ビンス・カーターの引退とNBAのリアクション
バスケットボール史上屈指のダンカーとして知られるビンス・カーターが、22年のNBAキャリアに終止符を打った。
カーターは現地25日、自身がホストを務めるポッドキャスト番組『Winging It with Vince Carter』で正式に現役引退を表明。昨季終了時に「あと1年」と宣言していたので驚きはないが、それがいざ現実のものになると、やはりとても寂しい気持ちにさせられる。
「プロとしてバスケットボールをプレイするのはこれで正式に終わり」
– ビンス・カーター
1998年ドラフト5位指名でNBA入りしたカーターは、トロント・ラプターズやニュージャージー・ネッツ(現ブルックリン)、ダラス・マーベリックスなど様々なチームで活躍し、合計でリーグ史上最長記録となる22シーズンをプレイ。
リーグ制覇やMVPには届かなかったが、1999年の新人王をはじめ、8回のオールスターと2回のオールNBAチーム選出やダンクコンテスト優勝、シドニー五輪での金メダル獲得など、NBA内外で数々の功績を残しており、将来のバスケットボール殿堂入りが確実視されている。
▼カーターのキャリア記録
- 現役22シーズン(歴代1位)
- 通算試合数1541試合(歴代3位)
- 通算2万5728得点(歴代19位)
- 通算6606リバウンド
- 通算4714アシスト
- 通算1530スティール
- 通算888ブロック(ガード選手として歴代2位)
- スリー成功数2290本(歴代6位)
記録だけでは語れないレジェンド
「記録よりも記憶に残る」という言葉がビンス・カータほど似あう選手はいないだろう。
キャリア全盛期におけるカーターの人気ぶりは凄まじく、2000年代前半にはコービー・ブライアントやシャキール・オニール、アレン・アイバーソンら当時のスーパースターを抑え、オールスターファン投票で3年連続最多票数を獲得。毎試合のようにハイライトを連発する唯一無二の超人的なプレイスタイルから、「Vinsanity」「Air Canada」「Half Man, Half Amazing」などのニックネームで呼ばれた。
カーターがスーパースターとしての地位を絶対的なものにしたのは2000年だ。
2000オールスターのダンクコンテストでは超人ダンクを何発も披露して優勝。
このダンクコンテストででのカーターが伝説となったのは、ダンクのクオリティもさることながら、ほぼすべてのダンクを一本目のトライで決めたという部分も大きいだろう。
そして同じ年の夏には、アメリカ代表として出場したオリンピックのフランス戦で、“バスケットボール史上最高のポスタライズ”の一つとしてずっと語り継がれるであろうスーパーダンクを決めた。
若い頃は“NBAの顔”的な存在だったカーターだが、怪我や年齢で身体能力が衰え始めたキャリア後半はロールプレイヤーへとシフト。2010年代は、マブスやグリズリーズなどプレイオフチームの3~5番手としてチームに貢献し、ここ数年はキングスとホークスで若手チームのメンター役を務めた。
カーターが現役22年という大記録を樹立できたのは、キャリアの途中でエゴを捨て去り、エースではなくサポート役としての役割を受け入れることができたからこそだ。
コロナ感染拡大の影響で3月にリーグ中断となり、カーターがちゃんとした形でラストシーズンを終えられなかったのが少し残念。カーターの現役最後のフィールドゴールは、現地3月11日ニューヨーク・ニックス戦OTの残り12秒に決めたスリーポイントショットとなった。
なおカーターが正式に引退したことにより、現役選手の中でマイケル・ジョーダンと公式戦で対戦した経験を持つのは、タイソン・チャンドラーのみとなった。
NBAのリアクション
カーターの引退表明を受け、多くの選手や球団、関係者たちが、レジェンドに向けた祝福のメッセージを発信している。
・トロント・ラプターズ
「この国に信じる気持ちを与えてくれてありがとう。カナダにバスケットボールの地盤を築いてくれてありがとう。一緒に飛び立たせてくれてありがとう。一生の思い出をありがとう。心を込めて、カナダより」
・ジェイソン・キッド
「私が最も好きなチームメイトの1人だったビンス。その素晴らしいキャリアを称えさせてくれ。バスケットボール殿堂でまた会おう!」
・ジャレッド・ダドリー
「殿堂入りに相応しいキャリアをおめでとう!あなたの傍でプレイできて光栄でした」
・スティーブ・ホルマン(ホークスのアナウンサー)
「ビンス・カーターが引退を正式に表明しました。この2シーズンに彼の試合を実況でき、名誉かつ光栄に思います」
・トレイ・ヤング
「今までありがとうございました」
・パウ・ガソル
「ビンス、素晴らしいキャリアだったね!皆が愛するバスケットボールに君が与えてくれた多大なる貢献、ありがとう」
・メンフィス・グリズリーズ
「今日はレジェンドのキャリアに敬意を表したい。今までありがとう」
参考記事:「ESPN」