生まれ変わったユタ・ジャズ、2019-20シーズンの優勝候補になれるか?
ユタ・ジャズが20年ぶりのファイナル進出を目指して着実に力を付けている。
今オフシーズンのジャズは、ドラフト直前にトレードで大ベテランPGのマイク・コンリーを獲得。FA解禁初日には、万能タイプのフォワードであるボヤン・ボグダノビッチと4年/7300万ドルで契約合意を取り付け、さらにビッグマンのエド・デイビス、PFのジェフ・グリーンを獲得した。
今夏ウェスタンカンファレンスでは、アンソニー・デイビスを獲得したロサンゼルス・レイカーズ、カワイ・レナードとポール・ジョージのスーパーデュオを結成したロサンゼルス・クリッパーズに注目が集まったが、個人的にジャズの戦力補強が素晴らしかったと思う。チームが上手く機能すれば、ウェスト首位の有力候補になるかもしれない。
以下は、来季のジャズで注目したい3つのポイント:
1.オフェンス力アップ
予想される来季ジャズの先発ラインアップは、コンリーとドノバン・ミッチェルのバックコートに、ジョー・イングルスと新加入のボグダノビッチ、DPOY2連覇中のルディ・ゴベアがフロントコート。ロイス・オニールとダンテ・エクザムがベンチウィングを務め、エド・デイビスがバックアップセンターとなる(イングルスをシックスマンにしてオニールをSF/PFの先発にする可能性も)。
上記の8選手に加え、さらに今夏ジャズはFAでガードのエマニュエル・ムディエイとベテランフォワードのジェフ・グリーンを獲得。この10選手がメインのローテーションと考えれば非常に層が厚い。
ここ2シーズンのジャズは、1on1で点を取りに行けるオンボールスコアラーが不足していたため、やや複雑なモーションオフェンスに頼ることが多かった。
レギュラーシーズンではそれでも良かったが(得点効率でリーグ14位)、対戦相手の守備レベルが上がるプレイオフ(ロケッツとのシリーズ)では大苦戦。得意のモーションオフェンスが思うように通用しなくなると、ミッチェルがドリブルで強引に攻め入るも壁に阻まれて八方塞がりになるといったパターンに陥り、得点が停滞する場面が多かった。
▼こんな感じで囲まれた
マイク・コンリーを獲得したことで、この問題は改善するだろう。コンリーは、プルアップスリーやペネトレーションからのフローターなど多彩な武器を持ち、フロアのどこからでもスコアできるPGだ。対戦相手にしてみれば、リッキー・ルビオをガードする時のようにピック&ロールのスクリーンをアンダーしたり、オフボールで3Pラインの外に放置したりといった楽な戦略が取れなくなる。
またフォワードのイングスルとボグダノビッチは外のシュートに強く、パスセンスも高いオールラウンダー。2人ともオンボールでのピック&ロール指揮もそれなりにできる。
▼ボグダノビッチ、2018-19ハイライト
来季ジャズの先発ラインアップはオフェンス面で相性抜群なはずだ。4人のシューター兼プレイメイカーで、リムランナーのルディ・ゴベアを囲むスタイル。複雑なモーションオフェンスだけでなく、スプレッド・ピック&ロールなどシンプルな攻めを増やせるようになる。
オフェンスの布陣としては、全盛期のドワイト・ハワードがいた10年前のオーランド・マジックに近い感じだろうか。ゴベアは当時のハワードのようなリムランの鋭さとパワーを持っていないが、来季ジャズのバックコートのレベルは当時のマジックよりもはるかに高い。さらにジャズのフロアスペーシングが大きく改善することで、ゴベアはこれまで以上に伸び伸びとスクリーン&ロールでリムを攻められるようになり、同時にオフェンスリバウンドのチャンスも増えるはずだ。
2.ゴベアの負担
その一方で来季ジャズが直面するであろう課題は、これまでのようなハイレベルなディフェンスを維持できるかどうか。
