ロイ・ヒバートが76ersの選手育成コーチに就任
2018年に現役引退を発表した元オールスターセンターのロイ・ヒバートが、今度は教育係としてNBAに復帰する。
The AthleticのShams Charania記者によると、ヒバートはフィラデルフィア・76ersの選手育成部門のコーチに就任。シクサーズは若手ビッグたちの守備力強化に力を入れていく模様だ。
2008年からNBAで9シーズンをプレイしたヒバートは、キャリア662試合で10.0得点、6.7リバウンド、1.7ブロックを平均。一時期はリーグ屈指のリムプロテクターとして強豪インディアナ・ペイサーズの守備の要を担い、2012年と14年にオールスター、2014年にオールディフェンシブ・セカンドチームに選出されている。
ヒバートが全盛期だった頃のペイサーズは、2012-13と2013-14シーズンにディフェンス(守備効率)でリーグ1位の数字を記録した超強力な守備チーム。2年連続でカンファレンスファイナル進出を果たし、ビッグスリー時代のマイアミ・ヒートと互角に渡り合った。
▼2013-14ヒバート
なぜヒバートは駄目になった?
現在ロイ・ヒバートは32歳。他の多くの選手が現役を続けている年齢だ。ヒバートは2014年にDPOY投票で2位に選ばれるほど優秀なセンターだったが、2014-15シーズンあたりから急激に加速したNBAの進化とバスケットボールスタイルの変化についていけなかった。
ヒバートの弱点が露呈し始めたのは、アトランタ・ホークスと衝突した2014年イーストプレイオフの第1ラウンド。
1位シード(ペイサーズ)と8位シード(ホークス)の対決で、本来なら実力差が大きく出るシリーズとなるはずが、レギュラーシーズンでリーグ1位を誇ったペイサーズのディフェンスは、同時期にリーグ19位だったホークスのオフェンスに大苦戦した。
このシリーズでホークスは、ストレッチビッグ2人を入れたラインアップを多用してフロアスペースを広げつつ、オフボールのスクリーンなどを巧みに使って、ヒバートをペイントエリアの外側に引きずり出すことに成功。このマイク・ブーデンホルザー流のスモールラインアップ相手に、ヒバートのリム守備を軸にして積極的にボールプレッシャーを仕掛けるのが強みだったペイサーズディフェンスは上手く機能しなくなった。
▼こんな感じで
2013-14レギュラーシーズンで6.6リバウンドと2.2ブロックを平均していたヒバートだが、ホークスとのシリーズでは7試合で3.7リバウンド、1.3ブロックとスタッツが大幅に転落。ペイサーズは第7戦に及ぶ死闘の末に何とかシリーズを勝ち上がったが、チームの守護神であるヒバートの攻略法が露わになってしまった。
その後NBAは、ウォリアーズ王朝の台頭により“ペース&スペース”の新時代に突入。スリーポイントショットの試投数は年々伸び続け、同時に試合のペースも早くなっていった。
NBAのスリーポイント革命は、特にビッグマンのプレイスタイルに大きな影響を及ぼした。ESPNによると、身長6フィート11インチ(210cm)以上のプレイヤーによる3pアテンプト数は、ヒバートが全盛期だった2013-14シーズンで合計2573本。それが2017-18シーズンには倍以上となる5709本まで激増した。
以下は、2013-14シーズンから2018-19シーズンにおける「1試合のスリー試投数」と「ペース(48分あたりのポゼッション数)」のリーグ平均値:
3PA | ペース | |
2013-14 | 21.5本 | 93.9 |
2014-15 | 22.4本 | 93.9 |
2015-16 | 24.1本 | 95.8 |
2016-17 | 27.0本 | 96.4 |
2017-18 | 29.0本 | 97.3 |
2018-19 | 32.0本 | 100.0 |
スリーポイントショットの重要性が増すにつれ、ビッグマンの役割は変わっていった。リム守備は今でもセンターポジションの選手にとって最も大事な仕事だが、それに負けないほど万能性が求められる時代。
外のシュートやプレイメイクに長けているか、あるいはペリメーターでガード選手にスイッチできる機動力があるか。サイズはあっても、機動力やオフェンスの武器を持たないヒバートのようなセンターは、徐々に活躍の場を失うこととなった。
2010年代にペイサーズの指揮官を務めた現レイカーズHCのフランク・ボーゲルは、ヒバートの凋落について「今のリーグでも通用する」としながらも、「リーグのプレイスタイルが劇的に進化した。彼(ヒバートは)その犠牲者となった」と語っている。
参考記事:「Yahoo Sports」