76ersがサイン&トレードでバトラー放出、FAでホーフォードを獲得
たった24時間でこれほど多くのビッグネームが移動した日が未だかつてあっただろうか?
2019NBAフリーエージェンシーは、解禁初日からケビン・デュラントとカイリー・アービングがネッツへ、ケンバ・ウォーカーがセルティックスへ、ディアンジェロ・ラッセルがウォリアーズへと移籍し、バックスはクリス・ミドルトンと再契約。イーストの勢力図が目まぐるしく変化する中、フィラデルフィア・76ersも大きく動いた。
まず76ersは、マイアミ・ヒート、ポートランド・トレイルブレイザーズ、ロサンゼルス・クリッパーズを含む4チーム間のトレードに合意。オールスターのジミー・バトラーをサイン&トレードで放出し、ヒートからジョシュ・リチャードソンを獲得する。
トレードの詳細は以下の通り:
放出 | 獲得 | |
76ers | ・ジミー・バトラー | ・ジョシュ・リチャードソン |
ヒート | ・ジョシュ・リチャードソン ・ハッサン・ホワイトサイド ・2023ドラフト1巡目 |
・ジミー・バトラー |
POR | ・メイヤーズ・レナード ・マリース・ハークレス |
・ハッサン・ホワイトサイド |
LAC | ・2023ドラフト1巡目 ・マリース・ハークレス |
『NBC Sports』によると、76ersはバトラーに5年のマックス契約をオファーしたそうだが、バトラーは最初からヒートへの移籍を望んだとのこと。ただヒートのキャップスペースにはバトラーとFA契約を結ぶ余裕がなかったため、移籍はサイン&トレードという形となり、76ersは大きな見返りを得ることができた。
シクサーズは昨年11月にロバート・コビントンとダリオ・シャリッチを放出して、ウルブズからバトラーを獲得。オールスターを残留させることはできなかったが、コビントンとシャリッチの2選手がリチャードソンとホーフォード獲得のためのキャップリリーフに変わったと考えるとそれほど悪い話じゃない。
なおクリッパーズがこのトレードで何を譲渡するのかまだ詳細は明らかになっていないが、ハークレスのサラリー(1100万ドル)を引き取ることで、ヒートの2023年ドラフト1巡目指名権(保護付き)を手に入れた。報道によると、クリッパーズはトレード後もカワイ・レナードにマックス契約をオファーするだけの余裕が残っているという。
76ersのスタメンが超ビッグに
シクサーズはバトラーの他に、JJ・レディックがニューオリンズ・ペリカンズと契約合意してチームを退団した。
ただその一方で、フォワードのトバイアス・ハリスと5年1億8000万ドルで再契約。さらに今夏FAの目玉選手の一人だった大ベテランビッグマンのアル・ホーフォードと4年1億900万ドルの契約を結ぶことに成功した。
予想される来季76ersのスターティング/クロージングラインアップは:
https://twitter.com/SportsCenter/status/1145512418103234560
- G:ジョシュ・リチャードソン(198cm)
- G:ベン・シモンズ(208cm)
- F:トバイアス・ハリス(206cm)
- F:アル・ホーフォード(208cm)
- C:ジョエル・エンビード(213cm)
第一印象は「とにかくデカい!」。リチャードソンが198cmで最も身長が低いという超ビッグなラインアップ。5人ともサイズに加えて守備力も高い。来季76ersは最高にタフでフィジカルなチームディフェンスを展開できそうだ。このラインアップから3~4人が来季オールディフェンシブチームに選ばれてもおかしくない。
エンビードに次ぐ第2のビッグマンが不在だったシクサーズにとって、ホーフォードの加入は大きい。ブレット・ブラウンHCはエンビードとホーフォードのどちらかが必ずフロアにいるようなラインアップローテーションを組んでくるはずで、レギュラーシーズン中は必要ならばエンビードのプレイタイムを制限できるようにもなる。
守備のポテンシャルが高く、とても楽しみなロスターになった76ersだが、昨季と比べて戦力が上がったかと言われればわからない。イースト首位の有力馬であることには間違いないが、ポストシーズンで念願のカンファレンス制覇を目指すうえで気になる点が2つある。
1つはシューティング。以前からシューター不足に悩まされていた76ersだが、来季からはベストシューターのJJ・レディックがいなくなってしまう。新加入したリチャードソンは優れた3&Dプレイヤーであり、守備力はレディックよりも遥かに高いだろう。ただやはりシュート力はレディックに遠く及ばない。
レディックは絶対にノーマークにできない選手だ。レディックがスクリーンをくぐりながら走り回るだけで相手チームの守備は混乱する。
昨季までのシクサーズは、レディックとエンビードのツーマンゲームがハーフコートオフェンスの主要武器だった。来季はレディックを軸にして得ていた得点をどこから捻出するのかに注目したい。
▼レディックの引力を活用してオフェンスを展開
そしてもう1つの気になる点は、誰が“クローザー”になるのか?ポストシーズンゲームの勝負所で誰がオフェンスを回すのか?
チームの司令塔はベン・シモンズだ。シモンズは卓越したコートビジョンとスピード、フィジカル、サイズを持ち合わせた逸材で、トランジションオフェンスではレブロン並みに無敵の選手。ジャンプショットをまったく打てないという短所があるものの、レギュラーシーズン中はそれほど問題にならない。
ただ相手チームが徹底的に守備戦略を練ってくるプレイオフでは、ペイントエリアの外から得点する術を持たないシモンズがオンボールでハーフコートオフェンスを指揮するのは難しい。実際にラプターズとのイースト準決勝シリーズでは、ジミー・バトラーがクラッチタイムのボールハンドラーを務め、シモンズはまるでセンター選手のようにダンカースポットで待機するという形となっていた。
来季の76ersには、バトラーのように正念場でアイソレーションやピック&ロールからオフェンスを切り開ける“クローザー”がいない。
参考記事:「NBA」