2018年NBAドラフトの結果と感想
NBAでは現地21日、ニューヨークのバークレイズ・センターで2018年ドラフトが開催。センターのディアンドレ・エイトンがフェニックス・サンズから全体1位指名を受けた。
アリゾナ大出身のエイトンは、極めてアスレチックな7フッター。身長215cm/体重110kgの巨体でダイナミックかつ機敏にコート上を駆け回る身体能力に加え、フットーワークやリムでのフィニッシュ、シュートタッチも良く、オフェンス力が非常に高い。サイズと機動力を兼ね備えたビッグマンだ。
また高校最後の2年間をアリゾナ州の学校でプレイしており(2位指名のバグリーとチームメイト)、サンズにとっては半分地元出身の選手のようなものだったので、ロッタリー順位が決まった1カ月前から1位指名がほぼ確実視されていた。
その一方で、恵まれたフィジカルのわりにブロックやスティールが少ないという評価もあり、守備面での直感や集中力がやや頼りないとする声もある。フィラデルフィア・76ersのオールスター、ジョエル・エンビードは、自分とエイトンがメディアで比較されたことについて、「比べないでくれ。俺はディフェンスもやる」とTwitterで毒舌を吐いていた。
今年のドラフトではエイトンの次に、サクラメント・キングスがデューク大のマービン・バグリー三世を全体2位で指名。続いて、ダラス・マーベリックスがアトランタ・ホークスとのトレードで3位に滑り込み、スロベニアのルカ・ドンチッチを獲得した。
今年のロッタリー指名(1位~14位)は以下の通り:
プレイヤー | チーム | |
1 | ディアンドレ・エイトン | サンズ |
2 | マービン・バグリー | キングス |
3 | ルカ・ドンチッチ | マブス(ホークスから) |
4 | ジャレン・ジャクソンJr. | グリズリーズ |
5 | トレイ・ヤング | ホークス(マブスから) |
6 | モハメッド・バンバ | マジック |
7 | ウェンデル・カーターJr. | ブルズ |
8 | コリン・セクストン | キャブス |
9 | ケビン・ノックス | ニックス |
10 | ミケル・ブリッジス | サンズ(76ersから) |
11 | シェイ・ギルジアス・アレクサンダー | クリッパーズ(ホーネッツから) |
12 | マイルズ・ブリッジス | ホーネッツ(クリッパーズから) |
13 | ジェローム・ロビンソン | クリッパーズ |
14 | マイケル・ポーターJr. | ナゲッツ |
※2巡目60位までのリストはこちらからどうぞ
以下、2018年ドラフトでのサプライズや注目点をいくつか挙げてみた:
1.ホークスとマブスのトレード
マブスが大勝負に出た。
マブスは自身の5位指名権と将来の1巡目指名権をセットにしてホークスに譲渡し、その見返りとして、ダーク・ノビツキーの後継者になりえるルカ・ドンチッチとの交渉権(3位指名)を獲得。1巡目指名権を手放したのは痛いが(2019~2020年までトップ5位保護、2021~2022年までトップ3位保護、2023年以降は保護なし)、それほどドンチッチを高く評価している証拠であり、同時にこれでタンキングを終えて次の再建フェーズに移るという意思表示でもある。
▼ノビツキーから歓迎のメッセージ
▼ドンチッチは「ありがとう、レジェンド!!」と返信
まさかマブスがドンチッチを手に入れることになるとは本当に驚きだ。ドンチッチにとっては、上位指名チームの中で、マブスが最も理想的な環境と言えるかもしれない。
マブスにはリーグ屈指のヘッドコーチとNBA一の熱血オーナーがいて、何よりインターナショナルレジェンドのノビツキー本人から直接学べる。また将来的にコンビになるデニス・スミスJr.との相性も良さそうだ。
センターポジションの補強を必要としているマブスだが、現時点でキャップスペースに大きな余裕がある数少ないチームの一つ。今夏はデマーカス・カズンズやクリント・カペラ(制限付き)、デアンドレ・ジョーダン(オプション)らがFAになるので、オフシーズンの人事次第では来季にプレイオフへと返り咲く可能性も十分にある(前に裏切られたデアンドレは100%なさそうだけど)。
