ダニー・グリーンは2018-19シーズンもスパーズ残留
今夏スパーズの悩みの種が一つ減った。ESPNのAdrian Wojnarowski記者によると、ダニー・グリーンは年俸1000万ドルの来季プレイヤーオプションを行使したとのこと。これでグリーンは、スパーズの一員として9シーズン目に突入する。
契約最終年のオプションを破棄してFAになるだろうとの見方も強かったが、今夏はリーグ全体的にキャップスペースに余裕のあるチームが少ない。本来ならば需要の高いグリーンのようなスターターレベルのウィングでも、環境とサラリーの両方で満足のいく長期契約を見つけるのが難しい状況だ。それならば多くのチームに余裕ができる2019年の夏に勝負をかけようと判断したのだろう。
昨季のグリーンは、70試合の出場で8.6得点、3.6リバウンドを平均。今回グリーンが契約最終年にオプトインする決断をしたことは、スパーズにとって大きなプラスだ。
もしカワイ・レナードがスパーズ残留を選べば(最後まで希望は捨てない!)、引き続きグリーンを先発起用して、デジャンテ・マレー/グリーン/レナードでリーグ最強のペリメーターディフェンスを展開できる。
一方で、もしレナードとの決別を余儀なくされ、チームが完全な再建に入るのであれば、グリーンは価値の高いトレードアセットになる。シーズン中盤で戦力補強をしたいプレイオフチームにとっては、複数のポジションを守りながらスリーを打てるグリーンのようなウィング選手は魅力的だろう。もしかするとドラフト1巡目指名権と交換でトレードに応じるチームが出てくるかもしれない。
そして何よりも、スパーズは長年チームに貢献したベテランを引き留めるかどうかという決断をひとまず保留にできる。今後のチーム作りがすべてレナード次第なスパーズにとっては非常にありがたい。
グリーンのスリーは復調するか?
スパーズが2014年にリーグ制覇した頃は、リーグトップクラスの3&Dプレイヤーだったグリーンだが、ここ数年はシューティングに大苦戦している。
2011-12からの4シーズンでスリー成功率40%以上を維持していたものの、スパーズが“ビッグスリー”からレナード&オルドリッジへと移行し始めた2015-16シーズンには33.2%に大転落。その後は40%の壁を超えられず、昨季(2017-18)はリーグ平均に近い36.3%に終わった。リーグ平均ならば問題なさそうだが、オフェンスでの役割がほぼキャッチ&シュートに限定されているグリーンにとっては物足りない数字だ。
▼2013年には3Pで当時のファイナル記録を樹立。NBAファイナル史上で25本以上のスリーを決めたのはカリーとグリーンのみ
これは単純にグリーンがシューターとして衰えてしまったからなのか?それとも、今の“スパーズシステム”が合っていないのか?
グリーンが絶好調だったころのスパーズと言えば、とにかくボールの動きが止まらない流れるようなオフェンスがアイデンティティだった。だがカワイ・レナードとラマーカス・オルドリッジがメインになってからは、ポストアップを軸にした力技なオフェンスが増え、それに伴いグリーンのショットセレクションも少しずつ変わっている。
「Cleaning the Glass」のデータによると、ダニー・グリーンの3Pショット(アテンプト数)におけるコーナースリーの割合は、2011-12から2014-15の4シーズンで約38%だったが、2015-16以降の3シーズンでは32%に減少(ガベージタイムを除いた数字)。昨季にはついに3割を切ってしまった。コーナースリーは他の3Pラインよりも距離が短く最も決めやすいショットなので、ここから打つ機会が減ってしまうのは痛い。
実際のところ、チームスタイルの変化とコーナースリーの減少がどれだけ関係しているかはわからないが、少しは影響を及ぼしているはずだ。昨季にオフェンスの軸となったオルドリッジは、ローポストでダブルチームを引き付けてから逆サイドに上手くパスをさばけるタイプの選手じゃない。またトニー・パーカーもスピードが衰えて、以前のようにピック&ロールから敵陣のインサイドを引っ掻き回すことができなくなり、コーナーで待ち構えるグリーンにキックアウトが飛んでいく回数も少なくなったのではないだろうか。
こういった色々な部分が重なって、もともとアップダウンの激しいグリーンは前よりもショットのリズムを掴みにくくなってしまったのかもしれない。ディフェンスは相変わらず素晴らしく、さらに昨季は3Pラインでのポンプフェイクからクローズアウトを積極的にアタックするなど、オフェンスでも工夫しようと頑張っていた。来季こそはロングレンジが復活することを祈りたい。
参考記事:「NBA」