ヒートが4勝2敗で76ersとのシリーズ制覇、2年ぶりのカンファレンス決勝進出へ
マイアミ・ヒートが現地5月12日、ウェルズファーゴ・センターで行われたフィラデルフィア・76ersとのイースタンカンファレンス・セミファイナル第6戦に99-90で快勝。シリーズを4勝2敗で制し、2年ぶり、通算9回目となるカンファレンスファイナル進出を決めた。
ヒートは、再び76ersを100点未満に抑える好守備でペースを掌握。1ゴール差の接戦で迎えた第3Qを25-15で上回ると、最終ピリオドに入ってからも攻撃の手を休めることなく、残り時間5分にはリードを20点に広げる。
76ersは残り5分で20点ビハインドに陥った後もスターターをフロアに残し、ぎりぎりまで巻き返しを図るが、二桁点差の壁は超えられず。残り1分で主力をベンチに下げて白旗をあげた。
今季ポストシーン一番乗りでカンファレンス決勝進出を決めたヒートは、ジミー・バトラーがゲーム最多の32得点で大活躍。同シリーズでのバトラーは、フィラデルフィアで行われたロードゲーム3試合すべてで30得点以上をマークしている。
バトラーの他には、ドラフト外3年目のマックス・ストラスが20得点、11リバウンド、5アシストで再び勝利に大貢献。チーム全体では、スリー28本中7本成功(25%)とロングレンジが振るわなかったものの、リバウンド争いを49-35の大差で制し、76ersのセカンドチャンス得点を最小限に抑えた。
バトラーは試合後、古巣の76ersと元チームメイトのジョエル・エンビードを負かしたことについて、「『(エンビードには)君を誇りに思う』と伝えた。彼と同じチームで戦えたなら、と今でも思うよ。でも僕はマイアミ・ヒートを愛している」とコメント。エンビードは「なぜ彼(バトラー)を手放さなければならなかったのか、今でも分からない」と試合後の会見で未練を語っている。
76ersは2018-19シーズンのプレイオフで、後の王者であるトロント・ラプターズをセミファイナル第7戦の瀬戸際まで追い詰めるも、カワイ・レナードのミラクルショットにより敗退。その年のオフシーズンにバトラーは76ersとの決別を選択し、ヒートへとサイン&トレードで移籍した。
もし当時の76ersが何としてもバトラーをチームに引き留めていたなら、ここ3シーズンでのイーストの勢力図は大きく変わっていたに違いない。
ヒートはイースト決勝で、ボストン・セルティックス/ミルウォーキー・バックスのシリーズ勝者と戦う。
ハーデンとの再契約は?
敗れた76ersは、タイリース・マキシーとジョエル・エンビードがそれぞれ20得点。シェイク・ミルトンが15得点、トバイアス・ハリスが14得点/8リバウンドで奮闘した。
一方でオールスターのジェームズ・ハーデンは、FG9本中4本から11得点と大苦戦。特に後半は、ショットアテンプト数わずか2本の無得点と、スター選手としての役割を全く果たせないままに終わった。昨季プレイオフの76ersでは、正念場でスコアできないベン・シモンズが戦犯扱いされていたが、守備面を考慮すると、第6戦でのハーデンはそれをさらに下回るパフォーマンスだったと言えるかもしれない。
76ersが最後にカンファレンス決勝までコマを進めたのは、先発PGのマキシーが生後約6カ月の赤ん坊だった2001年だ。
なおハーデンは、2022-23シーズンの契約が約4700万ドルのプレイヤー・オプション。今オフには最大で5年/2億7500万ドルのスーパーマックス契約を76ersと結ぶことができる(オプトアウトした場合は、来季4700万ドル+4年/2億2300万ドルの延長契約が可能)。
76ersが今夏FAでハーデンとの再契約に有利な立場にいるのは間違いないが、そこには大きなリスクが伴う。ハーデンは来季開幕時ですでに33歳。もし76ersがスーパーマックスでの再契約をオファーすれば、ハーデンが37歳になる2026-27シーズンに年俸6000万ドル超えの巨額サラリーを支払うことになる。
今季プレイオフでのハーデンは、OKCからロケッツに移籍した2012年以降で自己ワーストとなる18.6得点を平均。プレイメーカーとしてはまだまだリーグトップクラスだが、怪我もしくは加齢の影響か、3度の得点王に輝いたロケッツ時代と比べて、スコアリング力に確実に陰りが見えている。そんなハーデンに、リーグ史上最高額のスーパーマックスをオファーするのはかなり危険だ。
76ersとしてはハーデンとマックスで再契約しない選択肢もあるが、それだと結果としてベン・シモンズのトレードで大損。シクサーズは今年2月のトレードデッドラインで、ハーデン(+ポール・ミルサップ)獲得のために、以下の選手/アセットを手放している:
- ベン・シモンズ
- セス・カリー
- アンドレ・ドラモンド
- 2022ドラフト1巡目指名権(保護なし)
- 2027年ドラフト1巡目指名権(トップ8保護)
これだけのアセットを放出して獲得したスター選手をたった1年で手放すことになれば、球団としてそれだけで大損。一方で、ハーデンとのマックス再契約も将来的なリスクが大きい。76ersとしては、どちらの道を選んでも“プロセス失敗”につながりかねない頭の痛い状況だ(万が一、ハーデンが来季にかつてのパフォーマンスを取り戻せれば話は別だが…)。
なおハーデン自身は、「これからもここ(76ers)にいるつもり」と試合後の会見で今後の去就について明言。「ペイカットを受け入れるつもりはあるか?」という記者からの質問に対しては、「チームの成長のためなら、なんだってやる」とマックスサラリー未満での契約受諾についても仄めかせた。
ボックススコア:「NBA」