スパーズがクリス・ポールを獲得するのは可能か?
サンアントニオ・スパーズがクリス・ポールとの契約を画策しているらしい。ESPNがリーグ関係者から得た情報として伝えている。
チームがFAでスター選手の獲得を検討するのは当たり前のことなので、ニュースでも何でもないが、ESPNのZach Low記者によると、スパーズとCP3はお互いに関心を示しているらしく、またMark Stein記者によれば、クリッパーズもスパーズの動きを真剣に危惧しているようだ。
ただスパーズがマックス・プレイヤーであるクリス・ポールに十分なオファーを提示するのは、キャップスペース的に極めて難しい。不可能ではないが、そのためには多くを犠牲する必要がある。
キャップスペースに余裕なし
以下は、今オフの時点で保障されているスパーズの契約。デイビッド・リーとドウェイン・デッドモン、ブライン・フォーブスのオプションが破棄となり、さらにここでは高額キャップホールドを持つマヌ・ジノビリが引退すると仮定している(2017年ドラフト指名権も放出)。
- ラマーカス・オルドリッジ:2146万1010ドル
- カワイ・レナード:1886万8625ドル
- トニー・パーカー:1545万3126ドル
- ダニー・グリーン:1000万ドル
- カイル・アンダーソン:215万1704ドル
- ティム・ダンカン(支払期間延長):188万1250ドル
- デジョンテ・マレー:131万2611ドル
- ダービス・ベルタンス:131万2611ドル
- リビオ・ジャン・シャルル(解雇):103万5200ドル
- 合計:7347万6137ドル
ロスター7選手分+αで7347万ドル以上。そこにパティ・ミルズとジョナサン・シモンズのキャップホールド(合計約760万ドル)、パウ・ガソルのサラリー(1610万ドルのプレイヤーオプションを行使して残留する可能性が高い)を加えると、1億ドル近くになる。来季のサラリーキャップ額は1億200万ドルになると予想されており、今の段階ではスペースにまったく余裕がない。この状態から、クリス・ポール獲得のためのスペースを確保するのは至難の業だ。
まずミルズのバード権利を放棄して、キャップホールドをクリアする必要がある。シモンズのキャップホールドは小さいが、可能な限り削らなければならないので同じく放棄。2人との再契約を諦めても、まだサラリー総額が9000万ドルを超えており、クリス・ポールにマックスオファー3400万ドルを提示するには程遠い。ここから先は、主力の数名をサラリーダンプでトレード放出して、キャップを調整することとなる。
当然カワイ・レナードは論外。ラマーカス・オルドリッジの契約も、十分な見返りがない限り動かすべきではない。数字だけを考えれば、トニー・パーカーを放出するのが理想的かもしれないが、いくらチームのためとは言え、スパーズはダンカン、ジノビリと共に長年球団に尽くしてきたパーカーを切り捨てるようなことはしないだろう。それはスパーズらしくない(パーカーの現役続行が難しいとなれば話は別だが…)。
ならば残された選択肢は、ダニー・グリーンとパウ・ガソルの放出。何とかして2人の契約を動かせれば、ギャランティーのサラリー総額が6900万ドルほどになり、後はカイル・アンダーソンを放出するか、もしくはクリス・ポールにマックスオファーよりもやや少ない額で手を打ってもらえれば、契約成立が可能となる。
ただ問題は、ガソルの契約を動かすのが極めて困難なことだ。年棒1600万ドルで37歳の選手を受け入れるチームが果たしているかどうか。そのためには、スパーズはドラフト指名権などのアセットを付属しなければならないだろう。
仮に、もしスパーズがキャップスペース確保に成功し、クリス・ポールを迎え入れることができたとしても、チームに残るのはレナード、クリス・ポール、オルドリッジ、パーカー、マレー、ベルタンスの6選手のみ。残りのロスターは、ミッドレベル・エクセプションとミニマム契約を使って埋めなければならない。スターターレベルの選手を獲得することすら困難なうえに、これまでスパーズの強みであったベンチ戦力が大きく弱体化してしまう。
レナード/CP3/オルドリッジのコアは強力なので、ミニマムサラリーでも一緒にプレイしたいというベテランFAが何人か出てくるかもしれないが、果たしてそのロスターでウォリアーズと戦えるのか?そもそも、クリス・ポールがそんな不確かなチームに移籍しようと考えるだろうか?
もちろん他にもシナリオはある。パウ・ガソルが何らかの理由で来季プレイヤーオプションを破棄してFAになるかもしれない。スパーズが心を鬼にして、パーカー放出を決断するかもしれない。あるいは、クリス・ポールが金額よりもリングを優先し、大幅なペイカットに応じてくれるかもしれない。ただどれも可能性は極めて低そうだ。
ガソルがキャリア最後の高額年棒になるであろう1600万ドルのオプションを手放すとは考えにくいし、またクリス・ポールにしても、クリッパーズとのスーパーマックス契約(5年/2億ドル)をわざわざ蹴って、4年/8000万~1億ドルレベルの割引契約でスパーズに落ち着くとは思えない(テキサス州には所得税がないので、カリフォルニア州での税金との差額を考慮すれば、もしかすると…)。
クリス・ポール級のタレントを獲得できるチャンスは滅多に巡ってこないので、可能性があるのならすべてをかけるべきなのかもしれないが、そこにはチームの半分を犠牲にしなければならないというとてつもなく大きなリスクがある。今はできるだけ現状を維持しつつ、マレーやベルタンスら若手の育成に力を入れ、パーカーやガソルが契約満期でキャップスペースに余裕ができる2018年FAでオールインするのが得策なのかもしれない。
参考記事:「Pounding the Rock」