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ギルバート・アリーナス
2014 9 21

ギルバート・アリーナス 短すぎたスターダム

アリーナス, ギルバート・アリーナス, コービー, フリースロー 4

※以下、米掲示板Redditのスレッド「What’s Eating Gilbert Arenas?」より抜粋:

かつて、ギルバート・アリーナスが世界で最もエキサイティングなバスケットボールプレーヤーの一人と呼ばれていた時代があった。

その頃のアリーナスは25歳。現在もまだ32歳で、ドウェイン・ウェイドと同じ年齢、レブロン・ジェイムスの3つ年上、コービー・ブライアントの4つ年下となる。

しかし今となっては、アリーナスがウェイドやジェイムスたちとバスケットを奪い合うことはない。モールに行ってもアリーナスのユニフォームは売られていないし、スニーカーショップで彼の新作シグネチャーモデルを目にすることもない。

そして、今のリーグに「第2のアリーナス」は存在しない。

アリーナスは生粋の点取り屋だった。敵と味方、両チームのコーチにとって悪夢のような存在。ショットクロック残り19秒でスリーポイントラインの3メートル手前からプルアップ・ジャンプショット…、そういった無茶苦茶なプレーも彼の得意技だった。

ある試合では、1度もフリースローラインに立つことなく、35本のシュートを放ったこともある。これほど自由奔放にプレーしたガードはこれまでに1人もいない。常識外れなことをまるでルーティンのようにやってのける、アリーナスはそんなタイプの選手だった。

だが、最大の正念場で“ルーティン”を決められなかったことにより、アリーナスは大きな挫折を味わう。

2006年、レブロン率いるキャブスとのプレイオフ敗退をかけたシリーズ第6戦。ウィザーズの3点ビハインドで迎えた試合時間残り2.3秒で、アリーナスは9メートル地点から同点のロングスリーを沈め、勝負を延長戦へと持ち込んだ。

オーバータイムはワンゴールを争う大接戦となり、残り15秒でウィザーズが1点リード。そこでアリーナスに2本のフリースローが与えられた。

もし両方決めれば3点差で勝利目前という状況だが、アリーナスは1本目を外す。そして2本目のフリースローを打つ直前、レブロン・ジェイムスが突然アリーナスに近寄り、胸をポンポンと叩きながら耳元でこうささやいた。

「これを外したら、お前らのシーズンは終わりだ」

アリーナスは2本目のフリースローも外してしまい、続くポゼッションでキャブスが逆転決勝ゴールに成功。レブロンの予言通り、この試合でウィザーズの2005-06シーズンは終わりを告げた。

その翌日、ベライゾン・センター(ウィザーズ本拠地)のジムには、朝早くからフリースローの練習に打ち込むアリーナスの姿があった。腰の周りを3回ボールハンドリングしてからシュート…。そのルーティンを何度も繰り返していたという。

Arenas was…

アリーナスは、試合中にボールに話しかけることがよくあった。試合中に中指を立てることもあった。ギャンブルがらみのトラブルで、あるチームメイトから「撃ち殺すぞ」と脅されたときは、「好きなのを選べ」というメモと共に、4丁の拳銃をその男のロッカーに仕込んだ。

他のNBA選手たちがTwitterを使い始める何年も前から、アリーナスはブログを活用して積極的にファンたちにメッセージを発信していた。

アリーナスは、ハーフタイム中にユニフォーム姿のままシャワーを浴びたりする変わり者だった。NBAで最も熱心な凄腕HaLoプレーヤー(FPSゲーマー)でもあった。

アリーナスは、「ギルバート」と名付けられた子供たちに少しだけ誇りを与えた。4ヵ月間で60回の信号無視を犯したこともあったが、レイカーズの本拠地で絶頂期のコービー・ブライアントを相手に60得点を記録したこともある。

アリーナスとコービーはどこか似ている。セルフィッシュで無謀なシュートが多く、自負心が人一倍強い。だが同時に、2人は鏡のように対照的でもある。

コービーにとってバスケットボールは食事であり、睡眠であり、呼吸であった。コービーは、ジョーダンやバード、マジックら過去の偉大な選手を熱心に研究し、自身のゲームのモデルにした。バスケットボールの歴史、そして選手を偉大たらしめる資質とは何なのかをよく理解し、その資質を自分にも取り入れようと努めた。

アリーナスは誰のスタイルも模倣しようとしなかった。

コービーのゲームが長年に渡り積み上げられたバスケの歴史を礎としているならば、アリーナスはスタジアムが発するエネルギーを燃料とした。コービーがマシンなら、アリーナスは無邪気な子供。コービーは他人にも一切容赦のない人間で、自らそうあることを望んだ。勝つために必要なことだと知っていたからだ。反対にアリーナスは、もっと自由気ままで、楽しむことを一番とした。

アリーナス コービー
Photo by Keith Allison/Flickr

コービーは勝者として名を残すが、アリーナスは違う。オーバータイムで2本のフリースローを外したときはまだ24歳だった。残念ながらその翌年には、左膝に選手生命を狂わす大けがを負うこととなる。

NBAにスリーポイント制度が導入されて以来(1979年)、23歳から25歳のスパンでアリーナスより多くの得点を記録した選手は、これまでにたった4人しかいない。マイケル・ジョーダンとエイドリアン・ダントリー、レブロン・ジェイムス、そしてケビン・デュラント。しかしこの4人と違い、アリーナスが殿堂入りを果たすことはない。

これからアリーナスがプロとしてNBAのコートに立つことは恐らくないだろう。もうレブロン・ジェイムスと熱い激戦を繰り広げる機会もなければ、シーズンがかかったフリースローを沈めるチャンスもない。偉大な選手になれる素質があったということを証明するチャンスは二度と来ない。

だが、アリーナスの束の間の絶頂期を目撃した人ならば覚えているはずだ。ドラフト2巡目指名のガードが、リーグの誰よりもファンたちを魅了していた時期があったことを。そしてレブロン・ジェイムスやドウェイン・ウェイド、コービー・ブライアントたちと肩を並べられるほどの選手だったということを。

メディア露出が極めて激しい近年のアスリート世代において、間違いなくアリーナスは最も見ごたえがあり、最も予測不可能で、最も革新的なプレーヤーの一人だった。しかし、レブロン、ウェイド、コービーたちがタイトルを巡ってリーグを圧巻していたころ、「0」番を背負ったスーパースターはすでに存在しなかった。

歴史的な給料泥棒で、常に実力を過小評価された選手。
自分勝手で、カリスマ的な人間。
天才的で、愛すべき愚か者。

※   ※   ※

ギルバート・アリーナスはいろんな意味でぶっ飛んだ選手だった。今のリーグだと、ジェイムス・ハーデンがスタッツ的にもパフォーマンス的にも一番近いかもしれない。

もしあの時に怪我さえしなければ…、何度もそう思わされたプレーヤーの一人である。

Image by Keith Allison/Flickr

ソース:「Reddit」

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