マブスがサンズとの第7戦で記録的な大勝利、11年ぶり5度目のウェスト決勝進出へ
ダラス・マーベリックスとフェニックス・サンズによる2022ウェスタンカンファレンス・セミファイナルは、誰もが予想だにしない形での決着となった。
現地5月15日、マブスは敵地フットプリント・センターで行われたサンズとのカンファレンス準決勝第7戦に123-90で圧勝。4勝3敗でシリーズを制し、2011年以来11年ぶり、通算5度目となるウェスタンカンファレンスファイナル進出を果たした。
記録的勝利
第7戦でのマブスは、ティップオフからファイナルブザーの瞬間まで1度もサンズにリードを譲ることなく終始ゲームを支配。NBAプレイオフの第7戦でこれほど一方的な展開は記憶にない。
まずマブスは、試合開始2分半でルカ・ドンチッチが8連続得点をあげて先手。序盤こそはドンチッチ以外の選手たちがリズムを掴めていなかったものの、第1Q終盤にチェックインしたシックスマンのスペンサー・ディンウィディがステップアップし、前半だけで21得点をあげる大活躍。ドンチッチも高確率でショットを沈め続けて前半27得点をマークし、マブスは30点リードで試合を折り返す。
ハーフタイムでのスコアは57-27!!!ESPNによると、前半終了時での30点差は、プレイオフ第7戦においてNBA史上最多だという。この日の試合はあまりにもワンサイドすぎて、第3Q残り10分の時点でドンチッチ1人の得点(30)がサンズのチーム合計得点(27)を上回っていたほどだ。
マブスは後半に入ってからも攻撃の手を休めることなく、第3Qを35-23でアウトスコアして、リードを40点に拡大。第4Qはエースのドンチッチをベンチに温存したまま、記録的な大差での勝利をものにした。
ルカ・マジック
第7戦でのドンチッチは、第3Qまでの30分の出場でチーム最多35得点/10リバウンドのダブルダブルをマーク。負けたらシーズン終わりのエリミネーションゲームでFG63%/スリー55%/FT100%のシューティングを記録し、フランチャイズスターに相応しい躍動ぶりでチームをシリーズ突破に牽引した。
▼ドンチッチ&ディンウィディー
サンズとのセミファイナルシリーズでのドンチッチは、7試合で32.6得点、9.9リバウンド、7.0アシスト、2.1スティールを平均。シリーズ平均得点でトップスコアラーのデビン・ブッカー(23.4)、平均アシストで“ポイント・ゴッド”のクリス・ポール(5.7)、リバウンドでセンターのデアンドレ・エイトン(8.1リバウンド)、スティールで今季DPOY候補のミケル・ブリッジズ(1.2)をそれぞれ上回る圧巻のオールラウンドパフォーマンスだった。
第7戦でのマブスはドンチッチの他、ディンウィディーが30得点、ジェイレン・ブランソンが24得点で勝利に大貢献。ボールハンドラーの3選手だけでチーム123点中89点をあげている。
マブスディフェンス
ドンチッチの神懸ったパフォーマンスに加え、マブスがセミファイナルの流れを変える大きな要因となったのは、ディフェンス面でのアジャストメントだ。
カンファレンス準決勝でのマブスは、敵地での2連敗でシリーズをスタート。最初の2試合では、サンズのピック&ロールに対して、基本的にオールスイッチで対応しようとしていたが通用せず。特に第2戦では、終盤の勝負所でドンチッチがスイッチからのアイソレーションでクリス・ポールに狙われまくり、ペースを奪われてしまった。
0勝2敗の窮地に立たされたマブスのジェイソン・キッドHCは、第3戦から守備スキームを大きくアジャスト。クリス・ポールに常にフルコートプレッシャーをかけつつ、ハーフコートではポールもしくはデビン・ブッカーのスクリーンアクションに対して積極的にトラップ。“攻める守備”でサンズオフェンスのリズムを狂わせることに成功する。
