のコンディションや、負傷者続出で苦戦している今季スパーズの現状についても触れている:
「今を楽しめているよ。だからプレイし続けたいんだ。自信を持つことで前に進めている。自信を持つことで、たくさん点を取れた試合もある。昨季はまったくショットのリズムを掴めない時期もあった。今季の序盤も同じで、チームに貢献できているものの、とにかく点が取れなかった。だが最近になって流れが変わった。カワイ(レナード)が離脱しているため、他の選手たちがボールを持つ機会が増えたのは確かで、それが僕の自信につながった部分もある。ボストン戦やダラス戦での決勝点、他にもフェニックス戦(21得点)やポートランド戦(26得点)など、多くの点を取れた試合もあった。これだけ素晴らしいパフォーマンスを続けられたのは久しぶりだ。好調の波に乗れて本当に楽しめた。楽しみながらも、現実をしっかり見据えている。良い時もあれば悪い時もある。それがNBAのシーズンだ」
「今季のスパーズは怪我のせいで少し様子がおかしい。チームのエースであるレナードは、2試合出場して回復のために2~3試合欠場するというパターンが続いている。今季のようなシーズンは今まで経験がないと思う。スパーズはカワイを軸にプレイすることで機能するチームだ。現状はバランスが取れていない。ディフェンス面はそれなりに順調で、そのおかげで今の成績を収められている。一方でオフェンス面では、ショットを決めるのに苦労している。今季のスパーズは、ラマーカス・オルドリッジの素晴らしいシーズンにより支えられており、彼のパフォーマンスのおかげで接戦に持ち込めた試合もたくさんある。だがチームには得点源が不足していて、2試合出て2試合休むカワイではなく、100%のカワイを必要としているのは明らかだ。チームが本来の力を発揮するには、カワイの回復を待って、彼が毎試合30~35分プレイできるようになる必要がある」
「カワイだけじゃない。カイル・アンダーソンも負傷離脱したし、彼が復帰したと思ったら、次はルディ・ゲイ。ゲイはチームのナンバー2スコアラーだ。そして今度はダニー・グリーンが足の筋肉を怪我…。本当に奇妙なシーズンだよ。ポップ(ポポビッチHC)はいろいろなラインアップを試す必要があり、それでチームはなかなか安定しなかった。どんな状況であれ、スパーズは常に優勝を狙っているが、ゴールデンステイトは遥か遠くにいる。だが僕たちは上位チームの一つであり、良い勝率を収めている。シーズンは30試合以上残っており、プレイオフに向けて準備を整える時間はまだまだある。それが僕たちの目標だ」
参考記事:「La Nacion」