デマーカス・カズンズのウォリアーズ移籍について
は??エイプリルフールのボツネタか何かが誤爆されたのかと思ったよ…。今夏FAで最も衝撃的なニュースは、レブロンのレイカーズ移籍ではなくなったかもしれない。
Yahoo Sportsによると、デマーカス・カズンズは現地7月2日にゴールデンステイト・ウォリアーズとの契約に合意。契約内容はマックスサラリーではなく1年/530万ドル、タックスチーム用のミッドレベル例外条項(MLE)だという。
現リーグのセンターの中で随一のオフェンス力を持つオールスターが530万ドル!!アキレス腱断裂からのリハビリ中とはいえ、格安にもほどがある。今夏FAだったロールプレイヤーのマリオ・ヘゾニャ(ニックスと1年/650万ドル契約)やアーサン・イリヤソバ(バックスと3年/2100万ドル契約)よりも低い年俸だ。
▼“第3のスプラッシュブラザー”加入にカリーも興奮気味
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なぜこんな恐ろしいことになってしまったのか?ウォリアーズのフロントオフィス(ドレイモンド・グリーンを含む)の勧誘力の高さはもちろんだが、それに加えて運も大きく味方した。
2年前の夏では、“たまたま”サラリーキャップ上限が大幅に上昇する年と重なり、ウォリアーズはチームのコアを崩すことなく、FAでオールスターのケビン・デュラントを獲得。そして今年は、“たまたま”キャップスペースに余裕のあるチームが少なく、カズンズのようなマックスレベルのスター(しかもリハビリ中)にとっては不利な市場で、さらにバード権利を持っていたペリカンズが長期間の高額契約を渋った。
今夏FA開始時点で、ペリカンズの他にマックスサラリーをオファーできたのは、レイカーズ、マブス、ブルズ、ホークス、76ers、キングスの6チームのみ。マブスとレイカーズはカズンズ争奪戦の有力候補に挙がっていたが、マブスは初日にデアンドレ・ジョーダンと契約し(これもサプライズ)、一方のレイカーズはレブロン・ジェイムスやラジョン・ロンド、KCP獲得ですぐにスペースを埋めた。
絶賛再建中のブルズとホークスにとっては、怪我前の状態まで完全復帰できるかどうかもわからないカズンズに高額契約をオファーするのはリスクが高く、76ersはジョエル・エンビードがいるため先発クラスのセンターを必要としていない。古巣であるキングスについては言うまでもないだろう。
ESPNのMarc J. Spears記者によると、カズンズはFAが解禁となってから大型契約のオファーをまったく貰えなかったらしく、失望の夏に終わることも覚悟していたという。またZach Lowe記者によれば、カズンズのエージェントは週が明けてから複数のチームに1年/1500万ドルあたりの契約で話を持ち掛けたらしいが、それでも駄目。そのため、カズンズが今夏にMLE(ノンタックスチームで860万ドル)以上の契約を手にするには、サイン&トレードしか選択肢が残されていないような状況だった。
それならば、FA本番を来夏に先送りし、負担の少ない最高の環境で完全復活を目指しながら、ついでにチャンピオンシップリングも頂いてしまおう。カズンズがそう考えても決して不思議ではない。
このようにしてオールスターのセンターがウォリアーズのもとに舞い込むこととなり、リーグいちの大富豪がさらに富を得ることとなったわけだ。報道によれば、カズンズと親しいとされるドレイモンド・グリーンが率先して勧誘活動を行ったという。またボストン・セルティックスも最終候補だったとされている。
昨季のカズンズは、48試合で25.2得点、12.9リバウンド、5.4アシストを平均。復帰時期は早くても11月末あたりとみられているが、カズンズ自身は「トレーニングキャンプ開始までに戻ってくるつもり」とESPNの取材で話した。
2連覇を達成した王者ウォリアーズが、5人目のオールスターを獲得してさらに戦力アップ。想像するだけで恐ろしいが、実際にカズンズがどこまでチームに貢献できるかは未知数だ。もしかすると、ウォリアーズのアップテンポでオールスイッチのスタイルに上手くフィットできないかもしれない。
カズンズも速いペースのオフェンスでプレイした経験はあるが(ジョージ・カール時代のキングスと昨季のペリカンズ)、いずれのチームでも守備の戻りでもたもたする場面が何度も見られた。審判に抗議するなどしてあまりにも戻りが遅く、テレビの画面から7~8秒消えることさえある。ウォリアーズの一員としてプレイするなら絶対に許されない悪習だ。
アキレス腱断裂からの復帰ということを考慮すると、もともとペリメーターディフェンスが得意でなかった選手だけに、素早さと連携が命のウォリアーズのオールスイッチについていくのは、スピードとスタミナの面で相当苦戦するだろう。また問題児として知られるカズンズは、ロッカールームでチームに悪影響を及ぼす存在だと、これまでに何度も報じられてきた(ペリカンズではずいぶん改善したようだが)。
不安要素がいくつかあるのは確かだが、結局のところそれほど大した問題ではない。
なにしろあのカズンズを年俸580万ドルでゲット!!!