マブスロスターを個々のタレントで見ると、DPOYもしくはオール・ディフェンシブ・チーム級のディフェンダーは1人もいない。クリスタプス・ポルジンギスをトレード放出したことで、強力なリムプロテクターもいなくなった。
サイズや機動力の面ではそれほど突出していないマブスの守備陣だが、その一方でチームワークが素晴らしい。
常に声を出してコミュニケーションを取りつつ、スクリーンに対するスイッチやブリッツのタイミングをフロアにいる全員が熟知。ミスマッチを攻められた際のヘルプとそれに続くリカバー、シューターへのクローズアウトなども迅速かつ的確で、とてもアクティブな守備スキームながら、とにかくミスが少ない。第2戦では弱点となっていたドンチッチも、第3戦以降はディフェンスに100%コミットし、オフボール守備やリバウンドで貢献している。
守備の要となったのは、マキシ・クレバー、ドリアン・フィニー・スミス、レジー・ブロックの3人。フィニー・スミスとブロックはクリス・ポールもしくはブッカーとマッチアップする大役を任され、クレバーはファイブ・アウトのスモールラインアップのセンターとして立派にペイントエリアを守った。
またクレバー、フィニー・スミス、ブロックのトリオは、3&Dとしてオフェンス面でも躍動。特にクレバーはシリーズ3P成功率46.4%を記録。相手チームのビッグマンを外に誘き出し、ドンチッチらボールハンドラーたちが伸び伸びとペイントエリアを攻められる状況を作るフロアスペーサーとして大貢献した。
キッドHC
ヤニス・アデトクンボの進化に一役買うなど、以前から選手育成の面では定評のあったジェイソン・キッドHC。ただインゲームの戦略やアジャストメントの面で評価が低かった印象で、2017-18シーズンの途中にミルウォーキー・バックスのヘッドコーチ職から解任された。
昨夏にマブスHCに就任した際にも、ファンやメディアの間で「適任ではない」といった懐疑的な声が多かったが、ふたを開けてみると今季マブスは守備チームとして大きく成長。サンズとのウェスト準決勝シリーズでは、今季最優秀コーチ賞に選出されたモンティ・ウィリアムズを指揮力で完全に上回っていたと思う。第6戦から守備要因としてフランク・ニリキナを起用する決断も見事な采配だった。
第7戦では、サイドラインから「前に出過ぎるな」「トラップ!トラップ!」と大声でチームに的確な指示を出すキッドHCの姿が印象的。
一方のサンズはシリーズ第4戦以降、守備面でほとんどアジャストメントなし。ドンチッチに圧倒された第7戦前半も頑なにオールスイッチの戦略にこだわり続け、第3Q中盤でようやくドンチッチにダブルチームを仕掛け始めたが、その時点で40点ビハインドとすでに時遅しだった。
今季サンズは2021-22レギュラーシーズンのオフェンスでリーグ5位、ディフェンスで2位の数字を記録。フランチャイズ新記録の64勝でリーグを席巻したエリートチームが、こんな悲惨な終わり方を迎えるなんて誰に予想できただろう?
特にホームでの第7戦におけるメルトダウンは過去に例がないレベル。オールスターデュオのポール&ブッカーが試合初のフィールドゴールを決めたのは第3Q残り7分半で(前半は2人合計でFG11本中0本)、その時点ですでに40点ビハインドと絶望的な状況だった。
まさにフランチャイズを崩壊させるような惨敗。今夏には、2018年ドラフト1位指名のエイトンが制限付きFAとなるが、サンズがどんな決断(マックスで延長契約もしくはサイン&トレード)を下すのか注目したい。
なおマブスは、11年ぶりとなるウェスト決勝でゴールデンステイト・ウォリアーズと対戦。シリーズの大部分がスモールラインアップでの攻防になりそうだ。第1戦は現地18日にサンフランシスコのチェイス・センターで行われる。
ボックススコア:「NBA」