マブスがビッグマン補強、ドラフト26位指名権放出でセンターのクリスチャン・ウッド獲得へ
今季に11年ぶりのウェスト決勝進出を果たしたばかりのダラス・マーベリックスが、主力選手を1人も失うことなくロスター強化に成功だ。
ESPNによると現地6月15日、ダラス・マーベリックスとヒューストン・ロケッツの間でトレードが成立。マブスはボバン・マリヤノヴィッチ、スターリング・ブラウン、マーキース・クリス、トレイ・バークの4選手と2022年ドラフト1巡目指名権(全体26位)を放出し、ロケッツからセンターのクリスチャン・ウッドを獲得する。
2月のトレードデッドラインでクリスタプス・ポルジンギスを放出し、ビッグマンのデプスが手薄になっていたマブス。今季プレイオフでは、ドワイト・パウエルとマキシ・クリーバーがメイン、さらにスモールラインアップでドリアン・フィニー・スミスが5番に入るなどしてセンターローテーションを回していたが、さらに上を目指すにはスターターレベルのセンターが必要だったのは明らかだ。
マブスは今回のトレードにより、最小限のリスクでロスターをアップグレード。放出した4選手はいずれもラインアップローテーションから外れていた面子のため、戦力をほとんど切り崩すことなく、2022ドラフト26位指名権だけでウッドを獲得と言える。
ウッドとマブスのフィット
リーグ6年目を終えたばかりのクリスチャン・ウッドは、キャリア222試合で14.2得点、7.3リバウンド、スリー成功率38%を平均。キャリア前半はあまり活躍の機会を得られずチームを転々としていたが、2019-20シーズンにデトロイト・ピストンズでブレイクすると、ロケッツに在籍した直近2シーズンでは平均19.1得点、9.9リバウンドと上々なスタッツを記録した。
ウッドは、オフェンスに長けたビッグマン。ピック&ロールからの得点力が高く、2020-21シーズンのロケッツでは一緒にプレイした期間こそ短かったものの、リムランナーとしてジェームズ・ハーデンとの相性も良さげだった。
またミッドレンジ~スリーも打てるストレッチビッグで、ピック&ポップのスクリーナーとしても優秀。ここ3シーズンは3P成功率でリーグ平均を上回る38.4%を平均しており、ドリブルでクローズアウトを攻めるフェイスアップスキルも持ち合わせている。
オフェンス面では、マブスのビッグマンとして確実にスターターに入るべき選手。スクリーンからロールとポップの両方をこなせるので、エースのルカ・ドンチッチとの相性も抜群なはずだ。
一方で、ウッドの弱点はインサイドの守備。ただセンターとしては機動力が高く、ペリメーターで足を動かせるため、オールスイッチを軸にするジェイソン・キッドHC指揮下のマブスディフェンスに上手くフィットできるだろう。
ゴールデンステイト・ウォリアーズとの今季ウェスト決勝シリーズでは、レーンのディフェンスとリムプロテクションの脆さが大きな敗因となったマブス。ウッドはその弱点をすべて埋められるタイプの選手ではないが、戦力の底上げになるのは間違いない。
来季マブスは、カンファレンスファイナルまで駒を進めたコアメンバーに、ウッドとティム・ハーダウェイJr.が加わる形。パウエルをバックアップに下げることで、先発からリバウンド力を犠牲にしない5アウトのラインアップを組めるようになる。ハーダウェイJr.も復帰することで、ガードローテーションの幅も広がる。
▼2022-23マブスのデプスチャート
- PG:ルカ・ドンチッチ、ジェイレン・ブランソン
- SG:ティム・ハーダウェイJr.、スペンサー・ディンウィディ、フランク・ニリキナ
- SF:レジー・ブロック、ジョシュ・グリーン
- PF:ドリアン・フィニー・スミス、ダービス・ベルターンス
- C:クリスチャン・ウッド、マキシ・クリーバー、ドワイト・パウエル
またマブスは4選手を放出することにより、ロスターのフレキシビリティも獲得。トレード後もサラリーキャップを超過している状態には変わりないが、ミニマムサラリーで有力な選手をチームに加えるためのロスタースポットを確保できた。
リスク
マブスにとって大勝に見える今回のトレードだが、もちろんリスクも少しはある。
まず、クリスチャン・ウッドは来季で契約満期。2023年のFAで他のチームに移籍する可能性は十分にある。ウッド獲得のためにマブスが手放した2022ドラフト全体26位指名権はそれほど価値が高くないとはいえ、1年レンタルに終わるかもしれない選手に費やすアセットとしては決して安くない。
それから、ボバン・マリヤノヴィッチの放出。今季のボバンはあまり出場の機会がなかったものの、チームメイトやファンたちから愛されていたムードメーカー。フランチャイズスターのドンチッチとも非常に近い存在だった。
マブスが来季中にマリヤノヴィッチをチームに呼び戻すには、ロケッツが来シーズン中にマリヤノヴィッチを他のチームにトレード放出し、その後トレード先のチームからウェイブされる必要がある。もしロケッツがマリヤノヴィッチを直接ウェイブした場合、NBAのルール上、マブスは来年までマリヤノヴィッチとFAで契約を結ぶことができない。
なおマブスはすでに2023年ドラフト1巡目指名権をニックスに譲渡しているため、今回のトレードが正式に成立するのは、今年のドラフト以降となる(2年連続で1巡目指名権自体をトレードできないため)。
ロケッツサイド
一方のロケッツは今回のトレードで、今年の1巡目26位指名権と、今後の再建のピースになり得なさそうな4選手を獲得(来季ロケッツのロスターに残りそうなのはスターリング・ブラウンくらいか?)。
過去2シーズンでチームのエース的存在を務め、20/10を平均するポテンシャルを持った26歳のウッドの見返りとしては、やや物足りない印象。ウッドが来季契約最終年とはいえ、もう少し魅力的なオファーがあっても良さそうだが…。
とにかくロケッツは、“ポスト・ハーデン”の再建にウッドを含めない道を選択。ウッドがいなくなることで、若手たちの活躍の機会が増えるのは間違いない。
昨季ロケッツは20勝62敗のリーグ最下位ながら、2021ドラフト2位指名のジェイレン・グリーンが17.3得点を平均して、オール・ルーキー1stチームに選出。同年ドラフト16位指名だったセンターのアルペレン・シェングンも高い将来性を感じさせるシーズンを送った。さらに今オフのロケッツは、今回マブスから獲得した26位指名に加え、全体3位と17位の指名権を保持している。
▼ロケッツのホープ
2022年NBAドラフトの上位指名候補は、ゴンザガ大のチェット・ホルムグレン(センター)、オーバーン大のジャバリ・スミスJr.(パワーフォワード)、そしてデューク大のパオロ・バンケロ(パワーフォワード)。3人とも208cm超えのビッグマンだ。
ホルムグレンはガードスキルとリム守備力を持った7フッターで、スミスJr.は外のシュートとディフェンスに強い長身の3&D、バンケロは高い身体能力/サイズとオフェンススキルを持ち合わせた万能タイプのスコアラー。3人のうちの誰が3位指名に落ちたとしても、グリーン/シェングンを中心にしたロケッツ再建コアとの相性は抜群だと思う。
またロケッツは、今年ドラフトの17位と26位指名権を使って、ロッタリー指名権へのトレードアップを模索しているという噂も。大ベテランのエリック・ゴードンのトレード放出も積極的に検討しているという。
参考記事:「ESPN」