ベスト・オブ・NBA: ニコラ・ヨキッチの多彩なパス
NBAデビューからわずか2年の22歳ながら、オフェンス面ではすでにリーグトップクラスのビッグマンとして認められるようになったデンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチ。リムでのソフトタッチやフットワーク、ミドル~ロングレンジショットを兼ね備えた得点力の高い選手だが、なんといっても最大の魅力はコートビジョンとパススキルだ。
2016-17シーズンのヨキッチは、レギュラーシーズン73試合で16.7得点、9.8リバウンド、4.9アシストを平均し、トリプルダブルを6回達成(昨季リーグでTDを達成したセンターポジションの選手は、ヨキッチの他に、マーク・ガソル、カズンズ、タウンズのみ)。とにかくパスが上手く、エルボーからカッターへのフィードやローポストからシューターへのキックアウト、ペリメーターでのドリブル・ハンドオフなど基礎的なパスはもちろんのこと、ファーストブレイクでのノールックといったガード顔負けのミラクルアシストまで、あらゆる種類のパスを操ることができる。
以下、デンバー・ナゲッツのファンブログ『Denver Stiffs』の特集記事『The book of Jokic』(ヨキッチの書)を参考に、プレイメークにおけるヨキッチの引き出しの多さを見ていきたい。
ギブ&ゴー
ギブ&ゴーは、ヨキッチが最も得意とするツーマンゲームの一つ。エルボーやローポストでエントリーパスを受け、背中をバスケットに向けたまま絶妙なタイミングでアシスト。カットしたガードがノーマークになりきれていない場合もあるが、そんな時はカッターの動きを先読みしながら、ディフェンダーの頭の上を通すような感じでゴール下のオープンスペースにパスを出す。
ローポストでのプレイメーク
NBA.comのデータによると、昨季のヨキッチはポストアップでの得点効率でリーグトップクラスの数字を記録(ポストアップにおける1ポゼッションあたりの得点が1.12点でリーグトップ5、ポストアップ時のFG成功率が57.9%でリーグ首位)。ヨキッチの長所は、ローポストでの高い得点力で相手の注意を集めながら、ディフェンスの陣形を素早くスキャンし、自らショットを打つべきか、あるいはパスを出すべきかを瞬時に判断できるバスケットボールIQの高さだ。
ヘルプディフェンスの発展により、単純な力技で得点するのが難しくなった近年のリーグで、ローポストで守備を引きつけてから的確にパスをさばけるスキルはとても貴重。
ロールからのパス
ピック&ロールにおけるビッグマンの役割と言えば、スクリーンをセットしてからバスケットに向かってダイブし、パスを受けてフィニッシュというのが典型的なパターンだが、ロールに対してヘルプディフェンスが飛んできた際に上手く対応できず、ついついボールを止めてしまう選手は多い。だがヨキッチは違う。ロールしながらも常にディフェンスを読みながら、必要があればパスを出せる。
ここで重要になるのが対応力だ。上の映像ではインサイドからヘルプが来た際のゴール下へのパスだが、もしウィークサイドのペリメーターからヘルプが来れば、ちゃんとそれを察知し、オープンシューターへキックアウトパスを放つ。
動きながら正確にパスがさばけるビッグマンは少ない。
ファーストブレイク
トランジションでのプレイメークはヨキッチの持ち味。リバウンドを取ってそのまま自らボールを運び、まるでポイントガードのようにノーマークのチームメイトを見つけて的確なパスを出せる。
ビッグマンがファーストブレイクを指揮できると非常に効果的だ。相手のリムプロテクターがインサイドにいない場合が多く、さらにディフェンスは誰がボールを止めに行くべきか一瞬混乱するので、イージーな得点をあげやすくなる。
アウトレット・パス
リバウンド確保から瞬時に次のプレイに移れるのは視野が広い証拠。アウトレットパスは、ティム・ダンカンやケビン・ガーネットら歴代屈指のオールラウンドビッグたちも得意としたパスだ。これができるビッグマンがロスターにいると、チームは自然と走るようになる。
今のリーグでヨキッチよりもアウトレット・パスが上手いビッグは、キャブスのケビン・ラブくらいかもしれない。
DHOカール
ペリメーターでのドリブルからボールを手渡しすると同時にスクリーンをセットするドリブル・ハンドオフ(DHO)は、ヨキッチがナゲッツオフェンスの軸を務めるきっかけとなったプレイ。ガードからディフェンダーを引き剥がしたり、守備にスイッチを起こさせてミスマッチを作り出したりできる、非常にシンプルながら効果的なアクションだ。
上の映像はその応用パターンで、ディフェンスのボールディナイが厳しい時に使用。ディフェンダーがハンドオフを阻止して少し気を抜いたところへ、バスケットに向けてカールカットしたガードにパスを通す。
ヨキッチはこの他にも、DHOと見せかけて自らドライブを仕掛けたりと、状況に応じて柔軟にハンドオフ・オフェンスを使い分けることができる。
ドライブ&キック
ヨキッチは決してアスレチックな選手ではないが、ビッグマンとしてはボールハンドリングのスキルが高い。ペネトレーションを仕掛けてキックアウト・パスを出すといったウィング選手のようなプレイもできる。
アリウープパス
通常のアリウーププレイだとセンターがフィニッシャーだが、ヨキッチの場合はパサーを務めるケースが多い。センターがスリーポイントラインの外からプレイメークできると、敵陣のゴール下守備が手薄になるので、チームメイトがショットを決めやすくなる。
ヨキッチはファーストブレイクやローポストからもロブパスを出せる。
水球チックなパス
水球っぽいというかハンドボールっぽいというか、とにかくヨキッチは独特なワンハンドパスやタッチパスが上手い。スパーズのマヌ・ジノビリもこういったタイプのパスを得意とする。
ノールック
ノーマークのチームメイトにパスを出した後に違う方向を向く“なんちゃってノールック”も多い中、ヨキッチは本物のノールックパスを決められる。ルック・アウェイでオフボール・ディフェンダーを完全に騙しているのがその証拠だ。
ショットフェイクからのパス
これもジノビリをはじめとしたインターナショナル勢がよくやるパス。特にショットリリースが遅い選手がやるとディフェンスがフリーズするので効果的だ。
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ニコラ・ヨキッチは、2017-18シーズンで最も注目したい選手の一人。ナゲッツのティム・コネリーGMによると、今年のドラフトで選手を評価する際のキーポイントの一つになったのは、「ヨキッチと相性が良さそうか」という点だったらしい。
カットやスクリーンなどオフボール・オフェンスに長けたポール・ミルサップがチームに加わったことで、今季のヨキッチのプレイメークがどのように進化するのか楽しみだ。
参考記事:「Denver Stiffs」