フェニックス・サンズ、OKCからクリス・ポール獲得
10年連続プレイオフ不参加という低迷期から抜け出すため、フェニックス・サンズが大勝負に出た。
サンズは現地16日、オクラホマシティ・サンダーとのトレードが成立したことを発表。サンダーからクリス・ポールとアブデル・ネイダーの2選手を獲得する。
▼以下、CP3獲得のためにサンズが放出したピース
- リッキー・ルビオ
- ケリー・ウーブレイJr.
- タイ・ジェローム
- 2022年ドラフト1巡目指名権
報道によると、サンズが放出した2022年ドラフト1巡目指名権は1位~12位の保護付き。もし2022年ドラフトで譲渡されなかった場合、2023年に1位~10位保護、2024年に1位~8位保護へと変わり、2025年まで持ち越されれば保護なしとなる。
新たなスターデュオ誕生
2019-20のポールはレギュラーシーズンで17.6得点/6.7アシスト、ポストシーズンで21.3得点/5.3アシストを平均。
ウェストブルックとポール・ジョージの退団で失速するかに思われていた昨季サンダーをまとめ上げてプレイオフへと導き、キャリア10回目のオールスター出場と8回目のオールNBAチーム入りを果たした。
▼昨季のCP3は特に勝負所でのパフォーマンスが凄まじかった
これでサンズは、ポールとデビン・ブッカーで超強力なバックコートを結成。オフェンス面での2人の相性は抜群だ。カリーとクレイ、リラードとCJに並ぶウェスト屈指のガードコンビになると思う。
またポールはリーダーシップも強く、ディアンドレ・エイトンやミケル・ブリッジズら有望な若手選手たちの成長にも大きなプラスとなるはず。
昨季のサンズは、3月にリーグ中断となるまでの65試合で26勝39敗と低迷していたが、バブルでのシーディングゲームでは快進撃を見せて8勝0敗。0.5ゲーム差でプレイオフ進出を逃しはしたものの、来年につながる良い形でシーズンを終えた。
もちろん今回のトレードには、それなりのリスクがある。
ポールはすでに35歳。来季年俸はリーグ2位の4135万ドルで、契約はあと2年残っている(2年目はプレイヤーオプションだが、36歳で約45億円の契約を破棄するとは思えない)。
サンズは超高額契約を背負い込むことになるため、今年と来年のFAではほとんど身動きが取れない状態。2022年にはポールの契約が終了となるが、それと同じタイミングでエイトンとブリッジスのキャップホールド(合計で約4800万ドル)がキャップスペースに計上されるので、2022FAもあまり余裕があるとは言えないままだ。
もしポールが大きな怪我を負ったり、チームと上手く噛み合わなかったりした場合は、再び再建にブレーキがかかることになる。そう考えると、ブッカーやエイトンらと年の近いウーブレイを手放してしまったのが少し惜しい。
ただすべてが上手くいけば、チームのポテンシャルは非常に高く、来季ウェストのダークホース的存在になれるかもしれない。
なお同日には、ヒューストン・ロケッツが3&Dスペシャリストのロバート・コビントンをポートランド・トレイルブレイザーズにトレード放出(見返りにトレバー・アリーザとドラフト1巡目指名権2つゲット)。さらにジェイムス・ハーデンが移籍を望んでいるという衝撃のニュースまで飛び出した。
来季はロケッツとサンダーがプレイオフレースから外れそうな雰囲気なので、サンズは10年ぶりのポストシーズン進出どころか、上手くいけば第1ラウンドでのホームコートアドバンテージ(4位シード以上)も十分に狙えるだろう。
▼バブルサンズ
ある意味「錬金術」
デニス・シュルーダーのトレードに続いて、サンダーは再びドラフト1巡目指名権を手に入れた。
これでサンダーは、2020年~26年の7回のドラフトにおいて、計16個の1巡目指名権を保有することになる。
- 2020:ナゲッツ指名権(25位)、レイカーズ指名権(28位)
- 2021:自軍(ロケッツとのトップ5保護のスワップ権)、ヒート(トップ5保護のスワップ権)
- 2022:自軍(ロッタリー保護付き)、クリッパーズ(保護なし)、サンズ(トップ12保護)
- 2023:自軍(LACとのスワップ権)、ヒート(ロッタリー保護付き)
- 2024:自軍、クリッパーズ(保護なし)、ロケッツ(トップ5保護付き)
- 2025:自軍(クリッパーズ/ロケッツとのトップ10保護付きスワップ権)
- 2026:自軍、クリッパーズ、ロケッツ(トップ5保護付き)
サンダーが、これだけの豊富なアセットを獲得できた経緯を辿るとすごく面白い。
まず2008年にドラフトしたラッセル・ウェストブルックは、10年以上にわたってチームに大貢献した後、クリス・ポールを経て、ドラフト1巡目指名権3つとドラフト指名権スワップ2つへとコンバート(+ウーブレイ)。
さらにウェストブルックの1年後に入団したサージ・イバカは、「ビクター・オラディポとドマンタス・サボニス」から「ポール・ジョージ」へと進化し、昨季オフにシェイ・ギルジアス・アレクサンダーという豪華特典付きで、ドラフト1巡目指名権5つとスワップ権利2つになった。
つまり大雑把に言えば: サンダーは2008年の4位指名(ウェストブルック)と24位指名(イバカ)を、12年の歳月をかけて、ドラフト1巡目指名権8つと1巡目指名権スワップ4つに変えたわけだ。同時にシェイ・ギルジアス・アレクサンダーとウーブレイの将来有望な若手2人も獲得している。
ここまでくると、プロスポーツにおける錬金術みたいなもので、どのトレードも“売り”のタイミングが絶妙。しかもサンダーは、ラスとイバカのドラフトから12シーズン中10シーズンでプレイオフ進出と、球団として大成功を収めた。
もちろんサンダーにとってはここからが本番で、掻き集めたドラフトアセットをどのように使うか。
今後7年間に自軍だけで16個の1巡目指名権を消費するのは不可能。どこかで複数の指名権を重ねて放出し、トレードアップするか、あるいは選手に変える必要がある。
いずれにせよ、サンダーは最高に恵まれた条件下での再建に臨むことができる。また、ここ数日のトレードで獲得したダニー・グリーンやルビオ、ウーブレイをどう使うかにも注目したい。
参考記事:「NBA」