2019-20NBAアワード予想その1: MVPとオールNBAチーム
NBA2019-20シーズンのアワード受賞者を予想してみた。第1弾はMVPとオールNBAチーム。
MVP:ヤニス・アデトクンボ
2019-20シーズンのヤニス・アデトクンボは、自身初のMVPに輝いた昨季からさらなる成長を遂げている。
今季のアデトクンボは、57試合で29.6得点、13.7リバウンド、5.8アシストを平均。1シーズンに「29-13-5」以上のスタッツを平均するのは、1960年代のウィルト・チェンバレン以来初となる約半世紀ぶりで、NBA史上3人目の快挙だ(もう1人は1960-61のエルジン・ベイラー)。しかも、30.9分という他のスーパースターと比べて大幅に少ない平均出場時間で、これだけの数字を叩き出している。
アデトクンボのプレイタイムが少なかった理由は、単純にバックスが強すぎて、第3Q終盤~第4Q序盤でほぼ勝利が確定するブローアウトゲームが多かったためだ。
アデトクンボは昨季にバックスをリーグ首位のシーズン60勝に導くも、2019イースト決勝でトロント・ラプターズの“壁ディフェンス”に阻まれ、2勝0敗のリードから4連敗で敗退。そこでの苦い経験を糧に、今年はスリー試投数を倍近くに増やすなど、オフェンスの幅を広げてシーズンに臨んだ。
今季のアデトクンボは、平均3Pアテンプト数4.8本から成功率30.6%を記録。成功率としてはリーグ平均をかなり下回っているが、「アデトクンボが躊躇なくオープンスリーを打ってくる」というアイデアを対戦相手に植え付けるには十分な試投数であり、それだけでバックスの戦略的に大きな効果をもたらす。
アデトクンボの大活躍により、今季バックスの成績は3月にシーズン中断となった時点で53勝12敗。バックス史上最高のシーズン勝率(81.5%)であり、67勝に届くペースだった。とりわけOn/Offの数字が凄まじく、アデトクンボがフロアにいる時間帯の今季バックスは、100ポゼッションあたり+16.1点で対戦相手をアウトスコアしている。
2019-20シーズンのMVPレースは、ほぼアデトクンボの独走状態だったと思う。
シーズン前半に38得点以上を平均して対抗馬となっていたジェイムス・ハーデンは、1月に入ってから失速(1月以降は平均29.8得点)。またシーズン後半は、レブロン・ジェイムスがいい感じのペースで追い上げていたが、前半についた差を埋めるには至らなかった印象だ。
今季のレブロンは、60試合の出場で25.7得点、10.6アシスト(リーグ1位)、7.9リバウンドを平均。ヒート時代と比べると、さすがに身体能力の衰えは感じられたが、バスケットボールIQやオフェンス指揮など試合をコントロールする力は今がピークと言えるほどのパフォーマンスで、プロ17年目の35歳にして自己ベストとなるアシスト数を平均している。
特に3月に入ってからのレブロンは、バックスとクリッパーズを立て続けに撃破するなど、MVP候補としての存在感を存分にアピール。レイカーズはリーグ首位のバックスに3ゲーム差まで追い上げていた。
さらに同時期にアデトクンボが負傷離脱していたため、レブロンがMVPレースでトップに躍り出る可能性もやや見え始めていたが、そのタイミングでシーズン中断となってしまった。
オールNBAチーム
1st | 2nd | 3rd | |
---|---|---|---|
G | ルカ・ドンチッチ | デイミアン・リラード | ブラッドリー・ビール |
G | ジェイムス・ハーデン | クリス・ポール | トレイ・ヤング |
F | ヤニス・アデトクンボ | カワイ・レナード | クリス・ミドルトン |
F | レブロン・ジェイムス | アンソニー・デイビス | パスカル・シアカム |
C | ニコラ・ヨキッチ | ジョエル・エンビード | ルディ・ゴベア |
レブロン・ジェイムスにとっては、キャリア通算16回目のオールNBAチーム選出。実現すれば、オールNBAチーム受賞回数でコービー・ブライアント、ティム・ダンカン、カリーム・アブドゥル・ジャバーの3選手を追い抜き、歴代単独首位となる。
レブロンは、プロ2年目の2004-05シーズンから15シーズン連続でオールNBAチーム入りを果たしている。これだけ長い期間で1度も大きな怪我を経験することなく、リーグのトップ層に君臨し続けていたというのは、もはや奇跡としか言いようがない。しばらく塗り替えられることのない大記録となるはずだ。
※ ※ ※
今年のオールNBAチームは、アンソニー・デイビスをどのポジションに置くかで人選が大きく変わってくる。2017年と2018年にはセンターとしてオールNBAチーム入りしていたデイビスだが、レイカーズに移籍した今季はパワーフォワードとしてフロアに立つ時間が多かった。
オールスター選出でも言えることかもしれないが、そろそろオールNBAチームのポジションによる固定枠は廃止すべきだと思う。
今のリーグの主流は『ポジションレス』なバスケ。誰がどう見てもチームの司令塔(PG)であるレブロンがフォワード枠なのに、同じようなサイズのルカ・ドンチッチやベン・シモンズがガードポジション扱いとなっているのは意味が分からない。オールNBAチームは、ポジションに関係なく、最も活躍した15選手が選ばれるべきだろう。
今年のオールNBAチームは、フォワードポジションの3rdチームが、候補多数の超激戦区だ。
今季フォワードのTop4は、ヤニス、レブロン、カワイ、デイビスの4選手で揺ぎ無い。一方で、3rdチームのフォワード候補は、ジェイソン・テイタムにパスカル・シアカム、ジミー・バトラー、クリス・ミドルトン、ブランドン・イングラム(ポール・ジョージは出場試合数が少なすぎたので除外)。
この5選手から2人だけを選ぶとなれば、人によって意見が大きく分かれるだろう。そこで、クリス・ミドルトンとパスカル・シアカムをフォワードの3rdチームに選んだ理由は、チーム成績とパフォーマンス効率を優先したためだ。特にバックスのNo.2であるミドルトンは絶対に外せないと思った。
今季のミドルトンは55試合で21.1得点、6.2リバウンド、4.1アシストを平均。シューティングスタッツはFG成功率49.9%、スリー成功率41.8%、フリースロー成功率90.8%を記録している。もしミドルトンが残りシーズン8試合でFG成功率を50%まで上げられれば、NBA史上9人目となる「50-40-90」達成者誕生となる。
オールNBAフォワード最後の1枠は、シアカムorジェイソン・テイタムですごく悩んだ。ボックススコアのスタッツはほぼ同じ(2人とも平均23.6得点)。ただ、それぞれのチームにとって「どちらがなくてはならない存在か?」を考えると、その答えはラプターズのシアカムだと感じた。