サンダーファンがポール・ジョージの初凱旋を温かく歓迎
正直なところ、これは予想外だった。ケビン・デュラントも「は?なんで?」と困惑しているかもしれない。
NBAでは現地22日、チェサピーク・エナジー・アリーナでオクラホマシティ・サンダーとロサンゼルス・クリッパーズが対戦。今オフにトレードを要求してチームを離れたポール・ジョージにとっては、移籍後初の古巣オクラホマ凱旋だ。
契約途中でチームを見放したスターに対して盛大なブーイングが浴びせられるかと思いきや、OKCファンたちの対応はその真逆。試合前のイントロでジョージが紹介されると、観客席からスタンディングオベーションが送られた。デュラントの初凱旋の時とは180度違う。
ジョージは試合後、古巣ファンからの温かい歓迎について、「最高だった。ありがたい気持ちになった。ここ(OKC)では素晴らしい時間を過ごした」とコメントしている。
なおこの日の試合は、サンダーが前半の18点ビハインドから逆転勝利。ポール・ジョージのトレードでLACから移籍したシェイ・ギルジアス・アレクサンダーがゲームハイの32得点、スティーブン・アダムスが20得点/17リバウンドで大活躍した。
KDとPG13の違い
OKCへの初凱旋で真逆の対応を受けたケビン・デュラントとポール・ジョージ。自らの意志でチームを離れたという点では同じだが、それぞれの退団時にサンダーが置かれていた状況はまったく違う。
まずデュラントは2016年オフシーズンにFAで退団。当時のサンダーは、NBA歴代記録の73勝を達成したゴールデンステイト・ウォリアーズをウェスト決勝で第7戦まで追い詰めたばかり。もし翌年もチームのコアを維持していれば、リーグ制覇の有力候補になっていたはずだ。
だがデュラントは退団を選択した。しかも最大のライバルチームだったウォリアーズへの移籍。サンダーファンにとっては受け入れ難い出来事だっただろう。
またデュラントの移籍はFAだったため、フランチャイズエースを失うことに対する見返りは一切なし。サンダーは一夜にして優勝への道を閉ざされた。
▼KDのOKC初凱旋イントロ
一方でポール・ジョージの場合は、デュラントが退団した1年後にトレードでサンダーに加入。ラッセル・ウェストブルックとのスターデュオ体制で再び優勝への期待が高まったが、2年連続でプレイオフ第1ラウンド敗退という残念な結果に終わる。
サンダーとしては、現状維持で今季優勝を狙う選択肢もあった。ただ今オフのサンダーは、主力3選手(ウェストブルック、ジョージ、アダムス)のサラリーだけでキャップスペースがほぼ埋まっていた状況。FAによる戦力補強が極めて難しい状況に陥っていた。恐らくサンダーのフロントオフィスは、ウェストブルック&PG13を中心にしたチームのポテンシャルに限界を感じたのだろう。
結果として、球団史上最も愛されたフランチャイズスター(ウェストブルック)と決別することとなったが、サンダーはその見返りとして数えきれないほどのアセットと手に入れた。
以下、サンダーが今オフの主力トレード放出で獲得したドラフト指名権:
- 2020年:ナゲッツの1巡目(トップ10保護付き)
- 2021年:ヒートの1巡目
- 2022年:クリッパーズの1巡目
- 2023年:ヒートの1巡目(トップ14位保護付き)
- 2024年:クリッパーズの1巡目、ロケッツの1巡目(トップ4保護付き)
- 2026年:クリッパーズの1巡目、ロケッツの1巡目(トップ4保護付き)
サンダーは自身の指名権も合わせれば、今後7年間(2020~2026)で合計15個の1巡目指名権を保有することとなる(+4つのスワップ権)。これらのドラフト指名権に加え、オールスターのポテンシャルを秘めた若手ガードのシェイ・ギルジアス・アレクサンダーを獲得した。
しかもウェストブルック&ジョージ放出で完全な再建モードに入ると予想されていた今季サンダーは、現在15勝14敗でウェスト7位。“ビッグスリー”解体後のボストン・セルティックスと同じく、長期の低迷期を経験することなく強豪に返り咲けるポジションにいる。そう考えると、サンダーファンがポール・ジョージのトレードに腹を立てる理由はあまりない。
ボックススコア:「NBA」