デイミアン・リラードがブレイザーズと2027年まで続く延長契約を締結
ポートランド・トレイルブレイザーズが現地7月9日、フランチャイズスターのデイミアン・リラードと新たに延長契約を結んだことを正式に発表した。
現地メディア報道によると、延長契約の内容は2年/1億2200万ドル。リラードは現契約があと3年残っているため、今回の延長契約が施行されるのは2025-26シーズンから。リラードは今後5年間で総額約2億5900万ドルの契約金を手にすることになるという。
ESPNのボビー・マークス記者によれば、この先5シーズンでのリラードの年俸は以下の通り:
- 2022-23(32歳):4250万ドル
- 2023-24(33歳):4560万ドル
- 2024-25(34歳):4880万ドル
- 2025-26(35歳):5850万ドル(新契約スタート)
- 2026-27(36歳):6330万ドル(オプション)
なお2025年以降の年俸については、その年のチームサラリーキャップの35%となるため、今の推定額から上下する可能性がある。
リラードは今回の延長契約を受け、「ただ試合に出てたくさん得点するだけでは、今回のような待遇を得られるとは思わない」とコメント。今のリーグで失われつつある“球団と選手の間の忠誠心”について語った。
「今のリーグに欠けているのは個性、そして“名前”に対するパッションとプライド。ユニフォームの背中にある名前(選手名)だけでなく、胸元にある名前(チーム名)にも情熱と誇りを持つべき」
– デイミアン・リラード
生涯ブレイザーズ?
以前から移籍の噂が度々囁かれていたオールスターのリラード。ちょうど1年前の東京オリンピック開幕直前にも、「ブレイザーズにトレード要求する見込み」という報道が飛び出し、NBA界隈を騒然とさせた(本人は噂を否定)。
ブレイザーズは、昨季のトレードデッドラインにCJ・マッカラムやノーマン・パウエル、ロバート・コビントン、ラリー・ナンスJr.といったチームのコアメンバーを一斉放出。当初は、ブレイザーズがついに本格的な再建に踏み出したと見るメディアも少なくなく、リラード移籍の噂が再加熱していた。
また今夏フリーエージェンシー解禁直後には、リラードが自身のインスタグラムに「忠誠心には有効期限がある」という少し意味深な内容のストーリーを投稿。
これに関しては、投稿した画像の背景が『ブルックリン橋』なので、自分のことではなく、ケビン・デュラントとカイリー・アービングの移籍騒動に揺れているブルックリン・ネッツを揶揄したものなのかもしれない。
さらに延長契約が成立する数日前には、球団オーナーとリラードの間に確執があるとするニューヨーク・ポスト紙の記事が注目を浴びたばかり。ニューヨーク・ポスト紙はインサイダーから得た情報として、「ブレイザーズオーナーのジョディ・アレンがリラードとの話し合いを拒絶。彼女はリラードからの電話やメールすら無視している」と報じた。
ただこの件については、リラード本人がYahoo Sportsを通して「どうしてこんな噂話が持ち上がっているのか謎。ジョディはいつでも話し合いに応じてくれるし、そもそも僕から彼女にメールを送ったことは1度もない」とNYポストの報道を真っ向から否定している。
今回の延長契約締結により、ブレイザーズはリラード移籍騒動を完全に払拭。今後リラードが自分からトレードを要求しない限りは、ブレイザーズ側から決別の道を選ぶことはなさそうだ。
契約残り3年だった30代の選手に対し、現時点で4~5年後のマックスサラリーを保証する延長契約を与えるのは、ブレイザーズとして今後もリラード中心のチームで優勝を目指すつもりという強い意志の表れでもある。
来季以降のブレイザーズ
今オフのムーブで、「ゼロからの再建」ではなく「リラード中心の再建」を目指す立ち位置を明確にしたブレイザーズ。まず2022年ドラフトの直前には、デトロイト・ピストンズとのトレードで攻守に強いツーウェイ・フォワードのジェレミー・グラントを獲得した。
さらに今夏は、リラードとの延長契約の他にも、アンファニー・サイモンズ(4年/1億万ドル)、ユスフ・ヌルキッチ(4年/7000万ドル)の主力2選手と大型の再契約。FAでは、ウォリアーズの一員として優勝に輝いたウィング守備スペシャリストのゲイリー・ペイトン二世と3年/2800万ドルで契約を結んでいる。
▼2022-23ブレイザーズのデプスチャートは以下の通り:
- PG:デイミアン・リラード、ブランドン・ウィリアムズ
- SG:アンファニー・サイモンズ、シェイドン・シャープ(新人)、ケオン・ジョンソン
- SF:ジョシュ・ハート、ゲイリー・ペイトン二世、ジャスティス・ウィンズロー
- PF:ジェレミー・グラント、ナシール・リトル
- C:ユスフ・ヌルキッチ、ドリュー・ユーバンクス
リラード/サイモンズ/ハート/グラント/ヌルキッチの先発ラインアップは超強力。ナシール・リトルとゲイリー・ペイトン二世も有力なベンチメンバーであり、新人のシェイドン・シャープ(2022ドラフト7位指名)も成長が楽しみな選手だ。
面白いロスターではあるが、その一方で優勝を狙えるかどうかはかなり微妙なところ。今のウェストの勢力図を考えると、カンファレンス上位グループに食い込むことすら難しいかもしれない。
怪我さえなければ、昨季王者のウォリアーズに、ウェスト決勝まで駒を進めたばかりのマブス、昨季カンファレンス1位のサンズと2位のグリズリーズ、主力が完全復活する見込みのクリッパーズやナゲッツらの方が恐らく格上。さらに、ウルブズやペリカンズといった若手中心のアップカマー、レブロンとADを有するレイカーズの存在を考えると、来季ブレイザーズがプレイ・インにすら残れない可能性も十分にある。
ブレイザーズはこのままいけば、リラード/サイモンズ/ヌルキッチの3選手のサラリーだけで、2025-26シーズンにおけるキャップスペースの1億ドル以上を占める見込み。特にリラードの契約は、36~37歳の2年間で約年俸6000万ドル(82億円)と、トレード放出が極めて難しいアセットになってしまった。
参考記事:「NBA」