数字で見る「スティーブ・ナッシュの偉大さ」
過去3年にわたり怪我に悩まされ続けた末、2015年3月21日にNBAからの正式な引退を決意したスティーブ・ナッシュ。チャンピョンシップにこそ手は届かなかったものの、2度のMVP受賞や5度のアシスト王獲得など、歴代最高のポイントガードの1人に数えるに相応しい堂々たるキャリアを送った。
そのことは、ナッシュが18シーズンで積み上げた功績を見れば一目瞭然だ。
キャリア通算アシスト
ナッシュはキャリア通算で歴代3位となる10,335アシストを記録した。この数字を上回るのはジョン・ストックトンとジェイソン・キッドのみ。
ナッシュ vs. キッド vs. ストックトン
※スタッツは、上から得点、FG%、3P%、アシスト、リバウンド、スティールの順(いずれもキャリア通算)
単純に数字だけを比較すると、ナッシュが2人に劣っているような印象を受ける。得点とリバウンドは3人の中で最も低く、スティールに関しては遠く及ばない。ストックトンやキッド、さらにはゲイリー・ペイトン、アイザイア・トーマス(バッドボーイズ)、クリス・ポールといった新旧のベストPGたちと違い、ナッシュはディフェンスが得意ではなかった。
その一方で、スリーポイントシュートの成功率はキッドとストックトンよりも大幅に高い。ナッシュが史上最高のPGの1人に数えられる最大の理由の一つは、歴代トップクラスのシューティング力を持っていたからだ。
50-40-90
「50-40-90」とは、FG成功率50%以上、3PT成功率40%以上、フリースロー成功率90%以上をシーズン平均で記録すること。トップクラスシューターの証ともいえる極めて達成困難なスタッツで、過去にこれをクリアした選手は、ナッシュを含めて以下の6人しかいない。
※スタッツは、左から得点、FG%、3P%、フリースロー%の順(いずれもキャリア平均)
50-40-90を複数回達成したのはラリー・バードとナッシュの2人だけ。バードが2回だったのに対して、ナッシュは4回記録している。また、ポイントガードで50-40-90を記録したのは、ナッシュの他にマーク・プライスのみだ。
ナッシュのシーズン別シューティング%
ナッシュは、スリーの成功率が高いだけでなく、ボリュームシューターでもあった。3Pアテンプト数は他の50-40-90クラブメンバーよりも大幅に多く、50-40-90を平均しながらシーズンの合計3P成功数で150本を超えた選手はナッシュしかいない。
さらにナッシュのスリーは、半分以上がスポットアップではなく、ドリブルからのプルアップだった。これらを考慮すると、キャリア平均で3P成功率42.8%を記録できたというのは奇跡に近いと思う。
NBAベスト3Pシューターグラフ
※上のグラフは、縦軸が3P成功率、横軸が3P成功数(いずれもキャリア合計)。通算1000本以上のスリーを決めた選手を対象
ナッシュがNBA史上屈指のスリーポイントシューターだったというのは紛れもない事実だ。実際に、現時点でキャリア通算の3P成功数と3P成功率の両方で歴代Top15に入っている選手は、ナッシュ(成功率10位、成功数15位)とカイル・コーバー(成功率6位、成功数11位)の2人しかいない。
さらに繰り返すようだが、ナッシュは他のトップシューターたちに比べて、スポットアップスリーを打つ割合が極めて少なかった。ナッシュと同じくドリブルからのプルアップスリーを多発して、なお高い成功率を維持できているのは、ステファン・カリーくらいだ。
フリースロー成功率は歴代首位
ナッシュは18年のキャリアで合計3384本のフリースローを放ち、その内の90.43%(3060本)を成功させた。これはNBA史上最高の成功率で、他に9割以上を記録している選手はマーク・プライス(90.39%)とステファン・カリー(90.0%)のみとなっている。
MVP
ポイントガードがMVPに選ばれるのは比較的珍しく、1955-56シーズンからの過去60年間で上記の6選手しかいない。その中でも複数回受賞したのは、マジック・ジョンソン(3回)とナッシュ(2回)だけだ。
実績を考えれば、NBA史上最高のポイントガードはマジック・ジョンソンで間違いないだろう。だが、ナッシュのように歴代屈指のシュート力と的確かつクリエイティブなプレーメイキング力を兼ねそろえたユニークなPGは他にいない。
以前パット・ライリーは、ナッシュを「NBA史上最も効率的にプレーできる選手」と評価していたが、まったくその通りだと思う。
Image by Keith Allison/Flickr
参考記事:「SI」