名将クイン・スナイダーがユタ・ジャズのヘッドコーチ退任へ
ユタ・ジャズは現地5日、かねてから話題になっていたクイン・スナイダーHCの去就について声明を発表。スナイダーがチームのヘッドコーチ職を退任することを明かした。
ジャズは同日に記者会見を開き、スナイダー本人とチームCEOのダニー・エインジ、オーナーのライアン・スミスが出席。どうやら決別を望んだのはスナイダー側だったらしく、エインジCEOは会見で「球団は彼が在任してくれることを強く願っていた」とヘッドコーチ退任を悔やんだ。
「彼はリーグ最高峰のディフェンスチームだったジャズを、リーグ最高峰のオフェンスチームへと生まれ変わらせた。スタイルの異なるチームを指揮しながら、攻守であれほどの成功を収められたというのは、本当に素晴らしい功績だと思う」
– ダニー・エインジ
スナイダーはレイカーズや76ers、ホークスのアシスタントコーチを歴任して経験を積んだ後、2014年にジャズのヘッドコーチに就任。8レギュラーシーズンで球団史上2位の勝率となる通算372勝264敗の好成績を記録し、2017年から6シーズン連続でチームをプレイオフ進出に導いた。
スナイダーHC指揮下のジャズがピークに達したのは2020-21シーズン。カール・マローン&ジョン・ストックトン期の1990年代以降で球団最高勝率となる52勝20敗でリーグ首位となり、スナイダーは2021年オールスターゲームのヘッドコーチに選出されている。
▼2020-21レギュラーシーズンを席巻したジャズ
ウェスト強豪チームの座を確立していたジャズだが、プレイオフでは期待された成功を収めることができず。昨年はカワイ・レナードがシリーズ途中で負傷離脱したクリッパーズにカンファレンス準決勝で敗れ、今年はシリーズ最初の3試合でエースのルカ・ドンチッチ不在だったマブスに第1ラウンドで敗北している。
近年レギュラーシーズンでのジャズは、DPOYのルディ・ゴベアを要とするドロップ・カバレージの守備スキームからリーグ屈指のディフェンス力を誇っていたが、プレイオフになると毎年のように弱点が露呈。ペリメーターでの防衛線が弱く、特に昨年のクリッパーズや今年のマブスなど、ピック&ロールをシューターで囲む5アウトのスモールボールオフェンスに大苦戦した。
スナイダーは退任を決意した理由について、次のように説明している:
「チームが進化を続けるには新しい声が必要。そう強く感じた。(退任を選んだ理由は)それだけだ。考え方の違いも、他の理由もない。8年間を経て、前に進むべき時が来たと思う」
今後スナイダーはしばしコーチング業から離れ、家族との時間を満喫するつもりらしい。記者会見では「来季はどうするか分からない。ただ確かなのは、今年のハロウィーンを娘と一緒に過ごすこと。それこそが今回の退任における楽しみだ」と話した。
ミッチェルが不満?
ジャズはスナイダーHCとの決別がきっかけで、さらに大きな決断を迫られることになるかもしれない。ESPNのエイドリアン・ウォジナロウスキー記者によると、フランチャイズスターのドノバン・ミッチェルがスナイダー退団のニュースに“驚き、失望した”という。
スナイダーは選手たちから厚い信頼を得ていたヘッドコーチ。ミッチェルが2020年のオフに5年マックスの延長契約を結ぶ決断をしたのも、スナイダーの存在が大きかったとのこと。ESPNによれば、ミッチェルはスナイダーが退団を選んだ理由を尊重し受け入れているものの、同時にチームの方向性に不安を感じているようだ。
またジャズの守護神であるセンターのルディ・ゴベアも、スナイダーとの別れを惜しんでいる。スナイダー退団が正式に報じられた直後には、自身のTwitterアカウントから感謝のメッセージを投稿した。
「クインには一生感謝したい。彼は8年前に僕にチャンスを与えてくれた。多くの人が疑いの目を向ける中、彼は僕を信じてくれた。そして栄枯盛衰の末、チームをウェストの強豪へと導いてくれた。あなたのこれからが最高のものになることを祈っている」
※ ※ ※
スナイダー指揮下でプレイオフ常連チームへと成りあがったジャズだが、今年もウェストファイナル進出の壁を越えられないまま終了。ミッチェル&ゴベアをコアにした体制に限界を感じているかもしれない。
参考記事:「ESPN」