フィル・ジャクソン、ジョーダンとコービーの違いについて語る
マイケル・ジョーダンとコービー・ブライアント。この2人はことあるごとに比較される。ポジション、背丈が同じだからだとか、プレイスタイルが似ているからだとか、闘争心、負けず嫌いなところが一緒だとか…。
とにかくNBAファンは2人を比べたがるし、メディアも同様。NBAプレイヤーやジョーダン本人ですら2人を掛け合いに出すほどだ(以前ジョーダンは、「俺と比べるに値するのはコービーだけだ」と語ったらしい)。
いたるところでジョーダン/コービー議論が飛び交う中、本当の意味で2人を正確に比較できるのは、両選手を長年コーチしたフィル・ジャクソンだけだろう。彼はこれまで2人を比べる話題に関して極力口を閉ざしてきたが、最新著書『Eleven Rings: The Soul of Success』の中で、ついに2人の違いについて独自の視点から見解を綴った。
以下は、同書を発売前に入手したLAタイムズの記事を一部妙訳したもの。
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・周囲への接し方の違い
フィル・ジャクソンいわく:
ジョーダンは、コービーよりもカリスマ的で社交的な人間だった。彼はチームメイトやセキュリティー・ガードたちと喜んで交流し、ポーカーをしたり、一緒に葉巻を吸ったり、冗談を言い合ったりしていた。
コービーはそうじゃない。彼は10代でNBAに入った。周りの選手よりもだいぶ若く、大学でソーシャルスキルを身につける機会がなかったというのも理由の一つかもしれない。コービーがレイカーズに来た当初は、チームメイトとの親しい交流を避けているようだった。年を重ねるにつれ、そんな傾向も変わったようだがね。徐々に自分から他のプレイヤーに接するようになっていったよ。特に遠征中のときなんかは。
ジャクソンによると、コービーが若かった頃、チームメイトに話しかけることと言えば、大抵の場合「ボールを寄こせ」だったという。そんな態度も年月が経つにつれ落ち着き、チームメイトに電話を掛けたり、食事に誘ったりするようになっていったらしい。「チームメイトを、“槍持ち”ではなく、パートナーとして扱うようになった」とジャクソンは語る。
・ゲームの進め方の違い:
ジョーダンは自然とゲームの流れを自分に引き寄せるタイプだった。反対にコービーは、強引にゲームをつかみ取ろうとする傾向がある。特に調子が悪い時などは、リズムが戻るまで容赦なくシュートを打ちまくるんだ。
その一方でジョーダンは、(調子が悪い時は)ディフェンスやパス、スクリーンのセットアップに焦点をシフトさせ、チームが試合に勝てるようにつくした。
・ディフェンスの違い:
ジョーダンは、よりタフで相手に威圧感を与えるディフェンダーだった。どんな種類のスクリーンも潜り抜け、完全にフォーカスした激しいスタイルのディフェンスで、ほぼすべてのプレイヤーをシャットダウンすることができた。
コービーはジョーダンのテクニックからさまざまなことを学んでいる。試合の流れを変えたいときなどに、コービーをディフェンスの秘密兵器として使うこともしばしばあった。通常コービーのディフェンスは、彼の柔軟性と狡猾さに重点を置く傾向にある。一か八かでスティールを狙うことも多々あり、そのツケが回ってくることも珍しくない。
2人の最も大きな違いは、「ジョーダンの持つ優れたリーダーシップスキル」だとジャクソンは言う。チームメイトに対して厳しく接することもあったが、チームの士気をコントロールすることに関しては天才的だったようだ。
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ジャクソン氏の見解では、「ジョーダンに1票」というところだろうか。たしかに、コービーがジョーダンの偉業と肩を並べるには、まだまだ成し遂げなければならないことがたくさんある。以下は、2人のキャリア成績とタイトルなどを比較した表。
コービー・ブライアント | マイケル・ジョーダン | |
平均得点 | 25.3得点 | 30.1得点 |
リバウンド | 5.3 | 6.2 |
アシスト | 4.6 | 5.3 |
スティール | 1.5 | 2.4 |
優勝回数 | 5回 | 6回 |
MVP | 1 | 5 |
ファイナルMVP | 2 | 6 |
得点王 | 2 | 10 |
▼コービーとジョーダンの完全に一致するプレイを集めた動画
コービーが彼のバスケ人生で常にジョーダンを意識してきたのは明らかだ。フィル・ジャクソンは著書の中で、2人にまつわるこんな逸話を取り上げている。ジャクソンがレイカーズのコーチに就任して1年目の話だ。
ジャクソンいわく:
コービーは、最も偉大な選手としてジョーダンを超えようと必死だった。彼のジョーダンに対する執着心は目覚ましいものだったよ。私がLAのコーチに就任して最初のシーズンのことだ。ブルズと試合した際、私は2人の対面をセッティングしたんだ。ジョーダンが、コービーのチームワークに対する考え方を変えてくれるかもしれないと思ってね。2人が握手を交わした後、コービーの口から発せられた第一声は、「ワン・オン・ワンならあなたを叩きのめせますよ」だった。
個人成績や記録をみると、ジョーダンが確実に上回っている。とはいえ、「81得点試合」や「4試合連続50得点」など、得点能力だけをみるとコービーに分があるという見方もできる。
いずれにせよ、この二人が歴代屈指のプレイヤーということにかわりはなく、類似点が多いとはいえ、違う時代の人間を単純に比較するのは難しい。
でもバスケ好きなら誰でも1度は想像したことがあるはず、「全盛期のジョーダンとコービーが対戦すればどちらが勝つか?」
- ソース:「latimes.com」
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