キャブスがオールスターのドノバン・ミッチェルをトレードで獲得
ドノバン・ミッチェル争奪戦を制したのは、完全にノーマークの大穴だった。
現地メディアによると現地9月1日、クリーブランド・キャバリアーズとユタ・ジャズがリーグの勢力図を塗り替えるビッグなトレードに合意。キャブスはコリン・セクストンをはじめとした3選手と複数のドラフト1巡目指名権を放出し、ジャズからオールスターのドノバン・ミッチェルを獲得する。
トレードの詳細は以下の通り:
キャブス獲得
- ドノバン・ミッチェル
ジャズ獲得
- コリン・セクストン
- ラウリ・マルカネン
- オチャイ・アバジ(2022ドラフト14位指名)
- ドラフト1巡目指名権(2025、2027、2029)
- ドラフト1巡目スワップ権(2026、2028)
制限付きFAだったコリン・セクストンは、4年/7200万ドルのサイン&トレードでジャズへと移籍。またキャブスが譲渡した3つの自軍ドラフト1巡目指名権と2つの1巡目スワップ権は、いずれも保護なしだという。
イースト強豪爆誕
2021-22シーズンには予想を大きく超える躍進を見せ、44勝38敗のイースト8位と4年ぶりとなる勝ち越しシーズンを送ったクリーブランド・キャバリアーズ。だがプレイ・イン・トーナメントでネッツとホークス相手に連敗を喫し、プレイオフ復帰は果たせなかった。
そんなキャブスが、昨季の主力をほとんど手放すことなくオールスターのドノバン・ミッチェルを獲得。確実な戦力アップに成功したと言える。
2022-23キャブスのデプスチャートは以下の通り:
- PG:ダリアス・ガーランド、リッキー・ルビオ、ラウル・ネト
- SG:ドノバン・ミッチェル、キャリス・レバート
- SF:アイザック・オコロ、セディ・オスマン
- PF:エバン・モーブリー、ラマー・スティーブンス、ディーン・ウェイド
- C:ジャレット・アレン、ケビン・ラブ、ロビン・ロペス
現時点でMVP候補になれるようなスーパースターはいないかもしれないが、来季キャブスはとにかくロスターの層が厚い。
ミッチェル、ダリアス・ガーランド、ジャレット・アレンの3人は2022年オールスターに選出。さらにエバン・モーブリーの成長次第では、来季からオールスター級選手を4人も有する超エリートチームだ。
またサポーティングキャストも経験豊富なベテランが揃っており、キャプテン的存在のケビン・ラブは2022シックスマン賞の投票で2位になったばかり。バックアップPGにはリッキー・ルビオがいる。
来季キャブスは3番(スモールフォワード)のポジションがやや弱く、ミッチェル/ガーランド/モーブリー/アレンのコアに並んで誰が5人目の先発に入るのか気になるところ。オフェンス重視でキャリス・レバートを起用するのか、それとも守備力に定評のあるアイザック・オコロを入れるのか?いずれにせよ贅沢な悩みだ。
ミッチェル獲得のために2020年代後半のドラフトアセットを総放出するという高い代償を払うことになったわけだが、その価値は十分にあるはず。ミッチェルは今年26歳の若手スターで、残り契約が4年(4年目はオプション)。そもそもFAに弱いキャブスのようなスモールマーケットチームにとっては、オールスター級の選手を獲得する術が他にあまりない。
昨季のミッチェルはリーグ9位の25.9得点を平均。デビューから5年連続でジャズをプレイオフへと導いており、大事な場面でスターとしての勝負強さを何度も発揮してきた。
▼2020のバブルプレイオフでは第1ラウンド7試合で36.3得点を平均
ミッチェルは、苦しい場面でレーンドライブやプルアップスリーなどワンマンプレイから突破口を切り開くことのできるエースタイプ。ボールハンドラー/ショットクリエーターが不足していたキャブスにとっては大きなプラスで、オフェンス面でのチームとの相性は抜群だろう。