個人的にはドンチッチやスミスJr.のピック&ロールパートナーとして、ロールでヘルプDをごっそりとリムまで引きつけてくれるカペラが理想的だと思う。スミスJr./ドンチッチ/マシューズ/バーンズ/カペラの先発でノビツキーがベンチから出てくるローテーションはすごく魅力的。ただドンチッチは、ドラフトトップ指名としては身体能力やフィジカルが高いわけではないので、NBAのウィング選手相手に実力を発揮できるかどうか注目だ。
一方でホークスに関しては、ドンチッチを欲しがっているという報道が数日前に出ていたので、トレードが成立した時は「は?」と思ったが、どうやら本命は最初からトレイ・ヤングだった模様。ドンチッチを選ばなかったことが正しい決断なのかどうかは後になってみないとわからないが、欲しがっていた選手に加えて保護の軽いドラフト1巡目指名権まで手に入れたことを考えれば、チームにとって今年のドラフトは大勝利だったと言えるかもしれない。
ヤングはプルアップスリーやボールハンドリングに優れたPGで、“ネクスト・カリー”なととも言われている選手。ディフェンスが弱点ではあるが、ステフィン・カリーのように大化けするポテンシャルを秘めている。
2.マイケル・ポーターJr.
マブス/ホークスのトレードに並ぶ2018年ドラフトの最大のサプライズは、ミズーリ大のマイケル・ポーターJr.が14位(ナゲッツ)まで転落したことだろう。数日前には「キングスが2位で指名するかも」などという噂が出ていたが、どの球団も怪我再発のリスクを回避する選択をした。
高校時代には同世代のクラスでNo.2にランクされ、NBAドラフトでのトップ3位指名が有望視されていたマイケル・ポーターJr.だが、ミズーリ大でのシーズン開幕戦で椎間板ヘルニアを発症し、手術のために離脱。シーズン最後の2試合で復帰するも、あまり良いパフォーマンスができず、さらにNBAのドラフトワークアウトにも満足に参加できなかった。
▼高校時代のポーター
ポーターJr.は身長約210cmでガードのようなプレイができる才能の塊みたいな逸材だったので、この若さで怪我でダメになってしまうのはあまりにも残念過ぎる。腰が完治して、ドラフトで見送った球団を後悔させるようなキャリアを送ってくれることを願うばかりだ。腰の怪我は本当につらい…。
3.キャップが浮いてしまうスパーズのルーキー
サンアントニオ・スパーズが18位で指名したマイアミ大のロニー・ウォーカー4世は、ヘアスタイルに相当なこだわりがあるのだろう。
人生の晴れ舞台でキャップが不自然に浮いているのを微塵も気にしていないというのは、頼もしいと考えるべきか…。ちなみに普段はこんな感じ:
マイアミ大でのウォーカーは32試合で11.5得点を平均。FG成功率49%、3P成功率34.6%と得点効率があまり振るわず、ショットセレクションやディシジョンメイキングの改善が大きな課題とされている。ただシュートタッチは非常に良く、フリースロー成功率も悪くない。身長とウィングスパンもあるので、将来的に優秀な3&Dウィングに成長する可能性は十分にある。
なおカワイ・レナードの問題を抱えているスパーズだが、ドラフトでは動かなかった。
ESPNのRamona Shelburne記者によると、ここ1週間でロサンゼルス・レイカーズからトレードの話を持ち掛けられたそうだが、スパーズはまったく相手にしなかったという。ドラフト会議の直後、スパーズGMのR.C.ビュフォードは現地メディアの取材に対して、「レナードとの関係修復を第一目標にしている」とエース残留を諦めていない姿勢を示した。
「我々の球団とコミュニティにとって、レナードとその家族はとても大切な存在。誰も望まない状況に陥ってしまったが、彼とベストな関係を築くためにできる限りの努力をするつもりだ。あらゆる選択肢を検討するつもりではあるが、レナードをチームに引き留めることを第一の目標とする」
今年は長い夏になりそうだ…。
参考記事:「NBA」