タックスラインを大幅に超過しているウォリアーズが、ジャベール・マギーの後釜にオールスターセンターを引っ張ってきたというのが未だに信じられない。
オフェンスでのカズンズは、フィジカルとスキルの両方で超一流の支配的なセンターだ。常にダブルチームを引き付けるインサイドでの得点力はもちろんのこと、シュートレンジもかなり広く(昨季は3P成功率が平均アテンプト6.1本で35.8%)、その気になればピック&ポップのスリーやファストブレイクからのトレイルスリーも決められる。
またビッグマンとしてはコートビジョンに優れており、コートのあらゆる場所からパスを放つことができる。特にカズンズのローポストやエルボーからのプレイメイク力は、オフボールの動きが盛んなウォリアーズオフェンスと相性抜群なはずで、非常に強力な武器になるだろう(カズンズがどれだけ素早くボールを手放せるかがカギとなりそう)。
カズンズの加入により、昨季ウォリアーズの数少ない弱点の一つだった「ディフェンスリバウンド」も改善されるはずだ。しかもカズンズは、ディフェンスリバウンドから自分で速攻を展開したり、絶妙なフルコートパスを出したりもできる。
そしてカズンズの存在が最も重宝されそうなのは、スイッチディフェンスに対してミスマッチを攻める時だろう。ステフィン・カリーは、これだけ得点力の高いビッグマンをピック&ロールのパートナーに持ったことがない。そもそもカリーとカズンズのピック&ロールを、デュラントとトンプソンのシュート力、グリーンのプレイメイク力で囲むオフェンスなんて、一体どう対応するのが正解なのか?
スイッチしなければ歴代最高のシューターにプルアップスリーを打たれるし、反対にスイッチすればガード選手がブロックでカズンズにこれでもかというほどイジメられることになる。
スイッチしてからカズンズにダブルチームを送れば、逆サイドのシューター(デュラントとクレイ)やカッター(グリーンやイグダーラ)に綺麗なパスが飛んでいく。グリーンをペリメーターで完全放置するのも一つの手だが、そうなるとウィークサイドでグリーン/KD/クレイに3対2を展開される。オールスイッチディフェンスで昨季ウォリアーズをギリギリまで追い詰めたロケッツにとっては、まさに悪夢のような存在だろう。
スティーブ・カーHCが接戦のクラッチタイムにどのラインアップを起用するのか注目したい。これまでと同じくリーグ最強のユニットであるデス・ラインアップ(スターター4人+イグダーラ)で臨むのか、それともカズンズを入れてタレント力で押し切るのか。カズンズは正念場でベンチに下げられるのを面白く思わないだろうが、ウォリアーズではそのことで不平不満を言える立場にない。いずれにせよ、あまりにも贅沢すぎる悩みだ。
カズンズ獲得(それとトレバー・アリーザのロケッツ離脱)により、ウォリアーズと他の29チームとの差がさらに広がったと言える。ファンたちの間では、「ウォリアーズが強すぎてつまらない」などと怒りの声も多く出ているが、カズンズが来季以降もウォリアーズに残る可能性はほぼゼロなので、1年間の辛抱だ。逆にこのチームがどれだけの新記録を生み出すのか楽しみたいと思う。
参考記事:「Yahoo Sports」