ブラッドリー・ビールとウィザーズの再契約成立、『トレード拒否権』付きの5年スーパーマックス
ワシントン・ウィザーズは現地7月6日、今夏にFAとなっていた球団エースのブラッドリー・ビールと再契約を結んだことを正式に発表した。
契約の詳細についてはウィザーズから明かされていないが、現地メディアの報道によると、契約内容は2億5100万ドル(約340億円)の5年スーパーマックス。MVPのニコラ・ヨキッチが今オフにナゲッツと結託した総額2億7000万ドルの延長契約に次いで、NBA史上2番目に高額な契約金であり、しかも『ノー・トレード条項』が盛り込まれているという。
2012年ドラフト全体3位指名でウィザーズに入団したビールは、NBAデビューから10シーズンすべてをウィザーズでプレイして22.1得点、4.1リバウンド、4.2アシストを平均。その間に3度のオールスターに輝き、レギュラーシーズンの通算スリー成功数で球団歴代1位(1434本)、通算得点でエルビン・ヘイズに次ぐ球団2位(1万4231点)の記録を打ち立てている。
ビールは再契約成立について、「今日は人生でとても特別な日になった。ウィザーズの一員としてチャンピオンシップの夢を追い続けられるチャンスを手にできて、これ以上に嬉しいことはない」とコメントした。
ノー・トレード条項
今回のビールの再契約で最も注目を集めたのは、『ノー・トレード条項』が盛り込まれていたこと。「トレード拒否権」とも呼ばれる契約オプションの1つで、その名の通り、チームは同条項下にある選手を合意なしにトレードできない。
『ノー・トレード条項』には2種類ある。1つは、ビールが獲得したのと同じ“真のノー・トレード”。契約期間を通してトレード拒否権を保持できるプレミアム・オプションだ。NBAキャリア8年以上、かつ新契約を結ぶ球団で4年以上在籍した選手のみが対象となる。
もう1つは、一般的なノー・トレード条項。所属チームと1年の再契約をした選手、オプション付きの2年再契約を結んだ選手、もしくはルーキー契約の最終年に1年のクオリファイング・オファーを受け入れた選手などに対し、新契約1年目に限りトレードを拒否する権利が与えられる。
今回ビールが獲得したタイプの『真のノー・トレード条項』は極めて珍しく、現NBAでこのオプションを保持しているのはビールただ1人。歴代NBAで見ても、ビールの他には、バスケットボール殿堂入りのレジェンド9選手しかいない。
▼長期契約で『ノー・トレード条項』を得た歴代10選手
- レブロン・ジェームズ
- コービー・ブライアント
- ティム・ダンカン
- デビッド・ロビンソン
- ジョン・ストックトン
- ケビン・ガーネット
- ダーク・ノビツキー
- ドウェイン・ウェイド
- カーメロ・アンソニー
- ブラッドリー・ビール
ビールは先月末に29歳になったばかり。バスケットボール選手としてまさに全盛期にあり、実力も間違いなくオールスター級だ。その一方でウィザーズは5年後、34歳のビールに年俸5700万ドルを支払うことになる。そんな選手に対し、5年の『ノー・トレード条項』を与えるのはあまりにもリスクが高い。
ここ数シーズンは、毎年のように移籍の可能性を噂されていたビールだが、今回の再契約によりスター選手としてのトレード価値はほぼ消滅。このままビールが生涯ウィザーズを貫く可能性が高くなった。
ウィザーズとしては、チームの将来にとって確実に不利になる『ノー・トレード条項』を盛り込まずとも、マックスサラリーを提示するだけでビールとの再契約を結べたはず。NBAで死語となりつつある“忠誠心”を示したかったのかもしれないが、個人的には完全に悪手だと思う。
参考記事:「NBA」