2018-19シーズンのジャズは守備効率でリーグ2位の数字を記録。一昨季はリーグ首位で、守護神のルディ・ゴベアは2年連続でDPOYに輝いた。
ただ今オフには、デリック・フェイバーズとジェイ・クロウダーをトレードで放出。この2人がいなくなったことで、ジャズはフロントコートのサイズとリバウンド力がやや心細くなる。
先発メンバー(イングルスがSF、ボグダノビッチがPFと仮定して)にスーパースターのフォワード選手をガードできるディフェンダーがいないのも不安要素の一つだ。レブロン・ジェイムスやカワイ・レナード、ポール・ジョージらとマッチアップする大役を誰に任せるのか?ロイス・オニールが適任なのかもしれないが、勝負所でイングスルやボグダノビッチのシュート力を下げてしまうのは勿体ない。
いずれにせよ、ディフェンス面でのゴベアの負担はさらに大きくなるだろう。ジャズがリーグ屈指の守備力を維持するには、ゴベアが昨季以上に圧倒的な存在感を見せつける必要がありそうだ。
▼ゴベアの2018-19守備ハイライト
3.ドノバン・ミッチェル
ディフェンスやパワーフォワードのデプスは少し衰えたかもしれないが、オフェンス力は間違いなく向上した。点の取り合いならどのチームが相手でも競り合えるポテンシャルを持っている。コンリーやボグダノビッチら新加入のベテランたちが完璧にフィットすれば、来季ジャズがオフェンス/ディフェンス効率の両方でリーグTop10に入る数字を記録し、レギュラーシーズンでウェスト1位~2位の座を獲得しても驚きではない。
ただ問題はその先。プレイオフではチームの完成度よりも、スーパースターの存在が勝敗を分ける。例えば2014-15のホークスや2017-18のラプターズ。両チームともロスターのバランスが非常に良く、それぞれイースト首位の成績を収める好レギュラーシーズンを送ったが、プレイオフでは圧倒的なスターパワー(レブロン)にねじ伏せられた。
来季のウェスタンカンファレンスは、レブロンやカリー、カワイ、ハーデンなどドリブルからワンマンで試合をひっくり返せる超強力なスコアラーがいる。今のジャズには、これらのビッグネームたちと真っ向勝負できるタレントがいない。
来季のジャズがポストシーズンで大成功を収めるためのカギを握るのは、若きエースのドノバン・ミッチェルだ。
プロ2年目にしてすでにオールスターレベルの活躍を見せたミッチェルだが、来季はさらにその一歩先。ケビン・デュラントやアンソニー・デイビスと同じようにキャリア3年目の大ブレイクを遂げ、ウェストのスーパースターたちと渡り合えるチームの絶対的エースへと進化できるかどうか。
ミッチェルは今年8月~9月に行われるFIBAワールドカップのアメリカ代表候補に入っている。そこでの経験はミッチェルの今後の成長に大きなプラスとなるはずだ。
▼ミッチェルの2018-19ハイライト
ウェスタンカンファレンスはついにゴールデンステイト・ウォリアーズの一強時代が終焉し、来季から群雄割拠になる。ウェストプレイオフのシード争いはこれまで以上の大混戦が予想される(毎年同じことを言っている気もするけど…)。
レイカーズ、クリッパーズ、ロケッツ、ウォリアーズ、ジャズ、ナゲッツ、ブレイザーズの7チームは、主力に大きな怪我でもない限り来季もポストシーズン進出が固そう。デジャンテ・マレーが復帰するスパーズや、ドンチッチ&ポルジンギスの新体制で臨むマブス、若手が順調に力を付けているキングスもシード争いに参戦してくるだろう。
またドラフト全体1位でザイオン・ウィリアムソンを指名し、さらにオフシーズンの人事でJJ・レディックやブランドン・イングラム、ロンゾ・ボール、デリック・フェイバーズら有力選手を獲得したペリカンズも面白いチームになりそうだ。
来季のジャズがどこまで成長するのかすごく楽しみ。
ジャズロスター:「ESPN」