クリス・ボッシュ、KGのトラッシュトークで「眠れなくなったことがある」
稀代の“トラッシュトーカー”としても知られたレジェンドのケビン・ガーネットは、その毒舌でクリス・ボッシュにも軽いトラウマを植え付けていたらしい。
ボッシュは今月、The Ringerのポッドキャスト番組『The Bill Simmons Podcast』にゲストとして出演。そこで若手時代に体験したガーネットとのほろ苦いエピソードを語った。
「『お前はマザコン(momma’s boy)だ』と言われた。数カ月前に彼とそのことで笑い合ったばかりだ。俺をマザコン呼ばわりしたんだよ。確かあの時は、内容は忘れたけど、KGが先にトラッシュトークを仕掛けてきて、俺が何か言い返したんだ。すると彼は『おい、マザコンのくせに何言ってんだ』と言ってきた。『はぁぁ!?』と思ったね。その後はプロ人生で最悪のパフォーマンスをしてしまった」
「その日は深夜になっても眠れなかった。『マザコンってどういう意味だよ?俺のことを言ってるのか?』。午前4時、あと数時間で起床しなければならないのに頭から離れないんだ、『マザコン…、マザコン…』って」
– クリス・ボッシュ
プロの世界に入って間もない20歳前後の若手が、尊敬するスーパースターからいきなりマザコン呼ばわりされたら、「え?僕何かしましたか…?」と困惑してしまうのも無理はないだろう。
ガーネットはトラッシュトークで数々の伝説を残しており、若手はもちろん、ベテラン選手やインターナショナル勢まで、その被害者は数知れず。対戦相手だけでなく、チームメイトを泣かせたこともあるらしい。
全盛期には最もタフな選手の一人と言われたジョアキム・ノアも、新人の頃にKGのトラッシュトークで心をへし折られた被害者の一人だ。以下、ガーネットの元盟友ポール・ピアースが2015年に『Bleacher Report』のインタビューで明かしたエピソード:
「ある試合で、KGが突然ジョアキム・ノアに向かって『お前の髪の毛をなでてもいいかな?』と聞いたんだ。まるでノアを女性扱いするようにね。それでノアがキレた。あれはノアのルーキーシーズンだったと思う。その頃のノアはKGに憧れていた。ノアはこう言ったよ、『KG、僕は子供の頃にあなたのポスターを部屋に飾っていた。ずっとあなたを尊敬していたんだ』と。するとそれを聞いたKGは一言、『F-ck you, ノア』とだけ言い放った。本当にビックリしたね。自分のことを尊敬し、ポスターを部屋に飾っていたという大学を出立ての子供に対して、なぜそんな酷いことを言えるのか!あのやり取りはノアの心をへし折った」
– ポール・ピアース
なおノアはプロ4年目の2010年にESPNのインタビューで「KGが嫌い」とコメント。「KGは意地の悪い選手で、愛を持ち合わせていない。しかもブサイク」と反撃した。
The Ringerのポッドキャストでは、他にも興味深いエピソードがたくさんあったので、以下にいくつか紹介:
最強のパワーフォワード
これまでに対戦したパワーフォワードで最も手強かったのは誰?その質問に対し、ボッシュは「僕のヒーロー。彼らのようになりたかった」としながら、ティム・ダンカンとケビン・ガーネットの名前を挙げた。
ダンカンは「素晴らしいプレイヤーというだけでなく、自チームのシステムを熟知しており、しかも1on1だと絶対に止められない選手」で、ガーネットは「インテンシティとスキルレベルが飛びぬけていた」とのこと。ボッシュいわく、ダンカンの左ショルダーからのフックショットと、ガーネットのターンアラウンド・ジャンプショットは特にアンストッパブルだったという。
さらにボッシュは、パウ・ガソルにも大苦戦したと語り、その3人をパワーフォワードのトップ3とした。
▼KGのポストムーブ
ラプターズがスターFAに不人気な理由?
トロントは北米有数の大都市であり、いわゆる“ビッグマーケットチーム”の一つだが、1995年の球団設立からずっとビッグネームのFAとは縁がない。しかもドラフトで運よくフランチャイズスタークラスの選手を獲得しても(トレイシー・マグレディ、ビンス・カーター、クリス・ボッシュ)、デマー・デローザン以外はことごとく移籍を望んだ。
ラプターズがスターFA選手たちにあまり人気がない理由の一つとして、ボッシュは“国境越え”の面倒くささを指摘。プロスポーツ選手と言えど、カナダからアメリカに遠征する際は、もちらん税関やセキュリティーチェックを通らなければならない。ボッシュによれば、1シーズン合計で約26時間を空港手続きに費やしたこともあるという。
出張の多いビジネスマンなどに比べれば、空港で過ごす時間が年間26時間なんて大した数字ではないかもしれないが、それでも貴重な時間であることには変わりない。NBA選手にしてみれば、アメリカ国内のチームに所属すれば回避できるわけで、FAたちがチームを選ぶ上でそれなりの判断材料になり得るだろう。
スパーズとのファイナルシリーズ
「スパーズの守備スキームを考えると、僕はもっと3Pラインの外に出るべきだった」、ボッシュは2013と2014のNBAファイナルを振り返りながらそう話した。
「ヒートが優勝した2013年でも、僕がもっと外に出ていれば、オフェンス面でもっとインパクトを残せていたはず。僕のマッチアップはティム・ダンカンだった。歴代屈指のリムプロテクターだ。僕はもっと外に出て、フロアスペースを広げるべきだった」
– クリス・ボッシュ
ボッシュは、センターがスリーを打ちフロアスペースを広げる“ストレッチ5”の先駆者の一人。ラプターズ時代はインサイドとミドルレンジゲームが主体のNo1オプションだったが、ヒート移籍後はレブロンとウェイドに次ぐ3番手としてプレイスタイルをアジャストし、究極のロールプレイヤーへと進化した。
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ボッシュは2014年にヒートと再契約し、レブロン退団後のフランチャイズスターとしての活躍を期待されていたが、2014-15シーズンのオールスターブレイク中に肺血栓を発症し無期限の戦線離脱。その後、戦線復帰を目指し続けてきたが実現せず、今回のポッドキャストでついに現役引退を決意した旨を明らかにした。
なおヒートは、今月初めにボッシュの背番号「1」を永久欠番化することを正式に発表。式典は3月26日のホームゲームで執り行われる予定で、ボッシュはアロンゾ・モーニング、ティム・ハーダウェイ、シャキール・オニールに次いで球団史上4人目の永久欠番となる。
Image by Keith Allison
ソース:「The Ringer」