マジック・ジョンソンがレイカーズ球団社長職を辞任
2018年のオフシーズン、マジック・ジョンソンは「今年と来年の夏で結果を残せなければ辞任する」と発言していたが、自身で設定した期限を待たずにチームと決別することとなった。
ロサンゼルス・レイカーズのシーズン最終戦が行われた現地9日、マジックは試合前に緊急で記者会見を開き、球団のバスケットボール運営部門代表を辞任することを突然発表。報道陣への事前通達などは何もなく、また球団オーナーのジーニー・バスやGMのロブ・ペリンカにすら伝えていなかったという。まさに電撃辞任だ。
マジックは2017年2月にジム・バスの後釜としてレイカーズの球団社長に就任。昨年夏にレブロン・ジェイムスと4年契約を結ぶ大仕事をしたが、その一方で約2年の在任期間中は人事やタンパリングなど批判されることの方が多かった。
ディアンジェロ・ラッセルのトレード
レイカーズは2017年6月にディアンジェロ・ラッセルとティモフェイ・モズゴフをトレード放出し、ネッツからブルック・ロペスと2017年ドラフトの全体27位指名権を獲得。サラリーダンプ(モズゴフの契約処理)が主な目的だ。マジックはトレード後に「ラッセルは素晴らしい選手だが、私が必要としているのはリーダーだ」とコメントしていた。
このトレードで確保したキャップスペースがレブロンにつながり、さらにネッツの27位指名でカイル・クーズマを獲得できたので、戦略としては間違っていなかったのかもしれないが、ドラフト2位指名の若手にわずか2年で見切りを付け、サラリーダンプのために手放すというのはあまり印象が良くない。そしてラッセルは今季にオールスターへと躍進を遂げている。
レブロン獲得後の人事
昨季夏にレブロン争奪戦に大勝利したレイカーズだったが、そこからFAでラジョン・ロンドやランス・スティーブンソン、マイケル・ビーズリーらスリーの苦手なベテラン選手たちと契約。レブロンをシューターで囲む布陣が最も破壊力抜群なのはキャブス時代で証明済みだったので、その体制から遠ざかるようなレイカーズのチーム作りに対し、ファンからだけでなくメディアからも疑問の声が多く上がった。
もともとレイカーズロスターにはロングレンジが得意な選手が少なく、新体制で臨んだ今季もチームのスリー成功率がリーグ29位の33.3%と大苦戦に終わっている。
ズバッツ放出
最も批判されたのは恐らくイビツァ・ズバッツのトレードだろう。
2019年のトレードデッドラインで、レイカーズはマイク・マスカーラを獲得する代わりに、ズバッツとマイケル・ビーズリーをクリッパーズに放出。ディフェンシブ・センターとして徐々に頭角を現していた3年目のズバッツをほぼ見返り無しで手放したレイカーズのフロントオフィスに多くのファンが困惑し、失望した。
しかもトレードの話を持ち掛けたのはクリッパーズではなく、レイカーズからだったとのこと。ESPNの報道によると、クリッパーズでアドバイザーを務める元レイカーズレジェンドのジェリー・ウェストは、ズバッツがタダ同然で転がり込んできたことが信じられなかったらしく、トレード成立後に友人とディナーに出かけた際は笑いが止まらなかったという。
移籍後のズバッツは先発センターとして活躍。クリッパーズのプレイオフ進出に貢献した。
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ESPNのAdrian Wojnarowski記者によると、在任期間中のマジックはチームを離れることが多く、オフィスにいる時間も限られていたという。
球団社長やGMのポジションは、多くのルールに縛られながら常に難しい決断を迫られる。チームが上手くいかなければ責任を問われ、ファンやメディアから無能と罵られる。特に超名門であるレイカーズの球団トップともなれば、その重圧は相当なものだろう。
マジック自身もそんな環境に息苦しさとやるせなさを感じていたようで、「社長に就任する前の方がハッピーだった。トレードの決断をしなければならない時はハッピーになれない」とコメント。マジックは選手たちに優しすぎるのかもしれない。
「罰金やタンパリング、あれやこれ。私の助言を求める若手選手たちに手を差し伸べられない。ツイートすらできない。ラッセル・ウェストブルックが数日前に偉業を成し遂げた時も、『おめでとう』のツイートができなかった。もしツイートしていれば、タンパリングだと非難されただろう。私はそんな環境を望んでいない。自由になりたいんだ」
参考記事:「NBA」