ケニー・アトキンソンのネッツHC退任について
ブルックリン・ネッツは現地7日、ヘッドコーチのケニー・アトキンソンが退任することを正式に発表した。
ネッツとアトキンソンHCの決別自体もそうだが、何よりもそれを決断したタイミングに驚き。プレイオフ圏内にいるチームが、シーズンラストスパートのこの時期にヘッドコーチを解任するというケースはあまり記憶にない。
ネッツのショーン・マークスGMはアトキンソンの退任について、「極めて難しい決断だったが、今の球団にとって必要なことだったと考えている」と説明。さらに「ケニーと話し合った上で、コーチ変更こそがチームにとって最大の利益になるとお互いに合意した」とし、アトキンソン側も決別を望んでいたこと明かした。
アトキンソンHCは2016年4月にネッツのヘッドコーチに就任し、4シーズンで118勝190敗の成績を記録。後任HCは、アシスタントコーチのジャック・ボーンがシーズン終了まで務めることになるという。
なんで?
アトキンソン就任当時のネッツは、21勝61敗のシーズン(2015-16)を終えたばかり。しかもスター選手候補やドラフトロッタリー指名権といったアセットをほとんど持っておらず、しばらく低迷期を抜け出せないだろうと見られていた。アトキンソンHCは、そんなどん底状態のネッツを短期間で蘇らせた最大の功労者の一人だろう。
アトキンソンは、ほぼ同時期にチームのGMに就任したショーン・マークスと共に、選手育成に力を入れつつ、球団のシステムやカルチャーを改革。スター選手がいなくても十分に戦えるチームを作り上げ、昨季には勝率5割超えのプレイオフ進出へと導いた。
昨夏FAでチームに入団したケビン・デュラントは、ネッツを選んだ理由について、「ネッツのバスケットボールが魅力的に感じたから」「彼らが築き上げてきたものがとにかく気に入った」と話していた。リーグを代表するスーパースターに「魅力的」と思わせるチームを作る上で中心にいたのがアトキンソンHCだ。
なぜネッツは、これほどチーム再建に貢献したヘッドコーチと、このタイミングで決別しなければならなかったのか?
「ケニー・アトキンソンのような素晴らしいコーチがなぜ首になったのか、誰か説明してくれ」
– デマーレ・キャロル
今季ネッツの成績不振は理由にならない。昨季よりも勝率が落ち、ビッグネームを迎え入れた1年目としては期待外れなシーズンとなったのは確かだが、それは主力陣の怪我が原因だ。
デュラントが今季中の復帰が難しいのは開幕前から分かりきっていたことだし、もう1人のスターであるカイリー・アービングもわずか20試合の出場で残りシーズン全休。ヘッドコーチにその責任を問うのはおかしい。
なお『Nets Daily』のAnthony Puccio記者によると、ネッツの数名の選手がアトキンソンHCの解任を望んでいたとのこと。またYahoo Sportsは、アービングとアトキンソンの間に確執があり、アービングはタロン・ルーをHCに欲しがっているとも報じている。
これらの噂がどこまで真実なのかは分からないが、アトキンソン退任にはよほどの理由があったのだろう。
実際のところ、ヘッドコーチの良し悪しを評価するのは非常に難しい。プレイヤーたちと違い、コーチの貢献度はスタッツとしてデータに表れないからだ。
優秀と言われるヘッドコーチでも、その手腕を発揮できるのは優秀な選手が揃っているからこそ。5年連続ファイナル進出の王朝を指揮したスティーブ・カーHCも、スター不在の今季はリーグ最下位の成績。またNBA史上屈指の名将とされるグレッグ・ポポビッチHCでも、FIBAワールドカップ2019でチームUSAをメダルに導くことはできなかった。