21歳のモーブリーに22歳のガーランド、24歳のアレンのコアに、26歳のミッチェルが加入。キャブスは年齢的に今後5年間は共に成長しながら優勝を狙える基盤を手に入れたわけだが、今回のミッチェルのトレード移籍により、将来的な契約面で少しややこしい問題に直面することとなった。
モーブリーの延長契約
今オフのキャブスは、ガーランドと5年/1億9300万ドルのマックスでルーキー延長契約を締結。さらに今回、同じくマックスのルーキー延長契約下にあるミッチェルを獲得した。
今のNBAには、5年マックスのルーキー延長契約下にある選手(デシグネイテッド・プレーヤー)を1チームにつき最大で2人しか保有できないというルールがある。そのため、もしキャブスがガーランドとミッチェルの両選手を契約満期まで保持した場合、2年後の2024オフシーズンでエバン・モーブリーに5年マックスのルーキー延長契約をオファーできなくなるのだ。
モーブリーのポテンシャルとルーキーシーズンの活躍ぶりを考えると、大きな怪我でもない限り2年後にマックス契約に相応しい選手になるのはほぼ確実。キャブスの選択肢としては、2024年オフに4年の延長契約をオファーするか、もしくはその翌年(2025年オフ)まで持ち越して制限付きFAとなるモーブリーと改めて5年のマックス契約を結ぶか。
最近の例だと、2016年ドラフト2位指名のブランドン・イングラムがプロ3年目終了後のルーキーマックス延長契約を見送り、制限付きFAとなった翌年にペリカンズと5年のマックス契約を締結。イングラムの場合は結果的に円満解決となったが、常に怪我のリスクにさらされているNBA選手にとって、保証契約を1年先送りにするというのは簡単な話ではないだろう。
2年後にモーブリーがキャブスのベストプレイヤーになっている可能性は大。フランチャイズエースに妥協を強いるようなサラリーキャップ状況は、チームに亀裂を生む原因になるかもしれない。もちろんその時までにキャブスが優勝を狙えるポジションまで昇れているなら、モーブリーもすんなり納得するかもしれないが…。
キャブスがレブロン・ジェームズのいないロスターで最後にプレイオフに進出したのは、25年前の1997-98シーズン。大幅な戦力アップに成功した来季こそは、その呪縛を断ち切れるか?
今後2年のキャブスが、セルティックスやバックス、76ersのイースト上位争いに食い込めるかに注目したい。
▼キャブス!!
第2のOKC爆誕
一方で今オフのジャズは、ルディ・ゴベアに続いてドノバン・ミッチェルをトレードと(ネッツに移籍したロイス・オニール含め)、昨季までの主力を総放出。選手として全盛期にいるオールスター2人を手放し、0からの再建に舵を切った。
近年のジャズは、2013年ドラフト23位指名でゴベア、2017年ドラフト13位指名でミッチェルを指名と、比較的低い順位でオールスターを引き当てる幸運に恵まれ、ウェスタンカンファレンスの強豪チームへと成長。
だがプレイオフでは、ドロップカバレージでペイントエリアの守りを重視する守備スキームを、ロケッツやクリッパーズ、マブスなどスモールボールが得意なチームにことごとく攻略されてしまい、カンファレンス準決勝より先に進めないまま終わった。
今オフのジャズは、ミッチェルとゴベアの放出で合計7つのドラフト1巡目指名権と3つの1巡目スワップ権を獲得。一オフシーズンにして、オクラホマシティ・サンダーに匹敵するアセットホルダーとなった。
- ウルブズ経由のドラフト1巡目指名権(2023、2025、2027、2029)
- キャブス経由のドラフト1巡目指名権(2025、2027、2029)
- ドラフト1巡目スワップ権(2026、2026、2028)
ウルブズ経由の2029年1巡目指名権(トップ5プロテクト)を除いて、すべてが保護なしのプレミアムアセットだ。
ジャズのアセット総放出はまだ終わらないはず。ここからボヤン・ボグダノビッチやジョーダン・クラークソン、マイク・コンリー、ルディ・ゲイといった有力なベテラン勢も、さらなるアセット獲得のためのトレードピースとなるだろう。
参考記事:「NBA」